オニツカタイガー事業の分社(2026年・アシックスの決断)

更新:
論点 高収益ブランドを別会社で運営するか
アシックス:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
高収益ブランドの100%子会社への切り出しと独立した運営体制への移行

何をなぜ決めたか:高収益ブランドの100%子会社への切り出しと独立した運営体制への移行

概要

2026年6月10日、アシックスは取締役会で、オニツカタイガーブランドの事業を吸収分割により100%子会社のOT GROUPへ承継させることを決議した。効力発生は2027年1月1日の予定で、OT GROUPは普通株式400株を新たに発行し、そのすべてをアシックスへ交付する。アシックスにとっては簡易吸収分割にあたるため株主総会の承認を経ず、資本金も増減しない。承継会社の代表取締役社長CEOには、オニツカタイガーカンパニー長を務める庄田良二副社長執行役員が就いている。

背景

オニツカタイガーの売上高は2021年12月期の385億円から2025年12月期には1,365億円へ3.5倍になり、カテゴリー利益率は12.6%から37.7%へ上がって全カテゴリーで最も高い。伸びを牽引したのは日本の訪日客向けの販売で、2025年のオニツカタイガーのインバウンド売上は415億円と前期の219億円からほぼ倍増した。欧州ではバルセロナ、ロンドン、パリに大型の直営店を開き、2026年1月には鳥取県でブランド初の専用生産拠点オニツカイノベーティブファクトリーを稼働させている。

内容

分割の目的は、社内カンパニー体制のもとで進めてきた直営店中心の事業と「ラグジュアリーライフスタイルブランド」としての地位確立を、より独立性の高い運営体制で進めることにある。意思決定を速めてブランド特性に応じた競争力をつくり、グループ全体では事業ごとの経営状況の可視化と経営責任の明確化を図る。OT GROUPは2026年2月25日に設立したばかりで、決議時点の資本金は376百万円、純資産は748百万円にとどまり、アシックスとの取引関係もない。承継する資産・負債の範囲は吸収分割契約書で定め、契約の締結は2026年10月1日を予定する。

含意

対価は承継会社の株式だけで、現金は動かない。完全子会社への承継のため連結の範囲も変わらないが、連結売上高の16.8%を占め、カテゴリー利益ではパフォーマンスランニングの86,035百万円に次ぐ51,489百万円を稼ぐ事業が、別法人の決算を持つことになる。分割後のOT GROUPの純資産と総資産は決議時点で確定しておらず、2027年以降を見据えて検討を進める米国への再進出も、新会社の判断として進むことになる。

いつ何が起きたか 9件
当時の取締役 8名
考察:ブランドを法人の単位で見せる
考察

考察:ブランドを法人の単位で見せる

この分割は、組織図の書き換えというより、アシックスの内側でもう一つの会社を育て上げる準備とみられる。機能で選ばれる競技用シューズと、ファッションとして選ばれるオニツカタイガーでは、出店の仕方も顧客も違う。粗利益率74.6%、カテゴリー利益率37.7%の事業を本体の手続きに置いたままでは、旗艦店の出店や生産拠点への投資の判断が、ランニング中心の会社の物差しで測られることになる。別法人の決算を持たせるのは、その物差しを分けるためだったのだろう。

もっとも、法人を分けても伸びの源泉は変わらない。2025年の伸びの多くは日本の訪日客で、オニツカタイガーのインバウンド売上は415億円とブランド売上の3割に達する。訪日客の動向が変われば、独立した損益はそのまま弱さも映すことになる。分割の目的に親子上場や外部資本の受け入れは書かれていない。切り出した器を何に使うのかは、2027年1月の承継のあとで問われることになりそうだ。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る 2表

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図と表

アシックス:オニツカタイガーの売上高とカテゴリー利益

売上高(百万円)カテゴリー利益率(%)

カテゴリー利益率は2021年12月期の12.6%から2025年12月期の37.7%へ上昇

アシックス:オニツカタイガーの売上高とカテゴリー利益
(百万円) 売上高カテゴリー利益 備考
2021年12月期 38,5454,868 ファクトシートの年次推移。有報の当期欄では照合できていない
2022年12月期 43,0117,399 ファクトシートの年次推移。有報の当期欄では照合できていない
2023年12月期 60,30515,361 ファクトシートの年次推移。第71期の前期欄は60,304・15,360
2024年12月期 95,43932,435 売上高は前期比58.3%増、カテゴリー利益は111.2%増
2025年12月期 136,51951,489 全地域で増収。日本のインバウンド売上は415億円
出所:アシックス 2024年12月期ファクトシート(カテゴリー別業績の年次推移) / アシックス 有価証券報告書 第71期・第72期(2024年12月期・2025年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
出所:アシックス 2024年12月期ファクトシート(カテゴリー別業績の年次推移) / アシックス 有価証券報告書 第71期・第72期(2024年12月期・2025年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

アシックス:連結売上高に占めるオニツカタイガー

オニツカタイガー売上高(百万円)その他のカテゴリー等(百万円)オニツカタイガー売上高率(%)

オニツカタイガーの構成比は2021年12月期の9.5%から2025年12月期の16.8%へ

アシックス:連結売上高に占めるオニツカタイガー
(百万円) 連結売上高オニツカタイガー売上高 備考
2021年12月期 404,08238,545 オニツカタイガーはファクトシートの値
2022年12月期 484,60143,011 オニツカタイガーはファクトシートの値
2023年12月期 570,46360,305 オニツカタイガーはファクトシートの値
2024年12月期 678,52695,439
2025年12月期 810,916136,519
出所:アシックス 有価証券報告書 第72期(2025年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / アシックス 2024年12月期ファクトシート(カテゴリー別業績の年次推移)
出所:アシックス 有価証券報告書 第72期(2025年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / アシックス 2024年12月期ファクトシート(カテゴリー別業績の年次推移)
当時の取締役 8名
参考文献

参考文献

参考

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