この移行で実際に動いたのは監査の機関設計ではなく、取締役会が自ら決める範囲の線引きだっただろう。監査役5名は監査等委員である取締役5名へ姿を変えたが、常勤の社内2名と非常勤の社外3名という構成は移行の前後で変わっていない。変わったのは、投資案件等の個別事案を経営会議へ委ねられるようになったことと、取締役会の過半数を社外取締役が占めたことである。総合商社の投資判断は件数も規模も大きく、そのすべてを取締役会に上げ続ける限り、審議の時間は個別案件の可否に費やされる。付議基準の改定は、その時間を全社の方向づけへ振り向けるための手当てだったといえる。
もっとも、決める範囲を狭めることと監督が濃くなることは同じではない。委任の先にある経営会議は社長執行役員CEOを頂点とする執行の機関であり、そこへ回った案件を取締役会が後から追う体制が実効を持つかどうかは、監査等委員会から取締役会へ流れる情報の質にかかっている。2026年度の重点課題に監査等委員会の監査活動から得られる情報の活用とモニタリングボードとしての機能強化が並んだのは、移行1年目で残った宿題がそこにあることを示しているのだろう。