古河電工監査等委員会設置会社への移行:監査役会を畳んで監査を取締役会の内側へ移し、業務執行の決定を経営陣へ委ねる体制へ
更新:
- 概要
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2025年6月25日の第203回定時株主総会で「定款一部変更の件」「取締役(監査等委員である取締役を除く)8名選任の件」「監査等委員である取締役3名選任の件」が可決され、同日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。報酬額の決定と業績連動型株式報酬制度の一部改定も同じ総会にかけられている。
定款上の取締役の員数は20名以内から、監査等委員を除く取締役10名以内と監査等委員である取締役4名以内へ改められた。監査役6名の役割は、取締役会の一員である監査等委員3名が引き継いだ。
- 背景
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移行の理由に挙げたのは二つである。取締役会が業務執行の決定を広く経営陣に権限委譲することで意思決定をより一層迅速にすること。そして取締役会では経営方針や経営戦略を中心とした議題についてより本質的な議論を行い、監督機能を強化・高度化することである。
検討は現場から積み上げられた。2024年11月から2025年3月にかけて監査役会が「監査等委員会設置会社への移行に関する意見交換」を繰り返し議題に載せ、2025年3月に取締役会と経営会議が移行に向けた機関設計変更に取り組んでいる。
- 内容
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取締役会は11名のまま、社外取締役が5名から6名へ増えて過半数に達した。6名全員が東京証券取引所に届け出た独立役員である。監査等委員である取締役3名は全員が財務および会計に関する相当程度の知見を有し、うち2名が社外である。
監査を支える体制も組み替えられた。監査役補助使用人2名に代えて監査等委員会直属の監査等委員会室を置き、専任1名と兼任2名の計3名を配置している。指名・報酬委員会は5名以上・過半数を独立社外取締役とし、委員長は互選により原則として独立社外取締役から選ぶこととした。
- 含意
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報酬の枠も同時に組み直された。取締役の年額600百万円以内という2006年の総会決議と、監査役の年額130百万円以内という2014年の総会決議は、監査等委員を除く取締役500百万円以内と監査等委員である取締役85百万円以内へ置き換わった。合わせて730百万円から585百万円へ縮んでいる。
2026年3月期は移行前に監査役会を4回、移行後に監査等委員会を9回、取締役会を16回開いた。取締役会の実効性評価では外部専門機関の助言を得てアンケートを大幅に変え、権限委譲を踏まえた「方針」と「監督」の二つの視点から設問の妥当性を確かめている。
席を減らして監督を増やす
監査等委員会設置会社への移行は、監査役という独立した機関を畳んで、その役割を取締役会の内側へ入れ替える手続きである。古河電工の場合、それは役員の席を17から11へ減らす作業でもあった。取締役11名と監査役6名の二層構造が、取締役11名の一層に畳まれ、定款上の枠は20名以内から14名以内へ縮んだ。同時に社外取締役は5名から6名へ増えて過半数に届いている。減ったのは社内の席で、増えたのは外からの目だったとみられる。
もっとも、機関設計を替えただけでは監督は強くならない。決定権を経営陣へ渡すのだから、取締役会が何を見るのかを自ら定義し直さなければ、議題の空いた分だけ監督が薄くなる。会社はそこに手を打った。実効性評価の設問を外部専門機関の助言で作り替え、「権限委譲に伴い取締役会における本質的な議論・提案を行う能力」と「執行に対する高度な監督機能を発揮する能力」の二軸で点検している。2026年6月には議長も社外取締役へ移った。移行の値打ちは、この二軸で何が指摘され、どこが変わったかに現れてくる。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 移行の検討 | 2024年11月〜2025年3月 | 監査役会が「監査等委員会設置会社への移行に関する意見交換」を毎回の議題に載せた |
| 機関設計変更の取組み | 2025年3月 | 取締役会と経営会議が監査等委員会設置会社への移行に向けた機関設計変更に着手 |
| 移行の決議 | 2025年6月25日 | 第203回定時株主総会で定款一部変更の件が可決され、同日付で移行した |
| 総会に上程した議案 | 定款一部変更ほか5件 | 取締役8名選任、監査等委員である取締役3名選任、報酬額決定2件、株式報酬制度の改定 |
| 移行の理由 | 権限委譲と監督機能の強化・高度化 | 業務執行の決定を広く経営陣へ委ね、取締役会は経営方針・経営戦略の議論に寄せる |
| 定款上の取締役の員数 | 20名以内→14名以内 | 監査等委員である取締役を除く取締役10名以内、監査等委員である取締役4名以内 |
| 監査を担う機関 | 監査役6名→監査等委員である取締役3名 | 社外は3名から2名へ。3名全員が財務および会計に関する相当程度の知見を有する |
| 補助体制 | 監査等委員会室の設置 | 補助使用人は2名から3名へ。専任1名・兼任2名で業務執行取締役からの独立性を保障 |
| 移行時の取締役会 | 11名(うち社外6名) | 移行前は取締役11名のうち社外5名。社外6名全員が東京証券取引所の届出独立役員 |
| 取締役の報酬枠 | 年額500百万円以内 | 従来は年額600百万円以内。2006年6月29日の第184回定時株主総会の決議によった |
| 監査等委員の報酬枠 | 年額85百万円以内 | 従来の監査役は年額130百万円以内。2014年6月25日の第192回定時株主総会の決議 |
| 指名・報酬委員会 | 5名以上・過半数が独立社外取締役 | 委員の互選により、原則として独立社外取締役の中から委員長を選定する |
| 取締役会の実効性評価 | 2025年度に設問を大幅変更 | 外部専門機関の助言により「方針」と「監督」の二つの視点で項目の妥当性を確認した |
| 移行後の開催回数 | 取締役会16回 | 2026年3月期。移行前の監査役会は4回、移行後の監査等委員会は9回 |
| 取締役会議長 | 社外取締役 | 2026年6月26日の第204回定時株主総会を経て交代。移行時点では非業務執行の取締役会長 |
| 個別報酬の開示 | 連結報酬等1億円以上の者 | 事業報告と有価証券報告書で、区分ごとの報酬総額と種類別の総額を開示している |
出所:古河電気工業 有価証券報告書 第203期(2025年3月期)・第204期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2025年6月25日・2026年6月26日)
古河電工:取締役会と監査機関の構成
| (名) | 取締役 | うち社外取締役 | 監査役 | 定款上の取締役の員数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年12月 | 11 | 5 | 6 | 20 | 定款上の監査役の員数は6名。取締役会議長は非業務執行の取締役会長 |
| 2023年6月 | 11 | 5 | 6 | 20 | |
| 2024年6月 | 11 | 5 | 6 | 20 | 移行前の最後の構成。社外取締役5名は取締役会の過半数に届いていない |
| 2025年6月 | 11 | 6 | − | 14 | 監査等委員会設置会社へ移行。監査役6名の役割は監査等委員である取締役3名が担う |
| 2026年6月 | 10 | 6 | − | 14 | 第204回定時株主総会で取締役7名を選任。社外取締役6名が取締役会の過半数を占める |
出所:古河電気工業 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年12月20日・2023年6月23日・2024年6月28日・2025年6月25日・2026年6月26日)
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