MS&ADインシュアランスグループホールディングス監査等委員会設置会社への移行:社外取締役を過半数とし内部監査を監査等委員会の下へ置く機関設計の組み替え

更新:

時期 2025年6月
当時の社長 舩曵真一郎
論点 監督機能の強化と社外取締役比率の引き上げ
概要

2025年6月23日開催の第17期定時株主総会で定款の変更が決議され、同日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。あわせて監査等委員でない取締役10名と監査等委員である取締役3名を選任し、監査役および監査役会を廃止している。

取締役会は13名のうち7名が社外取締役となり、過半数を社外が占める構成に改まった。定款上の取締役の員数も15名から17名へ引き上げている。

背景

前年度の取締役会評価は、社外取締役比率が過半数に達していないことを課題として挙げていた。そこでまとめられた機能向上策が、機関設計を監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ変更し、社外取締役比率を過半数とするべく体制を構築することである。

評価は全取締役へのアンケートと社外取締役会議での意見交換、ガバナンス委員会でのとりまとめという3段で行われ、アンケートでは保険事業会社で発生した不適切な行為に関連する対応状況も確認の対象とされた。

内容

監査等委員会は取締役3名で構成し、うち2名が社外取締役、委員長は社外取締役の國井泰成氏が務める。職務を補助する組織として内部監査部に監査等委員会事務局を置き、専任3名と兼任1名を配置した。

監査等委員会は内部監査部門への指揮命令権を持ち、グループ内部監査基本方針・内部監査規程・内部監査計画は取締役会の承認を得る前に監査等委員会の同意を要する。内部監査部門長の選解任と人事考課も、決定前に同意を得る手続きとした。

含意

重要な業務執行に関する決定の一部を取締役へ委任できるようになり、意思決定と業務執行の迅速化が図られた。移行後の2025年度に、取締役会は10回、監査等委員会は9回開かれている。

同年度の取締役会評価は、機関設計の変更により意思決定の迅速化と、監査等委員会との連携による内部監査のレベルアップができており、ガバナンス強化が図られていると結論づけた。

筆者の見解

監査を監督の側へ移す

機関設計の変更は形式の話に見えて、実際に動いたのは監査の置き場所だった。監査役は取締役会の外にいる独任制の機関で、議決権を持たない。監査等委員は取締役として取締役会に議席を持ち、そこから職務の執行を監査する。監査が監督の側へ移ったことで、内部監査部門の指揮命令権が監査等委員会に渡り、内部監査計画も監査部門長の人事も、取締役会が決める前に監査等委員会の同意を通る設計になった。執行から独立した監査の経路が、初めて制度として敷かれたとみられる。

もっとも、社外取締役の過半数も、内部監査への指揮命令権も、それ自体が不正を止めるわけではない。傘下2社で保険料調整行為と情報漏えいが相次いだ経緯を踏まえれば、持株会社の取締役会が知るべきことを知る仕組みが働いていなかったという診断が先にある。監査等委員会が重点監査項目に業務改善計画への対応を据え、グループガバナンス強化の観点から監視・検証を続けると明示したのは、その自覚の表れだろう。器を替えた効果は、事業会社の現場で起きていることが何回の会議を経て取締役会に届くかという、地味な運用で測られることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
課題の認識 2024年度の取締役会評価 社外取締役比率が過半数に達していないことが課題であると結論づけた
機能向上策 機関設計の変更 監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ変更し、社外取締役比率を過半数とする
株主総会の議案 定款一部変更の件ほか2件 監査等委員でない取締役10名選任の件、監査等委員である取締役3名選任の件
移行日 2025年6月23日 第17期定時株主総会で定款の変更が決議され、同日付で移行した
廃止した機関 監査役および監査役会 移行前は監査役4名(男性2名・女性2名)で、うち社外監査役は2名
監査等委員会の構成 取締役3名(うち社外2名) 委員長は社外取締役の國井泰成氏。女性比率は33.3%
取締役会の構成 13名(うち社外7名) 移行前は11名(うち社外5名)。定款上の員数は15名から17名へ
業務執行の委任 重要な業務執行の決定の一部 取締役へ委任し、意思決定及び業務執行の迅速化を図る
監査等委員会の事務局 内部監査部監査等委員会事務局 専任スタッフ3名と兼任スタッフ1名を配置した
内部監査部門との関係 監査等委員会が指揮命令権を持つ 内部監査部門長は監査等委員会に出席し、監査の結果を報告する組織監査体制
内部監査計画の同意 取締役会の承認を得る前 内部監査基本方針・内部監査規程・内部監査計画が対象。部門長の人事も同様
移行後の開催回数 取締役会10回・監査等委員会9回 2025年度。移行前は取締役会2回・監査役会3回であった
重点監査項目 業務改善計画への対応を含む 傘下2社の情報漏えい事案と保険料調整行為事案の改善を監視・検証する
移行後の評価 ガバナンス強化が図られている 意思決定の迅速化と、監査等委員会との連携による内部監査のレベルアップ

出所:MS&ADインシュアランスグループホールディングス 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)・第18期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【監査の状況】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2025年6月12日・2026年6月3日)

MS&ADインシュアランスグループホールディングス:取締役会と監査機関の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役 備考
2021年10月 1044 社外監査役は2名。定款上の取締役の員数は15名
2022年6月 1154
2023年5月 1154
2024年6月 1154
2024年11月 1154 社外取締役比率は45.5%で、この年度の取締役会評価が過半数に達していないと指摘
2025年6月 137 2025年6月23日に監査等委員会設置会社へ移行。監査役会を廃し、監査等委員3名を置いた
2025年11月 137
2026年6月 137 社外取締役比率は53.8%。取締役13名の内訳は男性9名・女性4名
取締役会の構成
うち社外取締役(名)社外を除く取締役(名)

出所:MS&ADインシュアランスグループホールディングス コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年10月28日・2022年6月21日・2023年5月30日・2024年6月11日・2024年11月21日・2025年6月12日・2025年11月11日・2026年6月3日)

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出典・参考

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