第2章 年〜年

ゼンショーホールディングス:単品業態の全国展開と東証二部上場

南南亭・たの家の試行から1997年の店頭登録へ

1994年〜牛丼の外へ出したカレーと丼の試験業態

1994年9月、ゼンショーは牛丼に続く第二の業態として、カレー専門店の南南亭を開店した。スパイシールー・甘口ルー・ハヤシライスソースを土台に、玉子や野菜、揚物など約30種類のトッピングを自由に組み合わせ、辛さを段階で分け、ライスの量を100グラム単位で区切る仕組みである。すき家で採った選択購買の設計を、そのままカレーへ移したものだった。1996年4月には丼専門店のたの家を開店している。かつ丼・チリ丼・ステーキ丼・まぐろ丼・ネギトロ丼・山かけ丼といった品ぞろえは、すき家の新メニュー開発の場で出た、牛丼店の枠に入らない丼物の案が出発点になった。丼物のほかに各種定食やカレーセットも並べており、すき家より広い品ぞろえを持つ業態だった。

  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [1]1994年9月 牛丼に続く第二の業態としてカレー専門店「南南亭」を開店
    • [2]南南亭は約30種類のトッピング、段階分けした辛さ、100g単位のライス量を選べる仕組み
    • [3]1996年4月 丼専門店「たの家」を開店
    • [4]たの家はすき家の新メニュー開発時に出た、牛丼店の枠に入らない丼物のアイデアが出発点
    • [5]たの家は丼物のほか各種定食やカレーセットなど豊富なメニューをそろえた

二つの業態は、事業として立てる前の段階に置かれていた。1997年3月期の単体売上117億3,600万円の内訳は、牛丼類が89億9,700万円、すき家で出すカレー類が11億4,500万円、南南亭が1億9,300万円、たの家が4,500万円、その他が13億5,600万円である。牛丼類だけで売上の76%を超え、第二業態の二つを合わせても2億4,000万円に達しない。会社の位置づけでも、この二つはテストマーケティングを兼ねた運営であり、事業化はこれから進める段階に置かれていた。同じ1994年7月には川崎配送センターへ川崎工場を併設しており、業態を試す前に作る側の余力を積んでいた。

  • 証券業報 (9)(558)
    • [6]1997年3月期 単体売上117億3,600万円のうち牛丼類が89億9,700万円
    • [7]1997年3月期 カレー類(すき家)11億4,500万円・カレー類(南南亭)1億9,300万円・丼類(たの家)4,500万円・その他13億5,600万円
  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [8]南南亭とたの家はテストマーケティングを兼ねた運営で、事業化はこれから進める段階
  • ゼンショーホールディングス 有価証券報告書 第24期(2006年3月期)【沿革】
    • [9]1994年7月 セントラルキッチン機能拡充と物流効率化のため川崎配送センターに川崎工場を併設
参考文献[1]-[9]
  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [1]1994年9月 牛丼に続く第二の業態としてカレー専門店「南南亭」を開店
    • [2]南南亭は約30種類のトッピング、段階分けした辛さ、100g単位のライス量を選べる仕組み
    • [3]1996年4月 丼専門店「たの家」を開店
    • [4]たの家はすき家の新メニュー開発時に出た、牛丼店の枠に入らない丼物のアイデアが出発点
    • [5]たの家は丼物のほか各種定食やカレーセットなど豊富なメニューをそろえた
    • [8]南南亭とたの家はテストマーケティングを兼ねた運営で、事業化はこれから進める段階
  • 証券業報 (9)(558)
    • [6]1997年3月期 単体売上117億3,600万円のうち牛丼類が89億9,700万円
    • [7]1997年3月期 カレー類(すき家)11億4,500万円・カレー類(南南亭)1億9,300万円・丼類(たの家)4,500万円・その他13億5,600万円
  • ゼンショーホールディングス 有価証券報告書 第24期(2006年3月期)【沿革】
    • [9]1994年7月 セントラルキッチン機能拡充と物流効率化のため川崎配送センターに川崎工場を併設

1995年〜横ばいの外食市場のなかで突出した牛丼の伸び

国内の外食市場は、1993年に27兆9,816億円、1994年に27兆9,269億円、1995年に28兆612億円と、三年でほとんど増えていなかった。小川氏は、この先も大幅な伸びは見込めないとしつつ、ライフスタイルの変化や女性の社会進出、余暇時間の増大に伴って安定的な拡大は続くと見ていた。成熟した市場で牛丼を主力に据え続けた根拠は、手軽さと親しみやすさを備えたベーシック商品として安定した需要に応えられる点に置かれている。牛丼を主力とする上位三社の同部門売上は1992年度から1995年度まで年平均6.2%で伸びたが、ゼンショーの伸びはこれを大きく上回る年平均23.1%だった『「牛丼」を主力商品とする当社を含めた上位3社の牛丼部門の売上高増加率は、92年度から95年度までの3年間で年平均6.2%という高い伸びとなった。そして当社はこれをさらに大きく上回り、この3年間の年平均増加率は23.1%になった』。市場がほぼ動かない三年間に、一社だけが四倍近い速度で積み増したことになる。

