新業態8店舗の全店閉店(2022年・サイゼリヤの決断)

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サイゼリヤ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
都市部で試してきた別ブランドの全廃と、小型店・未出店地域への出店の振り替え2022年8月、サイゼリヤが既存の新業態8店舗を全店閉店した経営判断。立地環境の変化を理由に、2012年9月のマリアーノ日本橋兜町店を皮切りに11件の開店を重ねてきた別ブランドの店を、10年目にすべて閉鎖した。

何をなぜ決めたか:都市部で試してきた別ブランドの全廃と、小型店・未出店地域への出店の振り替え

概要

2022年8月、サイゼリヤが既存の新業態8店舗を全店閉店した経営判断。立地環境の変化を理由に、2012年9月のマリアーノ日本橋兜町店を皮切りに11件の開店を重ねてきた別ブランドの店を、10年目にすべて閉鎖した。

同じ第50期には、コンビニ跡地を使った小型店、出店の難易度が高かった大型ショッピングセンター内への出店、未出店県への1号店を進めており、都市部で業態を試す方式から立地を広げる方式へ資源を振り替えている。新たなフォーマット作りそのものは、対処すべき課題として残した。

背景

新業態は国内の第2の柱を作るための試みで、サンドイッチカウンター、PASTAS、スパゲティ・マリアーノ、ズッパディパスタ、スパットミート、リカリカ、リフレスカ、伊麺処、ミラノ食堂Marianoといった別ブランドを、神田・日本橋茅場町・浅草・川口・横浜などの都市部で開いてきた。コロナ禍で国内の採算は崩れ、日本セグメントの営業損益は第48期に56億23百万円、第49期に72億10百万円の損失を計上する。同業他社の店舗数増加によるオーバーストアに加え、コンビニ等の中食との競合も激しさを増していた。

内容

第50期の最終月にあたる2022年8月、既存新業態8店舗の全店を閉店した。同期の減損損失は19億23百万円で、対象は日本と中国他の店舗資産171店舗等、内訳は建物及び構築物15億26百万円・使用権資産1億89百万円・その他2億8百万円である。サイゼリヤの店舗の回収可能価額は使用価値により零として測定した。

閉店と並行して、2021年12月に秋田県1号店、2022年1月に鳥取県1号店、6月に岩手県1号店を出店し、2022年5月には自社で培った厨房技術を売る株式会社CSsTを設立している。今後の出店地域は駅前とショッピングセンターとし、駐車場を自社で持たない多店舗展開を掲げた。

いつ何が起きたか8件
筆者考察
考察

考察:業態を増やすのをやめ、立地を増やす

この判断を失敗した実験の店じまいと読むと、おそらく半分しか当たらない。閉じたのは8店舗で、同じ期に国内の店舗網はむしろ未出店県へ伸び、コンビニ跡地の小型店という新しい店の形も試している。捨てたのは新業態という発想そのものではなく、都市部の一等地に別ブランドを置いて第2の柱を探すという形の方だった。10年かけて11件の開店を重ねてなお日本セグメントは営業損失を続けており、業態を増やすより、既存の看板が入れる立地を増やす方へ賭け直したのだろう。

もっとも、国内の第2の柱という課題がこれで消えたわけではない。閉店の翌々期から日本セグメントは黒字を回復し、第53期には営業利益50億33百万円まで伸びたが、連結の利益を厚くしているのはアジアの方である。対処すべき課題には新たなフォーマット作りの継続が残されたままで、どこでどう試すかという問いだけが持ち越された。都市部に旗を立てる方式をやめたあと、次の業態をどこに置くのかは、まだ答えが出ていないようにみえる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

