サンドラッグ ダイレックスの買収 ドラッグストアとディスカウントストアによる二業態体制への移行

更新:

時期 2009年12月
当時の社長 才津達郎
論点 業態の多角化と地方商圏の開拓
何をなぜ決めたか
概要

2009年12月25日、サンドラッグは九州・中四国でディスカウントストアを展開するダイレックス株式会社の全株式を取得し、議決権比率100%の完全子会社とした。株式の対価は95億円、取得に直接要した費用を含めた取得原価は95億8百万円である。連結売上高2,325億円のドラッグストア専業が、都市はドラッグストア、地方は食料品まで扱うディスカウントストアという二業態体制へ移った経営判断。

背景

有価証券報告書が挙げる企業結合の理由は、サンドラッググループの更なる競争力強化を図るため、という一文にとどまる。サンドラッグは同じ第47期の2009年9月にドラッグストアと調剤薬局を営む株式会社星光堂薬局も16億50百万円で取得しており、既存業態の強化と業態の追加を同じ年度に並べて進めた。

内容

企業結合日に受け入れた資産は288億29百万円、引き受けた負債は211億55百万円で、差額の18億35百万円をのれんとして認識し、5年間にわたる均等償却とした。ダイレックスの業績は2009年11月21日から連結に取り込まれ、当期の取込分は売上高346億32百万円。期首に完了したと仮定した場合の売上高への影響概算額は694億99百万円、経常利益への影響概算額は9億53百万円とされている。

含意

翌期の第48期からドラッグストア事業とディスカウントストア事業の2つが報告セグメントとなった。ディスカウントストア事業の売上高は2011年3月期の959億46百万円から2025年3月期の3,422億53百万円へ増え、連結売上高に占める比率は約27%から約43%になった。取得によるのれんは5年で償却を終え、2015年3月期末の残高はゼロとなっている。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

強みの効く商圏を、別の業態で埋める

企業結合日に受け入れた資産288億29百万円に対し、引き受けた負債は211億55百万円で、時価の純資産は76億74百万円にとどまる。そこへ95億8百万円を払い、差額18億35百万円をのれんとして立てたうえで、5年間の均等償却という短い期間を選んでいる。企業結合の理由として有価証券報告書が挙げるのは、サンドラッググループの更なる競争力強化を図るため、という一文だけで、同じ第47期に取得した星光堂薬局と同じ文言が並ぶ。買収の意味は説明の側にではなく、九州・中四国という自社のドラッグストアが届きにくい商圏と、食料品まで扱う別の店の形を一度に獲得したという中身の側にある。

その中身は翌期のセグメントの区分に現れた。第48期からドラッグストア事業とディスカウントストア事業の2つが報告セグメントとなり、ディスカウントストア事業の売上高は2011年3月期の959億46百万円から2015年3月期の1,440億67百万円、2025年3月期の3,422億53百万円へ伸びて、連結売上高の約43%を占めるに至っている。セグメント利益も22億55百万円から178億50百万円へ増えた。のれんは5年で償却し終えて貸借対照表から消えており、この買収が残したものは会計上の残高ではなく、都市と地方を業態で使い分ける体制そのものであっただろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業の名称 ダイレックス株式会社 事業の内容はディスカウントストアの経営
企業結合を行った主な理由 サンドラッググループの競争力強化 有価証券報告書の記載はこの一文にとどまり、同じ期の星光堂薬局の取得と同じ文言
企業結合日 2009年12月25日
企業結合の法的形式 株式取得 結合後企業の名称はダイレックス株式会社
取得した議決権比率 100%
業績の取込期間 2009年11月21日から2010年3月31日 連結財務諸表に含まれている被取得企業の業績の期間
取得の対価 9,500百万円 ダイレックス株式会社の株式に対する対価
取得に直接要した費用 8百万円
取得原価 9,508百万円
受け入れた資産の額 28,829百万円 流動資産13,736百万円、固定資産15,092百万円
引き受けた負債の額 21,155百万円 流動負債11,704百万円、固定負債9,451百万円
のれんの金額 1,835百万円 企業結合時の時価純資産が取得原価を下回った差額
のれんの償却方法 5年間にわたる均等償却 2015年3月期末にディスカウントストア事業ののれん未償却残高はゼロとなった
通期換算の売上高への影響 69,499百万円 期首に完了したと仮定した場合の概算額。監査証明は受けていない
通期換算の経常利益への影響 953百万円 期首に完了したと仮定した場合の概算額。監査証明は受けていない
同じ期のもう一件の取得 株式会社星光堂薬局(2009年9月1日) 取得原価1,650百万円、のれん323百万円を3年間にわたり均等償却
買付価格・契約日 記載なし 第47期の【経営上の重要な契約等】は該当事項なしとされている