  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [10]国内外食産業の市場規模は1993年27兆9,816億円・1994年27兆9,269億円・1995年28兆612億円
    • [11]外食産業は成熟化し大幅な伸びは期待できないが、ライフスタイルの変化・女性の社会進出・余暇時間の増大などで安定的に拡大するという市場観
    • [12]牛丼を、手軽さと親しみやすさで安定した需要に応えるベーシック商品と位置づけ
    • [13]1992年度から1995年度の牛丼部門売上の年平均増加率は上位3社6.2%、ゼンショー23.1%

伸びは利益の側にも現れた。単体の経常利益は1995年3月期に2億8,200万円だった。売上高は同期の102億6,200万円から1996年3月期に112億500万円へ9.2%増え、経常利益は4億7,600万円で68.8%増、当期純利益は2億2,200万円で110.5%増になった。1997年3月期は売上117億3,600万円で4.7%増、経常利益5億1,500万円で8.1%増と伸び幅こそ落ち着いたが、経常利益率は1995年3月期の2.7%から4.4%へ上がっている。店が増えるたびに工場と配送センターの負担が一店あたりで薄まる構造であり、郊外型の多店舗化が損益に効き始めた段階だった。

  • 証券業報 (9)(558)
    • [14]1995年3月期 単体売上高102億6,200万円・経常利益2億8,200万円
    • [17]単体経常利益率は1995年3月期2.7%から1997年3月期4.4%へ上昇
  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [15]1996年3月期 単体売上高112億500万円(9.2%増)・経常利益4億7,600万円(68.8%増)・当期純利益2億2,200万円(110.5%増)
    • [16]1997年3月期 単体売上高117億3,600万円(4.7%増)・経常利益5億1,500万円(8.1%増)
参考文献[10]-[17]
  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [10]国内外食産業の市場規模は1993年27兆9,816億円・1994年27兆9,269億円・1995年28兆612億円
    • [11]外食産業は成熟化し大幅な伸びは期待できないが、ライフスタイルの変化・女性の社会進出・余暇時間の増大などで安定的に拡大するという市場観
    • [12]牛丼を、手軽さと親しみやすさで安定した需要に応えるベーシック商品と位置づけ
    • [13]1992年度から1995年度の牛丼部門売上の年平均増加率は上位3社6.2%、ゼンショー23.1%
    • [15]1996年3月期 単体売上高112億500万円(9.2%増)・経常利益4億7,600万円(68.8%増)・当期純利益2億2,200万円(110.5%増)
    • [16]1997年3月期 単体売上高117億3,600万円(4.7%増)・経常利益5億1,500万円(8.1%増)
  • 証券業報 (9)(558)
    • [14]1995年3月期 単体売上高102億6,200万円・経常利益2億8,200万円
    • [17]単体経常利益率は1995年3月期2.7%から1997年3月期4.4%へ上昇

1997年〜店頭公開で取った資金と人材、全国への出店計画

1997年8月、ゼンショーは日本証券業協会へ株式を店頭登録した。公開は同月25日で、そのときの店舗数は181店、展開エリアは首都圏を中心に東北・北陸・中部までだった。公開で得られる資金調達と人材確保の利点は、世界中の人々へ食を提供する世界一のフード企業という目標へ向けたてことされ、公開そのものが全国展開の節目に置かれた。具体の計画は、1998年3月期中に5〜6店舗を出し、中部と九州の間のエリアを順に埋めるというもので、関西と九州へは愛知県下の物流センターを起点として入り、九州にもう一つの物流センターを置く構想を持っていた。37万平方キロメートルの国土に1億2,000万人が住む国で、最も効率のよい店舗展開をやりたい、というのが全国化の考え方だった。

  • ゼンショーホールディングス 有価証券報告書 第24期(2006年3月期)【沿革】
    • [18]1997年8月 日本証券業協会に株式を店頭登録
  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [19]1997年8月25日の株式店頭公開時点で181店舗、首都圏を中心に東北・北陸・中部へ展開
    • [20]株式公開による人材確保と資金調達を梃子に「世界一のフード企業」を目指すという創業者の表明
    • [21]1998年3月期中に5〜6店舗を出店し、中部と九州の間のエリアを順次埋める出店方針
    • [22]九州エリアは愛知県下の物流センターを起点とし、九州にもう一つの物流センターを計画
    • [23]37万平方キロメートルの国土に1億2,000万人が住むなかで最も効率のよい店舗展開を目指すという方針

公開後の二期で、会社の規模は一段上がった。単体売上高は1998年3月期に135億2,300万円、1999年3月期に152億9,700万円へ伸び、経常利益は7億2,000万円から11億3,600万円になった。1999年3月末の店舗数は222店で、内訳はすき家218店と南南亭4店、製造拠点は横浜・川崎・佐野第一・佐野第二の四工場である。株主の構成は、創業者の資産管理会社である日本クリエイトが31.23%、小川賢太郎氏個人が16.90%、小川一政氏と小川洋平氏が各3.84%と、創業家側で55.81%を占めた。1999年9月、東京証券取引所第二部市場へ上場した。公開市場から資金を取りながら、議決権の過半は創業家に残したままだった。

