住友商事ジュピターテレコム(J:COM)の争奪とTOBによる筆頭株主の確保
- 概要
- 2010年、住友商事が国内ケーブルテレビ最大手ジュピターテレコム(J:COM)の株式を公開買付で取得し、KDDIとの争奪を制して筆頭株主の座を確保した経営判断。約1222億円を投じ、議決権比率を40%強へ高めた。
- 背景
- J:COMは住友商事が米リバティ・グローバルと共同で設立し、15年かけて育てたコア事業であった。そこへKDDIが2010年1月、リバティの保有分を約3617億円で取得すると発表して筆頭株主に躍り出て、住商は事業の主導権を失いかねない状況に立たされた。
- 内容
- 住友商事は2010年2月15日、1株13万9500円という直近株価より5割以上高い価格でTOBを実施すると発表し、保有比率28%を最大40%まで引き上げる計画を示した。
- 含意
- TOBは4月に成立して住商が筆頭株主に返り咲いたが、過半には届かず、第2位株主となったKDDIとの協調が経営の前提となった。争奪を制しつつも単独支配には至らない、資源以外の事業投資をめぐる商社の判断の難しさが表れた。
筆者の見解
争って組んだ相手と、非資源の柱
この判断は、資源以外の事業をどう守るかという商社の課題を映している。住友商事は、15年をかけて育てたJ:COMの主導権を通信会社に譲るまいと、投資回収に30年以上かかる高い価格を承知でTOBに動いた。目先の利回りだけを見れば割に合わない買い物であっても、育ててきた事業の担い手であり続けることに価値を置いた判断だったとみることができる。争奪を制して筆頭株主に返り咲いた点で、この一手は所期の目的を果たした。
もっとも、争って手に入れた地位は、争った相手との協調を前提とするものでもあった。住商もKDDIも過半には届かず、経営は両社の関係のうえに成り立つほかなかった。実際、両社はその後2012年から2013年にかけて共同でTOBを行ってJ:COMを非公開化し、50%ずつ出資する体制へと移っていく。争いから共存へと形を変えながら、J:COMは住商にとって純利益の一角を担う非資源の柱として残った。競合とどう並び立つかまで含めて、この事業投資の判断は続いていったとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月