SBIグループとの資本業務提携(2026年・フジ・メディアHDの決断)

フジ・メディアHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)

何をなぜ決めたか:折半の合弁とファンド出資の実現と、保有割合の契約時点での固定

概要
概要

2026年10月30日、フジ・メディア・ホールディングスはSBIホールディングス、SBIネオメディアホールディングスとの間で資本業務提携契約を締結した。10月20日の取締役会で決議し、11月2日に三社で公表した経営判断である。事業基盤、コンテンツ・IP、顧客接点、デジタル技術を持ち寄り、メディア・コンテンツ領域で新たな価値を創出することを目的に掲げた。

提携と組で決めたのが株主としての保有の上限である。SBIは自社とグループの株券等保有割合を、直接・間接を問わず、契約締結時の水準から増加させない。同社はこの合意を、経営の自主性・独立性を強化するものと位置づけた。ただし契約時点の割合の数値は、臨時報告書にも三社の公表文にも記載がない。

背景
背景

SBIと同社の資本の関係は初めてではない。2005年3月24日、ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)はニッポン放送からフジテレビ株353,704株(13.88%)を株券消費貸借で借り受け、議決権を持つ筆頭株主となり、6月30日に返却した。ライブドア・パートナーズの買収を決議した4月18日を挟む3か月である。2026年は市場で株主に戻った。2月5日にレノらの持分を中心に61,213,800株を自己株式で取得したのち、SBIホールディングス単体は3月12日の1.19%から4月16日に2.37%へ増やし、保有目的を戦略投資とした。

決める前の本業は赤字であった。メディア・コンテンツ事業は2026年3月期に売上高349,876百万円、セグメント損失30,835百万円を計上した。同社は5月のGroup Vision 2026-2030 Ver.1.0で、2030年度にROE6%、同事業の営業利益350億円+αを目標に置き、5年で成長投資1,500億円の計画と外部パートナーとの共創を示した。SBIは2025年5月にSBIネオメディアホールディングスを設立し、メディア事業を拡大していた。買い集めへの対応方針が6月25日に満了で終了し、翌26日に提携の協議開始を公表した。

内容
内容

事業の中核は合弁会社である。出資比率はSBIグループ50%、同社グループ50%、資本金は資本準備金を含めて1億円で、2027年1月に設立する予定とした。ライブ・イベントなど人が集う場を媒体と捉える「リアルメディア」を中核とし、事業領域ごとに子会社を設立する持株会社と位置づける。第一弾に、SBIの8,800万超の顧客基盤と決済技術を活かすファンプラットフォーム事業、第二弾にコンテンツファイナンスの共同研究を挙げた。同社は1,000億円規模のSBIネオコンテンツファンドにも出資するが、出資額は公表文に記載がない。

上限の合意は買い増しの方法を広く塞ぐ。株式の取得に加え、議決権行使の指図権の取得や共同保有者の追加も対象とした。例外は、自社や第三者による取得・消却など、SBIグループの取得を伴わず、グループが合理的にコントロールできない事由による増加である。提携は「資本」を名に含むが、SBIへの新株や自己株式の割当ては、臨時報告書にも公表文にも記載がない。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:持株の上限と引き換えの提携
考察

考察:持株の上限と引き換えの提携

この決断は、持株を増やしつつある大口株主とどう向き合うかという問いへの答えである。型は「事業の提携と保有の固定の交換」であり、株主を退けることも経営に迎えることも選ばなかった。SBIホールディングス単体の保有は3月12日の1.19%から4月16日に2.37%へ増加しており、同社はその先の買い増しを協議の議題に載せたとみられる。提携の成果は業績の数字にまだ表れていない。現時点で言い切れるのは、グループの取得による割合の増加を契約で止めた点までで、合弁会社が収益を上げるかは未確定である。

縦に見ると、SBIは2度この会社の株主になった。2005年3月にフジテレビ株の13.88%を借り受けて筆頭株主となり、2005年4月18日にライブドア・パートナーズの買収を決議したのちの6月30日に返却した。このときの議決権は期間を区切った貸借で得たものである。2026年2月にレノらの持分を自己株式で取得すると、大口の買い手が去った発行済株式の中でSBIの割合が上がり、対応方針も6月25日に満了した。翌26日に協議開始を公表した順序からすると、期限のある対応方針に代えて、相手を特定した契約で保有を止めたと読める。

横に並べると、資本の使い方の違いが際立つ。東京放送は2009年4月に認定放送持株会社へ移行し、議決権を33%で区切る制度を上限とした。日本テレビはスタジオジブリの議決権を14.86%から42.34%へ引き上げた。SBI自身も新生銀行の議決権47.77%を取得し、2025年3月末には100.0%とした。これに対し同社は、4月時点で7.10%の株主の保有を制度の上限よりはるかに低い水準で止め、IPの事業は折半の合弁に置いた。理由は、第三者委員会の後に経営の独立性を示す必要があった点に絞れるのだろう。

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値2件

フジ・メディアHD:報告セグメントの推移

メディア・コンテンツ売上高(百万円)メディア・コンテンツ利益率(%)

メディア・コンテンツ事業は2026年3月期にセグメント損失30,835百万円を計上

フジ・メディアHD:報告セグメントの推移
(百万円)メディア・コンテンツ売上高メディア・コンテンツ利益都市開発・観光売上高都市開発・観光利益備考
2022年3月期414,50423,072105,08111,153売上高は外部顧客への売上高
2023年3月期420,34217,484108,27515,070
2024年3月期433,09515,706127,12519,537
2025年3月期403,479△4,085140,43124,4901月に第三者委員会を設置した期
2026年3月期349,876△30,835192,85925,1852月にレノらの持分を自己株式で取得した期
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第81期〜第85期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益)
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第81期〜第85期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益)

フジ・メディアHD:SBIグループの株券等保有割合の推移

フジ・メディアHD:SBIグループの株券等保有割合の推移
(%)合算SBIホールディングスレオス・キャピタルワークスSBI岡三アセットマネジメント備考
2026年2月5日3.440.233.21−発行済株式総数234,194,500株が基準
2026年3月12日6.21.194.450.56消却後の発行済株式総数169,123,000株が基準
2026年4月16日7.12.374.450.28手元の直近の報告。単体の保有目的は戦略投資
出所:SBIホールディングス 変更報告書No.1(2026年2月10日提出) / 大量保有報告書(2026年3月13日提出) / 変更報告書No.1(2026年4月17日提出) / フジ・メディア・ホールディングス 臨時報告書(2026年11月5日提出)
出所:SBIホールディングス 変更報告書No.1(2026年2月10日提出) / 大量保有報告書(2026年3月13日提出) / 変更報告書No.1(2026年4月17日提出) / フジ・メディア・ホールディングス 臨時報告書(2026年11月5日提出)
人物:意思決定前後の取締役10名

取締役10名(2025年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務清水賢治取締役:代表取締役業務執行:社長執行役員担当:
柳敦史取締役:取締役業務執行:執行役員担当:財経担当
若生伸子取締役:取締役業務執行:常務担当:
堀内勉学者取締役:取締役業務執行:担当:
澤田貴司商社取締役:取締役業務執行:担当:
柳沢恵子取締役:監査等委員・常勤業務執行:担当:
独立役員稲田雅彦取締役:取締役業務執行:担当:
花田さおり法曹取締役:監査等委員業務執行:担当:
森山進取締役:監査等委員業務執行:担当:
石戸奈々子学者取締役:監査等委員業務執行:担当:
この一覧は2026年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

同業他社の業績概況

免責事項およびポリシー