ジュピターテレコムの争奪(2010年・住友商事の決断)

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論点 公開買付けで筆頭株主の座を守るか
住友商事:業績の推移
売上高(億円)当期純利益率(%)
公開買付けで議決権を40.1%へ高め筆頭株主を守った判断

何をなぜ決めたか:公開買付けで議決権を40.1%へ高め筆頭株主を守った判断

概要

住友商事は2010年4月、1995年1月に設立したケーブルテレビ最大手ジュピターテレコム(J:COM)の株式を対象に公開買付けを実施し、4月21日に議決権の約40.1%を保有する筆頭株主となった。従来の保有は約27.5%である。

直前の1月にはKDDIがLiberty Global(LGI)グループから中間持株会社の持分を取得し、議決権30.9%の株主として現れていた。メディア分野の中核事業会社に対し引き続き大株主として主導的に経営支援していく、というのが買い増しの理由である。

背景

J:COMの持分は、長く間接保有の形を取っていた。住商は2005年9月に直接保有していた株式をLGIとの持株会社LGI/Sumisho Super Mediaへ譲渡し、同社の経済的持分を住商41.3%・LGI58.7%で分け合っていた。議決権27.7%のうち約24.0%がこの経路で、残る約3.7%は2007年9月にメディア事業分野の再編の一環として取得した直接保有分である。

2010年2月、住商とLGIはSuper Mediaを通じた合弁関係を解消し、住商は持分に相当するJ:COM株式の分配を受けて約27.5%を直接持つ形へ移った。同じ月にLGIの残りの持分はKDDIへ渡っている。

内容

公開買付けの価格と買付期間は有価証券報告書に記載がなく、追加取得の支出もその他の投資の取得による支出に含まれて内訳が出ない。開示から追えるのは、買付け後の議決権が約40.1%となり、2011年3月期の関係会社の状況では40.12%と記されていることである。

比率を高めてもJ:COMは持分法適用の関連会社にとどまり、連結子会社とはならなかった。2010年3月期のJ:COMは収益341,062百万円、当期純利益31,904百万円、資産合計806,451百万円で、三井住友ファイナンス&リース、P.T. Newmont Nusa Tenggaraと並ぶ経営上特に重要な関連会社3社の一つであった。

含意

買い増しの効果はメディア・ライフスタイル事業部門の利益に表れた。同部門の当期純利益は2010年3月期の16,375百万円から2011年3月期は23,968百万円、2012年3月期は29,842百万円へ伸びている。全社の持分法損益も2010年3月期の761億円から2012年3月期は1,106億円へ増えた。

ただし40.1%は支配の比率ではない。2010年6月には住商・J:COM・KDDIの3社でアライアンス関係の構築に関する覚書を締結し、2013年にはKDDIとの共同出資会社NJを通じた公開買付けでJ:COMを非上場化して、議決権を50.00%ずつ分け合う形へ移った。

いつ何が起きたか 10件
考察:争って組んだ相手と、非資源の柱
考察

考察:争って組んだ相手と、非資源の柱

この一手は、株式を買い増した話というより、持分の持ち方を組み替えた話として読むほうが実態に近い。住商はJ:COM株の大半を、LGIと経済的持分を41.3%対58.7%で分け合う持株会社の内側に置いていた。その持株会社を2010年2月に解いて自ら直接持つ形へ移し、そのうえで公開買付けに動いている。相手が去り、代わりに通信会社が入ってくる局面で、間接保有のまま眺めていれば発言力は低下する。持株会社を解いてから買い増したところに、育てた事業の担い手であり続けようとする意思が表れていると思われる。

もっとも、40.1%は支配の比率ではない。連結子会社にはならず、J:COMは持分法適用の関連会社のままだった。争って確保した地位は、争った相手と並んで立つ地位でもある。実際、両社は2010年6月にJ:COMを交えた3社で覚書を締結し、2013年には共同出資会社を通じた公開買付けでJ:COMを非上場化して、議決権を折半する形へ移った。メディア・ライフスタイル部門の当期純利益が2010年3月期の164億円から2012年3月期には298億円へ伸びたことを踏まえれば、この投資は非資源の収益源として実を結んだといえる。ただし収益源を支えたのは、単独の支配ではなく競合との共存であった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

