2番手や3番手では大した利益は望めない、という髙﨑秀雄社長の言い方は、事業をシェアではなく利益で測る立場を示している。1975年に始めて世界シェア約4割まで育てた偏光板は、その基準に照らすと大型パネル向けでは守る価値が薄れていた。渡さなければ価格競争の場で消耗するという読みと、まだ対価の付くうちに渡すという時期の読みが重なった判断だとみられる。何代か前の社長が売ってしまえと言った技術を残し、後の社長が一部を渡す立場に転じた経緯も、同じ製品への評価が時期で変わることを示している。
ただ、技術を渡しても収益の偏りはすぐには動かなかった。2017年度の営業利益の約7割は液晶用部材を中心とするオプトロニクス事業に依り、医療事業の売上は2016年度に444億円で、2025年度3,000億円という目標との距離は遠かった。2025年3月期に売上収益1兆円を超えた会社が何で立っているかは、この一件だけでは説明しきれない。主力を売却する判断は、次の主力が育つ速さとの競争になる性質を持つといえる。