筆者の見解
持たざる開発という選択
この戦略の核心は、不動産デベロッパーの強みとされてきた"資産を持つこと"を、あえて相対化した点にある。良い立地を押さえて長く保有し、賃料を積み上げる経営は堅実だが、資本が寝て効率は伸びにくい。東急不動産ホールディングスは、重点立地は握りつつ非重点は他人資本を入れて段階的に手放すことで、開発の果実を早く回収し次の投資へ回す道を選んだ。規模で先行する三井・三菱地所と正面から資産量を競わず、資本の回転で差をつけるという判断は、後発の総合デベロッパーが取りうる現実的な戦略であったのだろう。
もっとも、持たざる開発には両面がある。段階売却で資本効率は上がるが、優良資産を早く手放せば、長期にわたって賃料を生む基盤は薄くなる。他人資本を組み合わせるほど、市況が反転したときに開発益の取りこぼしや売却の停滞という不確実性も負う。広域渋谷圏という一つの重点エリアへの集中は、街の価値が上がり続けるかぎり強みだが、その前提が崩れれば弱みにもなりうる。資本の回転で稼ぐモデルを、市況の波のなかでどこまで安定させられるか——資本効率型への転換は、その持続性が今後問われていくといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月