日東電工の直近の業績・経営課題と展望

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日東電工の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高10,139億円YoY+10.8%
2025/3売上総利益3,955億円YoY+19.5%
2025/3販売費及び一般管理費1,518億円YoY+3.9%
2025/3営業利益1,857億円YoY+33.4%
2011/3経常利益851億円YoY+44.7%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益1,372億円YoY+33.7%
2025/3自己資本比率78.9%YoY+0.3pt
2025/3有利子負債合計5億円前年比+1億円
2025/3現金同等物期末残高3,633億円YoY+6.2%
経営トップ髙﨑秀雄取締役社長
2025/3従業員数25,769前年比+469人
2025/3平均給与834万円前年比+72万円

なぜ主力事業を捨て続ける経営が107年続いたのか(筆者所感)

1918年10月、稲村藤太郎が東京・大崎で日東電気工業を設立した。第一次世界大戦で欧州からの電気絶縁材料の輸入が途絶えたことが直接の動機であり、設立時の従業員は14名、生産品目は電気絶縁用ワニスクロスであった。主要顧客は日立製作所などの重電機メーカーで、創業時から特定顧客への密着が事業の前提となっていた。ところが1930年頃、日立製作所自身がワニスの内製化に動き出し、顧客が供給者に転じる構造変化が起きた。同年に稲村社長が逝去したことも重なり、創業の出発点と将来の構造的脆さが同じ場所に表れていた。

1937年5月、日立が株式100%を取得して日東電工を救済子会社化した。1948年7月に財閥解体で独立を回復した後も、1973年のオイルショックで1975年3月期は減収となり、製造業向けに偏った販売構造の脆弱性が再度露わになる。この危機を受けて1975年頃から土方三郎社長が「三新活動」を始め、過去3年以内の新製品が売上の30%以上を占めることと研究開発費を売上比5%に保つことを自己規律として制度化した。1961年のマクセル電気工業の日立への売却でBtoCから退いたことも、この規律の地ならしとなる選択であった。

しかし1999年1月に尾道事業所で量産化した液晶偏光板が、2000年代に世界首位級のシェアを獲得して主力の地位を占めると、自己規律の対象が変質した。2008年3月期に売上高7,452億円・営業利益779億円のピークに達した翌期、リーマンショックで売上が前期比22.4%減の5,779億円、営業利益は138億円へ急落する。個別新製品の新陳代謝で済んでいた段階から、事業ポートフォリオそのものを入れ替える段階へ進む必要が表れた。2013年6月就任の髙﨑秀雄社長は「なぜ業界トップクラスの顧客にこだわるかというと、ボリュームゾーンに入ってしまうと価格競争になるからです」(日経ビジネス 2024/5/24)と語った。

なぜ主力事業を捨て続ける経営が107年続いたのか。電気絶縁材料という単品から始まった脆弱性の記憶と、三新活動という自己規律の制度化が組み合わさり、主力製品を惜しまず入れ替える姿勢が経営の常設機能となった。2017年11月に杭州錦江集団へ偏光板技術を供与し、2011年の米Avecia買収で核酸医薬CDMOへ、2022年6月のMondi plcパーソナルケア事業買収で不織布領域へと「山」を積み上げた。2025年3月期に連結売上収益1兆139億円で初めて1兆円を超え、創業107年目で1兆円企業となった。

日東電工の業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / IFRSFY162017/3連結 / IFRSFY172018/3連結 / IFRSFY182019/3連結 / IFRSFY192020/3連結 / IFRSFY202021/3連結 / IFRSFY212022/3連結 / IFRSFY222023/3連結 / IFRSFY232024/3連結 / IFRSFY242025/3連結 / IFRS
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円7,931−3.9%7,677−3.2%8,574+11.7%8,065−5.9%7,410−8.1%7,613+2.7%8,534+12.1%9,290+8.9%9,151−1.5%10,139+10.8%
インダストリアルテープ億円3,0362,9653,2563,3593,0332,9353,1593,3813,3333,517
オプトロニクス億円4,3914,0664,7794,2123,9034,2014,5234,6934,6395,375
ヒューマンライフ億円8401,2031,1661,232
売上原価億円5,4845,2865,7495,6465,1915,1795,5115,9165,8436,184
売上総利益億円2,4472,3912,8252,4192,2192,4343,0243,3743,3093,955
販管費億円1,1501,0931,1841,2061,1141,0771,2961,4541,4611,518
営業利益YoY億円1,024−4.1%926−9.6%1,257+35.8%928−26.2%697−24.8%938+34.5%1,323+41.0%1,472+11.3%1,391−5.5%1,857+33.4%
インダストリアルテープ億円286274350311205273378272387460
オプトロニクス億円6544859196205738079661,2741,2461,731
ヒューマンライフ億円725-95-119
当期純利益YoY億円817+13.4%635−22.3%874+37.7%666−23.8%472−29.2%702+48.9%971+38.3%1,092+12.4%1,027−5.9%1,372+33.7%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%74.474.373.876.674.774.074.978.178.678.9
有利子負債比率%0.80.50.40.00.00.10.00.00.00.0
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円1,4071,1991,2269861,2361,1631,4451,8171,5552,179
投資CF億円-571-497-502-500-600-575-576-1,599-679-1,151
財務CF億円-449-289-449-584-516-683-366-576-908-789
従業員
連結従業員数26,83726,65926,31026,00125,79325,42425,96126,07025,30025,769
単体従業員数5,0935,1645,2695,4235,5925,8706,0916,2856,6106,729
平均年収(単体)万円803705806823727734805823762834

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY25フレキシブルセンサ・パーソナルケア材料の子会社のれん減損、プラスチック光ファイバー・ケーブルの固定資産減損等を計上。半導体メモリ向け需要は緩やかに回復、Q4期に子会社のれん減損33億円を計上。FY26配当金を4円増配の年間60円予定、2025年2月〜8月に800億円の自己株式取得を実行。

決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C6988/dRUj/pW63/jfUp.pdf
FY252030年に向けた長期戦略を提示。先端半導体後工程材料(剥離テープ等)の新規ニーズ対応、メモリ半導体・ロジック半導体・MLCC・パワー半導体・モータ向け絶縁紙等への用途展開。株主還元は安定配当・DOE4%以上を基本とし、機動的な自己株式取得を実施する方針を明示。

会社説明会

https://pdf.irpocket.com/C6988/I7Sq/mOCY/Srty.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
日経ビジネス 2024/5/24
日経ビジネス