完全子会社化に踏み込まず、キリン堂と持分法で組む
2024年実施大手が1兆円・2兆円の連合へ束ねるなか、貞方宏司社長はなぜ統合ではなく持分法を選んだか
- 概要
- 2024年2月、サンドラッグは関西を地盤とするキリン堂ホールディングスを完全子会社化せず、間接持分33.4%を取得して持分法適用会社にとどめた。大手の大型統合が相次ぐドラッグストア業界で、上位連合の外に立ちながらゆるやかな資本提携で規模と商品力を補う、中堅独立の道を選んだ経営判断。
- 背景
- 2021年にマツキヨココカラ&カンパニーが売上高1兆円規模で発足し、2024年にはウエルシアとツルハがイオン主導で2兆円規模の統合協議に入った。連結売上高7,500億円規模のサンドラッグは、規模で仕入れと物流を握る上位連合の外に置かれていた。
- 内容
- 2023年11月にベインキャピタルが助言する投資ファンドと資本提携を結び、2024年2月に同ファンドが握るキリン堂ホールディングスの間接持分33.4%(668万株)を取得した。出資額は公表していない。店舗の重なりが少ない関西の約300店と、PB(自主企画)商品の共同開発で手を組んだ。
- 含意
- 過半を握らず持分法にとどめたのは、互いの独立を保ったまま調達と商品開発を補い合う設計だった。売上高1兆円という中期目標へ、自社の出店とゆるやかな提携を重ねる中堅独立の路線を明確にした。
独立と規模は両立するか
この判断の核心は、大手が1兆円・2兆円の連合へ束ねていくなかで、あえて完全統合を避け、独立と補完を選んだ点にある。過半を握れば連結でき、仕入れの量もそのまま増える。それでも貞方社長は3分の1の持分に絞り、相手の自主性を残した。店舗の重ならない関西のチェーンと、独立を保ったまま調達とPB開発で組む。上位連合に呑まれずに規模を補う一つの解を、才津社長の時代から続く自立志向の延長線上に置いた選択だった。
もっとも、持分法は影響力に限りがあり、完全統合ほどの調達力は生まれにくい。独立を残すぶん、統合が生む果実は薄くなる。売上高1兆円の目標との差を、この提携と追加のM&Aだけで詰め切れるかは、まだ見えない。大手が2兆円連合を組む業界で、中堅が独立と規模をどう両立させるか。キリン堂との持分法提携は、その問いを残している。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
大手が連合へ束ねるドラッグストア業界
2020年代に入り、ドラッグストア業界は上位企業の統合が相次いだ。2021年10月にマツモトキヨシホールディングスとココカラファインが一つになり、売上高1兆円規模のマツキヨココカラ&カンパニーが生まれた。2024年2月にはイオン傘下のウエルシアホールディングスと業界2位のツルハホールディングスが資本業務提携を結び、統合後に売上高2兆円規模へ届く連合づくりに入った。規模で仕入れと物流を握る大手連合と、その外に立つ中堅との差が開いていった[1][2]。
上位連合の外に立つサンドラッグ
この再編の渦中で、サンドラッグは上位連合の外に置かれていた。才津達郎社長のもとで固めた低い販管費と、2009年に買収したダイレックスによるディスカウントストアを合わせた二本柱で、連結売上高は2024年3月期に7,518億円へ伸びていた。それでも、1兆円・2兆円へ集約していく大手との開きは残る。2019年に社長へ就いた貞方宏司は売上高1兆円という中期目標を掲げていたが、自社の出店だけでその差を詰めるのは難しかった[3][4]。
決断
統合でも完全子会社化でもなく、持分法
貞方社長が選んだのは、統合でも完全子会社化でもなかった。2023年11月、サンドラッグはベインキャピタルが助言する投資ファンドと資本提携を結び、翌2024年2月、そのファンドが握る関西地盤のキリン堂ホールディングスの間接持分33.4%(668万株)を取得して持分法適用会社とした。過半の株式を握って傘下に収めるのではなく、3分の1に絞って発言力を持つにとどめた。出資額は公表していない[5][6]。
相手の独立を残すという線引き
持分法にとどめた設計には理由があった。キリン堂は関西を地盤に約300店を持ち、首都圏や地方に強いサンドラッグとは店舗の重なりが少ない。サンドラッグの店舗運営や医薬品・化粧品の販売力と、キリン堂の接客やPB商品の開発力は、互いに補い合える。両社の独立を保ったまま、仕入れと商品開発で手を組む。完全子会社化の一歩手前で止めたのは、相手の自主性を残すための線引きだった[7][8]。
結果
中堅独立という路線の明確化
キリン堂との提携は、サンドラッグが業界再編とどう向き合うかを示した。大手が完全統合で規模を追うのに対し、貞方体制は自社の出店に、資本を薄く重ねる提携と持分法を組み合わせた。有価証券報告書は、2023年11月にBCPE KNIGHT HOLDINGS CAYMANと資本提携契約を結び、2024年2月にキリン堂グループを持分法適用会社としたと記す。上位連合に加わらず、独立を保ったまま規模と商品力を補う。売上高1兆円という目標への打ち手を、統合ではなく提携に置いた[9][10]。