タイム・ワーナーとのワーナー・マイカル設立(1991年・マイカルの決断)

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論点斜陽の映画興行を店に取り込むか
マイカル:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
郊外の大型店に映画館を組み込む、米映画大手との折半出資の合弁ワーナー・マイカルの設立は1991年6月で、資本金10億円をニチイ側と米国のタイム・ワーナー側が半分ずつ出した。ニチイの新設・改装店に、1つの施設に6〜12の映画館をまとめたシネマコンプレックスを併設する事業である。

何をなぜ決めたか:郊外の大型店に映画館を組み込む、米映画大手との折半出資の合弁

概要

ワーナー・マイカルの設立は1991年6月で、資本金10億円をニチイ側と米国のタイム・ワーナー側が半分ずつ出した。ニチイの新設・改装店に、1つの施設に6〜12の映画館をまとめたシネマコンプレックスを併設する事業である。

事業化を決めたのは、新規事業担当の宇都宮浩太郎専務が英国ニューキャッスルにあるワーナーのシネマコンプレックスを視察してからだった。ニチイの狙いは、若い客を店に集め、店の付帯施設の娯楽性を高めることにあった。

背景

提携の話は設立の5年前に始まった。当時のニチイは、余暇が増加するとみて、買い物以外に客が時間を過ごす施設を店に加える方向へ動いていた。すでにスポーツクラブのピープルやゲームセンターを店に組み込み、集客策として使った経験もあった。

それでも、ニチイは当初この事業に慎重だった。国内の映画館の数は年々減少しており、宇都宮浩太郎専務は『斜陽興行収入産業だし、映画館の暗いイメージもあり、事業は難しいと考えた』と当時の見方を明かしている。一方のワーナーは、集客力のある店と大きな駐車場を持つニチイを提携先として評価していた。

内容

1号館は1993年4月、海老名サティの改装に合わせて開いた。海老名は147〜584人収容の7館、同じ月に開いた東岸和田は8館で、海老名は封切り後6週間で8,042万円の興行収入を上げた。改装後の海老名サティでは、来店客に占める15〜29歳の比率が24.6%から34%に上がった。

計画は全国展開だった。5年間で25〜30施設を開設し、全国に200スクリーンを持つ日本最大の映画館チェーンをつくる計画である。ただし、1994年に予定した弘前ビブレの6館は、地元の映画館の団体から半減を求められた。

含意

映画館は郊外へ広がった。1994年5月までに4館28スクリーンを開設し、その後4年で約30館の開業を予定していた。弘前の計画も予定どおりの開業へ進めた。1999年には、低迷していた映画館の興行が持ち直しつつある理由の1つとして、マイカルのシネマコンプレックスが挙げられた。

合弁はマイカルの破綻の後も残った。イオンは2013年2月期に株式を追加取得してワーナー・マイカルを連結子会社とし、議決権の100%を持った。翌期には社名をイオンエンターテイメントに改めている。

いつ何が起きたか12件
考察:店の客を増やす映画館、店より長く残った事業
考察

考察:店の客を増やす映画館、店より長く残った事業

なぜスーパーが映画館を選んだのか。ニチイが求めたのは映画の収益より、店へ人を呼ぶ仕掛けだった。客層を絞った店に変えても、若い客が来なければ高めの品は売れない。映画は車で通える郊外の店と相性がよく、広い駐車場はスーパーがすでに持っていた。映画館の運営はワーナーが知っている。自前で一から映画館を始めるより、折半の合弁にすれば、ニチイは土地と建物と客を出すだけで済む。斜陽とみていた事業に乗ったのは、店の集客策として計算が立ったからだと思われる。

もっとも、映画館は店の改装と一体の投資でもあった。ワーナー・マイカルの映画館は、ニチイの新設・改装店に合わせて建てる前提である。映画館を増やすほど、店の側の大型の改装や出店も増加する。地元の映画館との調整や配給会社との取引も、計画どおりには進まなかった。若い客を呼ぶという狙いは当たっても、店の改装に要る資金は親会社の負担として積み上がる組み立てだったと言える。

この合弁は、事業としては成功したと言える。1993年の1号館から1年で4館28スクリーンに広がり、海老名サティでは若い客の比率が24.6%から34%に上がった。郊外のシネマコンプレックスは映画興行の回復の一因とまで言われた。ただし、その成果を手にしたのはマイカルではなかった。マイカルの経営破綻の後、ワーナー・マイカルはイオンの完全子会社となり、イオンエンターテイメントへ名を変えた。事業は残り、生んだ会社は残らなかった。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
参考文献

参考文献

参考
  • 日経ビジネス 1993年9月13日号 p46-49
  • 日経ビジネス 1994年2月28日号 p22
  • 日経ビジネス 1994年5月30日号 p22
  • 日経ビジネス 1999年12月20日号 p15
  • 日経ビジネス 1993年9月13日号(日経BP社)
  • マイカル 公式サイト「マイカルのあゆみ」(2006年11月時点)
  • 日経ビジネス 1989年7月17日号 p58-61
  • 日経ビジネス 1999年10月25日号 p14
  • イオン 有価証券報告書 第88期(2013年2月期)【関係会社の状況】
  • イオン 有価証券報告書「第88期(2013年2月期)【関係会社の状況】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • イオン 有価証券報告書「第89期(2014年2月期)【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • マイカル 企業公式サイト「マイカルのあゆみ」

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