出所:サンドラッグ 有価証券報告書 第47期(2010年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】・第48期(2011年3月期)【セグメント情報】

セグメント別の売上高とセグメント利益の推移

サンドラッグ:セグメント別の売上高とセグメント利益の推移

(百万円) ディスカウントストア事業 売上高同 セグメント利益ドラッグストア事業 売上高 備考
2010年3月期 34,632650249,479 第47期有報はセグメント情報を省略。数値は第48期有報の前期比較欄から採った
2011年3月期 95,9462,255264,708 ダイレックスの通期が初めて入った期。連結売上高は360,655
2012年3月期 105,7832,846281,053
2013年3月期 118,3453,432289,056
2014年3月期 135,3504,839312,468
2015年3月期 144,0675,398301,750 ドラッグストア事業が減収となり、連結売上高も前期の447,819から445,818へ
セグメント別の売上高
ディスカウントストア事業 売上高(百万円)ドラッグストア事業 売上高(百万円)

出所:サンドラッグ 有価証券報告書 第48期〜第52期(セグメント情報) / サンドラッグ 有価証券報告書 第43期〜第47期(連結損益計算書・事業の種類別セグメント情報)

のれんと総資産の推移

サンドラッグ:のれんと総資産の推移

(百万円) のれんうちディスカウントストア事業総資産 備考
2005年3月期 −−63,112 連結貸借対照表にのれんの科目はない
2006年3月期 −−69,531 連結貸借対照表にのれんの科目はない
2007年3月期 −−79,251 連結貸借対照表にのれんの科目はない
2008年3月期 −−87,623 のれんの科目はなく、無形固定資産は4,245
2009年3月期 −−98,997 のれんの科目はなく、無形固定資産は4,261
2010年3月期 2,308−130,253 ダイレックス1,835と星光堂薬局323を当期に計上。セグメント別の残高開示は翌期から
2011年3月期 1,7621,376140,009
2012年3月期 1,2331,009153,423
2013年3月期 746642168,073
2014年3月期 350275192,167
2015年3月期 5120189,688 ダイレックス取得によるのれんの償却が終わり、当期末のセグメント残高はゼロ
のれんの未償却残高
のれん(百万円)うちディスカウントストア事業(百万円)

出所:サンドラッグ 有価証券報告書 第43期〜第52期(連結貸借対照表) / サンドラッグ 有価証券報告書 第49期〜第52期(報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報)

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参考文献
出典・参考
  • サンドラッグ 有価証券報告書 第47期(2010年3月期・連結)
  • サンドラッグ 有価証券報告書 第48期(2011年3月期・連結)
  • サンドラッグ 有価証券報告書 第43期〜第52期(連結貸借対照表・セグメント情報)
  • サンドラッグ 有価証券報告書 第62期(2025年3月期・連結)
  • サンドラッグ 有価証券報告書「第47期(2010年3月期)有価証券報告書」
  • サンドラッグ 有価証券報告書「第48期(2011年3月期)有価証券報告書」
  • サンドラッグ 有価証券報告書「第52期(2015年3月期)有価証券報告書」

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