監査等委員会設置会社への移行(2025年・大王製紙の決断)

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論点監督と執行をどう分けるか
大王製紙:業績の推移
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監督と執行を分離し、取締役会を中長期の戦略の議論に寄せる選択2025年6月26日開催の第114回定時株主総会における承認をもって、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。掲げた理由は、取締役会が中長期の経営戦略等を議論・決定することに重点を置き、監督機能の強化を通じて一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図るとともに、権限委譲を行うことにより意思決定の更なる迅速化を図ることにある。

何をなぜ決めたか:監督と執行を分離し、取締役会を中長期の戦略の議論に寄せる選択

概要

2025年6月26日開催の第114回定時株主総会における承認をもって、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。掲げた理由は、取締役会が中長期の経営戦略等を議論・決定することに重点を置き、監督機能の強化を通じて一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図るとともに、権限委譲を行うことにより意思決定の更なる迅速化を図ることにある。

取締役は移行直前の10名から15名へ、うち独立社外取締役は4名から7名へ増加した。

背景

定款で定める取締役の員数は2022年6月に20名から15名へ、任期は2年から1年へ改められており、取締役会を絞って回転を速める方向はこのときから続いていた。移行を踏まえた経営会議および任意の委員会のあり方は、2024年度の取締役会でガバナンス関連の議題として審議されている。

指名委員会と報酬委員会はいずれも独立社外取締役を委員長とし、委員の過半数を独立社外取締役が占める構成を、移行の前からすでに備えていた。

内容

監査等委員会は取締役5名で構成し、うち3名が独立社外取締役。委員長には弁護士として企業法務に関する専門的な知識及び経験を持つ武井洋一氏が就任し、残る2名は大王製紙の事業で多様な業務経験を積んだ非業務執行の社内取締役が常勤で務める。

職務を補佐する組織として監査等委員会室を独立して設け、専任の使用人2名を配置し、取締役からの指揮命令権から独立させた。2025年度は監査等委員会を10回開催し、平均出席率は98%である。指名委員会と報酬委員会には、監査等委員会委員長がオブザーバーとして出席する。

含意

移行と同じ2025年6月26日から、委任型の執行役員制度を雇用型と併用する方式で導入した。経営に係る意思決定・監督と業務執行をより明確に分離し、執行役員の業務執行の責任範囲を明確にしたうえで権限を委譲することが目的にある。

取締役会はモニタリングを重視した運営へ移り、定款の員数は監査等委員である取締役を除いて15名以内、監査等委員である取締役は5名以内という二本立てになった。移行に伴い、総会終結前の行為に関する監査役の損害賠償責任を取締役会の決議で免除できる経過措置も定款に置いている。

いつ何が起きたか6件
当時の取締役15名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

考察:動いたのは監査の形ではない
考察

考察:動いたのは監査の形ではない

監査等委員会設置会社への移行は、監査役を取締役に置き換える組織の入れ替えとして語られやすい。だが同じ日に委任型の執行役員制度が入ったことを合わせて見ると、動いたのは監査の形ではなく、決める場所そのものだっただろう。取締役は10名から15名へ、独立社外取締役は4名から7名へ増加し、取締役会の半数近くを社外が占めるようになった。人数の増加した取締役会が個々の業務執行まで決めていては回らない。決裁を執行側へ落とし、取締役会は中長期の戦略と監督に絞る、その組み替えを成立させる制度として監査等委員会設置会社という機関設計が選ばれたのだろう。

もっとも、社外取締役を増やすという処方は、この会社にとって初めてのものではない。元会長の借入事件の再発防止策には、取締役間の相互監視機能の強化として社外取締役の招聘が掲げられ、2012年6月の株主総会で2名が選ばれている。そこから13年を経て、独立社外取締役は7名になった。形を整えるところまでは着実に進んだといえる。残るのは、監督する者が執行から実際に離れていられるかどうかである。委員長に弁護士を据え、専任の使用人を置いた監査等委員会室を指揮命令から独立させた設計が答えになるかは、これからの運用が示すほかない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

大王製紙:取締役会と監査体制の構成

取締役(名)うち独立社外取締役率(%)
大王製紙:取締役会と監査体制の構成
(名)取締役うち独立社外取締役監査役うち独立社外監査役備考
2021年11月12453定款の員数は20名以内、任期は2年
2022年6月11453定款の員数を15名以内へ、任期を1年へ改めた
2023年6月12453
2024年6月10443
2025年6月157−−監査等委員会設置会社へ移行。監査等委員である取締役5名のうち3名が独立社外
2026年6月157−−
出所:大王製紙 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年11月22日〜2026年6月25日)
出所:大王製紙 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年11月22日〜2026年6月25日)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
移行の承認2025年6月26日第114回定時株主総会。監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した
移行の理由監督機能の強化と権限委譲取締役会を中長期の経営戦略等の議論・決定に重点を置く体制へ改め、意思決定を速める
取締役の員数15名以内定款。監査等委員である取締役は別枠で5名以内と定める
取締役会の構成取締役15名・独立社外取締役7名移行直前は取締役10名・独立社外取締役4名だった
監査等委員会の構成取締役5名中3名が独立社外残る2名は大王製紙の事業で多様な業務経験を積んだ非業務執行の社内取締役が常勤で務める
監査等委員会の委員長武井洋一氏独立社外取締役。弁護士として企業法務に関する専門的な知識及び経験を有する
監査等委員会室専任の使用人2名独立した組織として設置し、取締役からの指揮命令権から独立させた
執行役員制度委任型を併せて導入2025年6月26日より。雇用型と併用し、責任範囲を明確にしたうえで権限を委譲する
2025年度の開催監査等委員会10回平均出席率98%。移行前の監査役会は3回で、出席率は100%
責任免除の経過措置定款に規定総会終結前の行為に関する監査役の損害賠償責任を取締役会の決議で免除できる
出所:大王製紙 有価証券報告書 第114期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】・第115期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】【監査の状況】
出所:大王製紙 有価証券報告書 第114期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】・第115期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】【監査の状況】
当時の取締役15名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 大王製紙 有価証券報告書「第114期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • 大王製紙 有価証券報告書「第115期(2026年3月期)【監査の状況】」
  • 大王製紙 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2026年6月25日提出」
  • 大王製紙 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2021年11月22日〜2025年6月12日提出」

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