数字で見る

サイゼリヤ:日本セグメントの業績と減損損失の推移

サイゼリヤ:日本セグメントの業績と減損損失の推移

日本セグメント売上高(百万円)日本セグメント利益率(%)
サイゼリヤ:日本セグメントの業績と減損損失の推移
(百万円)日本セグメント売上高日本セグメント利益日本セグメント減損損失備考
2017年8月期117,2597,731172
2018年8月期119,4054,9381,050
2019年8月期118,9885,1162,076
2020年8月期95,284△5,6231,850緊急事態宣言で約300店が臨時休業または営業時間を短縮した
2021年8月期86,181△7,210235
2022年8月期101,126△2,1011,6028月に既存新業態8店舗を全店閉店。減損は連結で1,923百万円
2023年8月期120,482△1,491555
2024年8月期146,4552,7371,2644期ぶりに営業黒字を回復した
2025年8月期172,9085,033420
出所:サイゼリヤ 有価証券報告書 第45期〜第53期(セグメント情報)
出所:サイゼリヤ 有価証券報告書 第45期〜第53期(セグメント情報)
サイゼリヤ:連結の損益の推移

サイゼリヤ:連結の損益の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)
サイゼリヤ:連結の損益の推移
(百万円)売上高営業利益当期純利益備考
2017年8月期148,30611,2167,496
2018年8月期154,0638,6405,074
2019年8月期156,5279,5994,980
2020年8月期126,842△3,815△3,450
2021年8月期126,513△2,2641,765営業損失だが営業外収益6,403百万円により経常利益3,455百万円
2022年8月期144,2754225,660営業外収益11,020百万円を含め経常利益10,774百万円
2023年8月期183,2447,2225,154
2024年8月期224,54214,8638,149
2025年8月期256,71415,49911,164
出所:サイゼリヤ 有価証券報告書 第45期〜第53期(連結損益計算書)
出所:サイゼリヤ 有価証券報告書 第45期〜第53期(連結損益計算書)
閉店の条件

閉店の条件

閉店の条件
科目概要備考
閉店の時期2022年8月第50期の最終月
閉店した店舗既存新業態8店舗の全店残っていた新業態の店舗をすべて閉じた
閉店の理由立地環境の変化対処すべき課題に「立地環境変化のため既存新業態店舗の閉店」として掲げた
新業態の1号店2012年9月 マリアーノ日本橋兜町店東京都中央区日本橋兜町。以後「新業態」として沿革に載る開店は10件
減損損失1,923百万円日本・中国他の店舗資産171店舗等が対象。新業態だけの額ではない
減損損失の内訳建物及び構築物1,526百万円ほかに使用権資産189百万円、その他208百万円
回収可能価額の測定使用価値自社の店舗は零として評価。連結子会社の割引率は9.7〜10.2%
日本セグメントの営業損益△2,101百万円第48期から第51期まで4期続けて損失。同期の売上高は101,126百万円
振り替えた出店小型店・大型SC・未出店県への1号店2021年12月に秋田県、2022年1月に鳥取県、2022年6月に岩手県へ出店した
継続する方針新たなフォーマット作りの継続対処すべき課題に残した。出店地域は駅前とショッピングセンターとする
出所:サイゼリヤ 有価証券報告書 第50期(2022年8月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【経営成績等の状況の概要】【連結損益計算書関係】【セグメント情報】
出所:サイゼリヤ 有価証券報告書 第50期(2022年8月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【経営成績等の状況の概要】【連結損益計算書関係】【セグメント情報】
当時の取締役7名

取締役7名(2021年11月株主総会決議)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務正垣泰彦取締役:代表取締役業務執行:会長担当:
堀埜一成取締役:代表取締役業務執行:社長担当:
長岡伸取締役:取締役業務執行:担当:海外事業本部長
中嶋靖雄取締役:監査等委員・常勤業務執行:担当:
独立役員荒川隆官僚取締役:監査等委員業務執行:担当:
松田道春会計取締役:監査等委員業務執行:担当:
渡辺晋法曹取締役:監査等委員業務執行:担当:
この一覧は2021年11月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • サイゼリヤ 有価証券報告書【沿革】
  • サイゼリヤ 有価証券報告書「第50期(2022年8月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • サイゼリヤ 有価証券報告書「第50期(2022年8月期)【経営成績等の状況の概要】」
  • サイゼリヤ 有価証券報告書「第50期(2022年8月期)【連結損益計算書関係】減損損失」
  • サイゼリヤ 有価証券報告書「第45期〜第53期(2017年8月期〜2025年8月期)【セグメント情報】」

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