住友商事監査等委員会設置会社へ移行:中期経営計画2026の実行加速へ、取締役会から経営執行へ権限を委ねる機関設計の変更

更新:

時期 2025年1月
当時の社長 上野真吾
論点 取締役会の実効性と権限委譲
概要

2025年1月28日、取締役会が機関設計の変更を決議し、同日対外開示した。6月20日の第157期定時株主総会では定款の一部変更が賛成割合99.59%で可決され、総会終結の時をもって監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移った。

定款からは監査役会と監査役に関する規定が消え、監査等委員会と監査等委員に関する規定、および取締役会から取締役への権限の委任に関する規定が加わった。移行後の取締役会は取締役15名のうち8名が独立社外取締役で、監査等委員である取締役5名のうち3名が社外取締役となる。

背景

2023年度の取締役会実効性評価は、「取締役会が発揮すべき機能」「取締役会の構成」「取締役会のアジェンダ設定」の3項目を2024年度に取り組む課題として挙げた。これを受け、2024年8月から12月にかけて「取締役会の在り方見直し」をテーマに取締役会オフサイト・ミーティングで計5回の議論を重ね、取締役会の役割・体制・アジェンダ設定・機関設計変更を含む包括的な見直し方針をまとめた。

議論では、2024年4月に実施した経営執行の機構改正に呼応する形で取締役会と経営会議の役割を一層明確に分ける方向を確認し、監督機能強化の具体策として社外取締役の過半数化と全社的な重要経営テーマへのモニタリングの拡充を進める方針を定めている。

内容

移行の狙いは3点に整理された。取締役会と経営執行の役割について監督と執行をより明確に区分し、取締役会から経営執行への権限委譲を進めること。取締役会の過半数を社外取締役として大局的かつ多様性に富んだ視点から監督を行うとともに、全社経営に影響を及ぼす重要な意思決定を行うこと。監査等委員会が内部監査部門等と連携して監査の体制と実効性を高めること。

投資案件等の個別事案については経営会議への委任範囲を拡大した。監査等委員である取締役の任期は2年、それ以外の取締役は1年で、報酬枠は同じ総会で議案を分けて決めている。

含意

移行後に実施した2025年度の取締役会実効性評価では、取締役会付議基準の改定やアジェンダの再整理といった施策により、狙いであった「経営執行の意思決定の機動性・迅速性の向上」と「モニタリング機能の強化」に一定の成果があった。2025年度の取締役会は16回開かれ、うち13回が移行後である。

2026年度は、モニタリングボードとしての機能強化、取締役会の構成の最適化検討、監査等委員会の監査活動から得られる情報のさらなる活用、指名・報酬諮問委員会からの報告内容の拡充という4項目を重点的に取り組む課題に置いている。

筆者の見解

取締役会が手放したもの

この移行で実際に動いたのは監査の器ではなく、取締役会が自ら決める範囲の線引きだったとみられる。監査役5名は監査等委員である取締役5名へ姿を変えたが、常勤の社内2名と非常勤の社外3名という構成は移行の前後で変わっていない。変わったのは、投資案件等の個別事案を経営会議へ委ねられるようになったことと、取締役会の過半数を社外取締役が占めたことである。総合商社の投資判断は件数も規模も大きく、そのすべてを取締役会に上げ続ける限り、審議の時間は個別案件の可否に費やされる。付議基準の改定は、その時間を全社の方向づけへ振り向けるための手当てだったといえる。