  • 証券 51(11)(608)
    • [24]単体売上高は1998年3月期135億2,300万円・1999年3月期152億9,700万円、経常利益は7億2,000万円・11億3,600万円
    • [25]1999年3月末 店舗数222(すき家218・南南亭4)
    • [26]1999年3月末 製造拠点は横浜・川崎・佐野第一・佐野第二の4工場
    • [27]1999年3月期 大株主は日本クリエイト31.23%・小川賢太郎16.90%・小川一政3.84%・小川洋平3.84%
  • ゼンショーホールディングス 有価証券報告書 第24期(2006年3月期)【沿革】
    • [28]1999年9月 東京証券取引所第二部市場へ上場
参考文献[18]-[28]
  • ゼンショーホールディングス 有価証券報告書 第24期(2006年3月期)【沿革】
    • [18]1997年8月 日本証券業協会に株式を店頭登録
    • [28]1999年9月 東京証券取引所第二部市場へ上場
  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
    • [19]1997年8月25日の株式店頭公開時点で181店舗、首都圏を中心に東北・北陸・中部へ展開
    • [20]株式公開による人材確保と資金調達を梃子に「世界一のフード企業」を目指すという創業者の表明
    • [21]1998年3月期中に5〜6店舗を出店し、中部と九州の間のエリアを順次埋める出店方針
    • [22]九州エリアは愛知県下の物流センターを起点とし、九州にもう一つの物流センターを計画
    • [23]37万平方キロメートルの国土に1億2,000万人が住むなかで最も効率のよい店舗展開を目指すという方針
  • 証券 51(11)(608)
    • [24]単体売上高は1998年3月期135億2,300万円・1999年3月期152億9,700万円、経常利益は7億2,000万円・11億3,600万円
    • [25]1999年3月末 店舗数222(すき家218・南南亭4)
    • [26]1999年3月末 製造拠点は横浜・川崎・佐野第一・佐野第二の4工場
    • [27]1999年3月期 大株主は日本クリエイト31.23%・小川賢太郎16.90%・小川一政3.84%・小川洋平3.84%

筆者考察

牛丼で伸びている会社が、なぜ牛丼以外を試したのか。一品に絞って回転を取る商売は、その一品の需要が止まった瞬間に代わりを持たない。1994年のカレー専門店・南南亭と1996年の丼専門店・たの家は、すき家の新メニュー開発で出てきた、牛丼店の枠に収まらない案の行き先として作られた業態である。ただし1997年3月期の数字で見れば、単体売上117億円のうち牛丼類が89億円を占め、南南亭は1億9,300万円、たの家は4,500万円にすぎない。会社の言葉でもこの二つはテストマーケティングを兼ねた運営であり、収益源ではなかった。収益はあくまで単品が生み、第二業態は、単品が頭打ちになったときの逃げ道を先に掘っておく作業だった。

1990年代半ばの外食市場は、1993年の27兆9,816億円から1995年の28兆612億円まで、三年でほとんど動いていない。そのなかで牛丼上位三社の同部門売上は年平均6.2%で伸び、ゼンショーは23.1%で伸びた。伸びない市場で四倍近い速さが出るのは、一店あたりの客が増えたからではなく、店の数が増えたからである。そして店を増やす速度は、工場と配送網を自前で持つ会社では資本の厚みに縛られる。1997年8月の店頭登録は、この縛りを緩める手続きだった。小川賢太郎氏が公開の利点に挙げたのも資金調達と人材確保の二つで、その先に関西と九州への出店計画が置かれていた。

ゼンショーの経常利益 店頭公開をはさむ1995年3月期から1999年3月期まで(億円)

2.82 1995 4.76 1996 5.15 1997 7.2 1998 11.36 1999
  • 単体。1997年8月に店頭登録、1999年9月に東京証券取引所第二部市場へ上場。
  • 出所は証券業報 (9)(558) と 証券 51(11)(608)。

1994年〜1999年の業績

決算期 区分 売上高 経常利益純利益 主な投資
億円 YoY 億円 利益率 億円
1994年03月期 単体 n/a n/a n/a n/a n/a n/a
1995年03月期 単体 102 n/a 2 2.7% 1 n/a
1996年03月期 単体 112 +9.2% 4 4.2% 2 n/a
1997年03月期 単体 117 +4.7% 5 4.4% 2 n/a
1998年03月期 単体 135 +15.2% 7 5.3% 2 n/a
1999年03月期 単体 152 +13.1% 11 7.4% 3 n/a

出所:証券業報 (9)、証券 51(11)

出典・参考

4件
出典・参考
  • ゼンショーホールディングス 有価証券報告書 第24期(2006年3月期)【沿革】
  • 証券アナリストジャーナル 1997年9月号
  • 証券業報 (9)(558)
  • 証券 51(11)(608)

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