筆者の見解
身の丈を選ぶという経営
この判断の核心は、規模の拡大こそ自動車産業で生き残る条件とされた時代に、あえてそれを追わないと決めた点にある。トヨタや日産が世界市場の最大公約数を狙う車づくりで規模を競うなか、鈴木自動車工業は自らを"中小企業"と規定し、大手が採算を確保しにくい軽と二輪の限定市場へ資源を集中した。GMとの提携も、その延長にあった。世界最大のメーカーの資本を受け入れながら、開発と経営の主導権は譲らず、小型車という得意分野でGMを補う——対等でありうる相手とだけ手を結ぶ選び方が、早くもここに現れていたと推察される。
もっとも、身の丈を選ぶ経営は、環境が変われば絶えず問い直しを迫られる。GMとの関係は27年で解け、スズキは次にトヨタを相手に選んだ。相手が代わっても独立を保ち続けられるかどうかは、そのつど交渉と技術の裏づけにかかっている。1981年の提携は、規模の論理に飲み込まれずに専門メーカーが生き残る一つの道を示したが、その道が今後も通用するかは、電動化と自動運転で競争の土俵が変わるなかでなお試されているといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月