住友商事:メディア部門の収益と当期利益

メディア部門の収益(百万円)メディア部門の当期利益率(%)
住友商事:メディア部門の収益と当期利益
(百万円) メディア部門の収益メディア部門の当期利益 備考
2008年3月期 472,56213,791 当期からメディア・ライフスタイル事業部門として区分された
2009年3月期 495,3648,504
2010年3月期 509,56216,375 米国基準。IFRSへ組み替えると収益509,479・当期利益13,740
2011年3月期 529,34723,968 当期からIFRSを任意適用。4月にJ:COMの議決権を40.1%へ高めた
2012年3月期 675,00329,842
2013年3月期 592,84852,262 翌期の組替後は収益897,768・当期利益68,896
2014年3月期 911,52353,616 2013年4月の部門再編でメディア・生活関連事業部門となった
2015年3月期 974,95447,848
出所:住友商事 有価証券報告書 第138〜148期 セグメント情報(各期の当期欄)
出所:住友商事 有価証券報告書 第138〜148期 セグメント情報(各期の当期欄)

住友商事:全社の持分法損益と当期純利益

持分法損益(億円)当期純利益(億円)
住友商事:全社の持分法損益と当期純利益
(億円) 持分法損益当期純利益 備考
2005年3月期 374851
2006年3月期 5141,602
2007年3月期 7032,110
2008年3月期 5692,389
2009年3月期 9002,151
2010年3月期 7611,552 米国基準。IFRSへ組み替えた持分法損益は744億円
2011年3月期 9562,002 当期からIFRSを任意適用し、持分法による投資利益として表示
2012年3月期 1,1062,507
2013年3月期 1,0742,325
2014年3月期 1,2622,231
2015年3月期 491△732 固定資産評価損2,786億円で親会社の所有者に帰属する当期損益が赤字
出所:住友商事 有価証券報告書 第138〜148期【業績等の概要】【主要な経営指標等の推移】
出所:住友商事 有価証券報告書 第138〜148期【業績等の概要】【主要な経営指標等の推移】

持分取得の条件

持分取得の条件
科目 概要 備考
対象会社 株式会社ジュピターテレコム 東京都千代田区・資本金117,550百万円。ケーブルテレビ局の統括運営会社
取得の法的形式 公開買付け 買付価格と買付期間は有価証券報告書に記載がない
公開買付けの結果 2010年4月21日 議決権の約40.1%を保有する筆頭株主となった。翌期の記載は40.12%
取得前の議決権比率 約27.5% 2010年3月末時点。すべて直接保有していた
共同保有の解消 2010年2月 LGIとの持株会社Super Mediaを解消し、持分相当の株式の分配を受けた
Super Mediaの経済的持分 住友商事41.3%/LGI58.7% 議決権27.7%のうち約24.0%をこの持株会社を経由して間接保有していた
直接保有していた分 約3.7% 2007年9月にメディア事業分野の事業再編の一環として取得した
会計上の取扱い 持分法適用の関連会社 買い増し後も連結子会社とはしていない
J:COMの収益 341,062百万円 2010年3月期。当期純利益31,904百万円、資産合計806,451百万円
非上場化の公開買付け KDDIとの共同出資会社NJが実施 2013年3月6日にNJの銀行借入へ保証契約を締結し、4月16日に34,200百万円を保証
最終的な議決権比率 50.00% 2014年3月期の関係会社の状況。KDDIと折半で保有する
出所:住友商事 有価証券報告書 第142期(2010年3月期)関連会社に対する投資の注記 / 第143期(2011年3月期)・第146期(2014年3月期)【関係会社の状況】
出所:住友商事 有価証券報告書 第142期(2010年3月期)関連会社に対する投資の注記 / 第143期(2011年3月期)・第146期(2014年3月期)【関係会社の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • KDDI(2010年1月25日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」
  • KDDI(2010年4月22日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加における住友商事株式会社との協力について」
  • 住友商事 有価証券報告書「第142期(2010年3月期)関連会社に対する投資の注記」
  • 住友商事 有価証券報告書「第142期(2010年3月期)【業績等の概要】」
  • 住友商事 有価証券報告書「第143期(2011年3月期)【関係会社の状況】【業績等の概要】」
  • 住友商事 有価証券報告書「第145期(2013年3月期)偶発債務の注記」
  • 住友商事 有価証券報告書「第146期(2014年3月期)【関係会社の状況】」
  • 住友商事 有価証券報告書「第138〜148期 セグメント情報・【主要な経営指標等の推移】」

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