カカクコム監査等委員会設置会社への移行:議決権を持つ監査等委員3名の設置と、うち2名による翌年の非公開化提案の審議

更新:

時期 2025年6月
当時の社長 村上敦浩
論点 機関設計と監査の実効性
概要

2025年6月19日開催の定時株主総会の決議により、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移った。取締役会において議決権を有する監査等委員が監査を行うことで監査の実効性を高めることが、企業価値の向上に有効であるとの考えによる。

移行前の取締役会は社外取締役4名を含む9名で、経営の監査は常勤監査役1名と社外監査役2名の監査役会が担っていた。移行後は監査等委員を除く取締役9名と監査等委員である取締役3名の合計12名となり、取締役会に議席を持つ社外取締役は4名から6名へ増えた。

背景

定款の員数は、監査等委員を除く取締役11名以内、監査等委員である取締役5名以内の合計16名以内と定めた。監査等委員会は常勤監査等委員1名と社外取締役監査等委員2名の3名で構成し、委員長は常勤監査等委員の平井裕文氏が務める。

監査役会の顔ぶれはおおむね引き継がれ、常勤監査役だった平井裕文氏と社外監査役だった梶木壽氏が監査等委員である取締役へ移り、公認会計士の井上美樹氏が加わった。取締役候補の指名は、常勤取締役1名と独立社外取締役3名で構成する任意の指名・報酬委員会が審議し、委員長は独立社外取締役の木下雅之氏が務める。

内容

監査等委員である取締役の選任は、監査等委員会の同意を得たうえで取締役会が審議する。監査等委員会は監査方針と監査計画に従って重要な会議に出席し、業務執行取締役や使用人から職務執行の状況を聴取し、子会社の調査や会計監査人からの報告を通じて計算書類と事業報告を監査する。代表取締役との意見交換も担う。

2025年6月19日の総会では、監査等委員である取締役3名の選任に対する賛成率が平井裕文氏97.5%、梶木壽氏99.7%、井上美樹氏99.8%となり、同じ総会の取締役9名の選任(77.7〜99.5%)より高い水準で可決された。

含意

移行の翌年、この体制が非公開化提案の審議にそのまま使われた。2026年2月18日の取締役会決議で設置した特別委員会の委員3名のうち、梶木壽氏と井上美樹氏の2名が監査等委員である独立社外取締役である。独立社外取締役6名のうち3名は公開買付関連当事者との利害関係を有する可能性があるため委員から外れた。

2026年5月12日の取締役会では、林郁氏ら4名を除く取締役7名の全員一致で公開買付けへの賛同と応募推奨を決議した。この「利害関係を有しない取締役(監査等委員である取締役を含む。)全員の承認」が、公正性を担保する措置の一つに数えられている。応募推奨は同年7月に対抗提案を受けて撤回され、買収の帰趨は本稿の時点で決していない。

筆者の見解

議席を持つ監査役

この移行で変わったのは監査の担い手ではなく、監査する者が座る席である。平井裕文氏も梶木壽氏も、移行の前後で監査を担う顔ぶれとしては同じだった。違うのは、監査役会の席には取締役会の議決権がなく、監査等委員である取締役の席にはそれがあることだ。掲げた理由も「取締役会において議決権を有する監査等委員が監査を行う」という一点に絞られている。監査の実効性を高める手立てとして、監督の側に議席を増やすことを選んだのだといえる。

もっとも、その効き目が最初に表れたのは平時の監督ではなく、会社そのものを売るかどうかの審議だった。2026年2月に設けられた特別委員会は3名のうち2名が監査等委員で、独立社外取締役6名のうち3名が利害関係の疑いで外れた後に残った顔ぶれである。移行がなければ、この2名は取締役会の議決に加わることも、利害関係を有しない取締役全員の承認という数のなかに入ることもなかった。前年の機関設計が、翌年の支配権の帰趨を審議する土台になったとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行の決議 2025年6月19日 定時株主総会の決議により監査役会設置会社から移行した
移行の理由 議決権を有する監査等委員による監査 監査の実効性を高めることが企業価値の向上のために有効であるとの考えによる
移行前の機関 監査役会設置会社 取締役9名(うち社外4名)、監査役会は常勤1名と社外2名の3名。定款の員数は11名以内
移行後の取締役会 取締役12名 監査等委員を除く9名(うち社外4名)と監査等委員3名(うち社外2名)
定款の員数 合計16名以内 監査等委員を除く取締役11名以内、監査等委員である取締役5名以内
監査等委員会の構成 常勤1名と社外2名の3名 委員長は常勤監査等委員の平井裕文氏。社外は梶木壽氏と井上美樹氏
監査等委員の選任 監査等委員会の同意を得て取締役会が審議 職務執行の監査を的確かつ公正に遂行できる知識・能力・経験を踏まえる
任意の指名・報酬委員会 常勤取締役1名と独立社外取締役3名 委員長は独立社外取締役の木下雅之氏。監査等委員を除く取締役候補を審議する
特別委員会の設置 2026年2月18日 取締役会決議。委員3名のうち2名が監査等委員である独立社外取締役
特別委員会から外れた社外 独立社外取締役6名のうち3名 公開買付関連当事者との間で利害関係を有する可能性があるため選任しなかった
賛同の決議 2026年5月12日 利害関係を有しない取締役7名の全員一致。応募推奨は同年7月に撤回された

出所:カカクコム 有価証券報告書 第27期(2024年3月期)・第28期(2025年3月期)・第29期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、意見表明報告書(2026年5月13日)

カカクコム:取締役選任議案の候補者別賛成率

(%) 賛成率 備考
2024年6月 林郁 96.3 取締役会長。移行前の総会で、監査役会設置会社のまま9名を選任した
2024年6月 村上敦浩 94 代表取締役社長
2024年6月 木下雅之 97.4 独立社外取締役。任意の指名・報酬委員会の委員長
2024年6月 門脇誠 75.6 社外取締役。候補者9名のうち最も低い
2025年6月 林郁 94 移行を決議した総会。前年から2.3ポイントの低下
2025年6月 村上敦浩 96.6
2025年6月 木下雅之 99.5
2025年6月 門脇誠 77.7 候補者9名のうち最も低い。2026年の候補には名前がない
2025年6月 平井裕文 97.5 監査等委員である取締役。常勤監査役から移り、監査等委員会の委員長を務める
2025年6月 梶木壽 99.7 監査等委員である独立社外取締役、弁護士。社外監査役からの移行
2025年6月 井上美樹 99.8 監査等委員である独立社外取締役、公認会計士。この総会で新たに就任
2026年6月 林郁 83.2 非公開化提案のさなかの総会。前年から10.8ポイントの低下
2026年6月 村上敦浩 96.2
2026年6月 木下雅之 97.8 特別委員会の委員長

出所:カカクコム 臨時報告書(2024年6月19日・2025年6月19日・2026年6月18日開催の定時株主総会における議決権行使結果)

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出典・参考
  • カカクコム 有価証券報告書「第27期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • カカクコム 有価証券報告書「第28期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • カカクコム 有価証券報告書「第29期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」

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