もっとも、決める範囲を狭めることと監督が濃くなることは同じではない。委任の先にある経営会議は社長執行役員CEOを頂点とする執行の機関であり、そこへ回った案件を取締役会が後から追う体制が実効を持つかどうかは、監査等委員会から取締役会へ流れる情報の質にかかっている。2026年度の重点課題に監査等委員会の監査活動から得られる情報の活用とモニタリングボードとしての機能強化が並んだのは、移行1年目で残った宿題がそこにあることを示しているのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
見直しの発端 2023年度の取締役会実効性評価 「取締役会が発揮すべき機能」「取締役会の構成」「アジェンダ設定」を2024年度の課題とした
集中議論 2024年8月から12月 「取締役会の在り方見直し」をテーマに、取締役会オフサイト・ミーティングで計5回
取締役会の決議 2025年1月28日 機関設計の変更を決議し、同日対外開示した
定款変更の内容 監査等委員会に関する規定の新設 取締役会から取締役への権限の委任に関する規定を新設し、監査役会・監査役の規定を削除
株主総会の決議 2025年6月20日 第157期定時株主総会の第2号議案。賛成割合99.59%で可決し、総会終結の時に効力が生じた
移行の目的 取締役会の実効性の強化 中期経営計画2026で掲げた成長戦略の実行を加速させることを目的に置いた
取締役会の構成 取締役15名のうち社外取締役8名 過半数を社外取締役とし、大局的かつ多様性に富んだ視点から経営執行を監督する
監査等委員会の構成 監査等委員である取締役5名 常勤の社内取締役2名と非常勤の社外取締役3名。うち3名が独立社外取締役
取締役の任期 監査等委員は2年、それ以外は1年 移行前の取締役の任期は全員1年だった
権限委譲 投資案件等の経営会議への委任範囲の拡大 監督と執行を明確に区分し、経営執行における迅速な意思決定を図る
報酬枠(監査等委員でない取締役) 例月報酬 年額7億円以内 うち社外取締役は年額2億円以内。業績連動賞与は年額7億5,000万円以内
報酬枠(監査等委員である取締役) 例月報酬 年額2億5,000万円以内 移行前の監査役5名の報酬枠は、2013年6月の決議による年額1億8,000万円以内
株式報酬 年額26億円以内・年60万株以内 譲渡制限付業績連動型株式報酬。監査等委員である取締役と社外取締役は対象外
移行後の施策 取締役会付議基準の改定 アジェンダの再整理とあわせ、モニタリングと議論の実効性向上を目的に実施した
移行後の取締役会 2025年度は16回開催 原則として毎月1回。2025年6月20日の移行以降は13回開かれた

出所:住友商事 第157期定時株主総会招集ご通知(2025年6月)/有価証券報告書 第157期(2025年3月期)・第158期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】/臨時報告書(第157期定時株主総会における議決権行使結果)

住友商事:取締役会と監査機関の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役 備考
2021年8月時点 1155 監査役5名のうち3名が社外監査役。社外役員は取締役・監査役あわせて8名
2022年6月時点 1155
2023年6月時点 1155
2024年6月時点 1155
2025年6月時点 158 監査等委員会設置会社へ移行。取締役15名には監査等委員である取締役5名を含む
2026年6月時点 158

出所:住友商事 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年8月31日〜2026年6月15日提出分)

住友商事:第157期定時株主総会の議案別賛成割合

(%) 賛成割合 備考
第2号議案 定款の一部変更 99.59 監査等委員会設置会社への移行にともなう定款変更
第4号議案 御子神大介 95.36 常勤の監査等委員である取締役
第4号議案 坂田一成 95.32 常勤の監査等委員である取締役
第4号議案 長嶋由紀子 87.67 社外取締役。監査等委員5名のうち賛成割合が最も低かった
第4号議案 稲田伸夫 97.9 社外取締役
第4号議案 國井泰成 97.87 社外取締役
第6号議案 取締役の報酬額 98.01
第7号議案 監査等委員の報酬額 98.03
第8号議案 株式報酬 97.79

出所:住友商事 臨時報告書(第157期定時株主総会における議決権行使結果)

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出典・参考
  • 住友商事 招集通知「第157期定時株主総会招集ご通知」
  • 住友商事 臨時報告書「第157期定時株主総会における議決権行使結果」
  • 住友商事 有価証券報告書「第157期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • 住友商事 有価証券報告書「第158期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」

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