クリエイト・レストランツ・ホールディングスの登記上の出発点は、外食ではなくビールにあった[1]。1997年4月22日、徳壽クリエイティブサービス株式会社が100%出資し、地ビール製造販売を主な事業とする株式会社ヨコスカ・ブルーイング・カンパニーが神奈川県横須賀市に設立された[2]。出資元の徳壽は、後に代表取締役会長となる後藤仁史氏の一族が営む会社であり[3]、後藤氏は設立と同時に代表取締役社長となった[4]。ビールは会社に残らなかった。設立から2年後の1999年4月1日、本店を東京都渋谷区神南一丁目17番5号へ移し、同月、商号を株式会社クリエイト・レストランツへ改めた[5]。
レストラン事業は、店をゼロから起こすのではなく、よそから引き取る形で始まった。1999年5月1日、株式会社徳壽から洋食レストラン5店舗の営業譲渡を受け、レストラン事業を開始した[6]。譲渡元の徳壽は2001年4月にレストラン・インベストメンツ株式会社へ商号を変更し、設立時の出資者だった徳壽クリエイティブサービス株式会社が同じ2001年4月に株式会社徳壽を名乗ったため、同じ社名が別の法人へ移った[7]。
2000年1月、三菱商事株式会社がクリエイト・レストランツへ資本参加した[8]。三菱商事はこの出資を、レストラン事業の運営ノウハウをもつ会社への事業投資と位置づけた[9]。同じころ、大手商社による流通業への進出が相次ぎ[10]、三菱商事はローソンに、伊藤忠商事はファミリーマートに資本参加して、大手商社によるコンビニエンスストアの争奪戦は一段落した[11]。次に商社が関心を寄せたのが食品スーパーと外食チェーンで、総合スーパーや百貨店に比べて成長余力があり、商社が得意とする食材供給面での協力ができることが理由だった[12]。
よその店を買うことと、よそが集めた客の前に出ることは、同じ年に重なった。2000年6月、株式会社オリエント・レストランツから洋食レストラン5店舗の営業譲渡を受け[13]、翌7月には静岡県御殿場市の御殿場プレミアムアウトレット内に『フードバザー御殿場』を出店してフードコート事業を開始した[14]。この施設は、米国の大手商業施設デベロッパーであるチェルシー社が三菱地所、日商岩井と共同で遊園地跡地に建てた[15]。アウトレットは当時の小売業で数少ない伸び盛りの業態で、横浜ベイサイドマリーナは初年度120億円の売り上げ目標に対して200億円に達する見通しとなり、軽井沢プリンスショッピングプラザは増設後1カ月で延べ65万人を集めて月商15億円を記録していた[16]。
2003年7月、株式会社徳壽から『雛鮨』等13店舗の営業譲渡を受け、譲り受ける店は洋食の外へ広がった[17]。この徳壽は、1999年に洋食5店舗を譲った法人ではなく、1997年に会社へ100%出資した側が改称した法人にあたる[18]。同じ2003年7月、岡本氏が入社して代表取締役社長兼営業本部長に就き[19]、2004年8月には本店を東京都渋谷区渋谷二丁目15番1号へ移した[20]。単体売上高は2002年2月期の37億円から2004年2月期の114億円へ増え、2003年2月期に1億円の赤字だった経常損益も、2004年2月期には12億円の黒字へ転じた[21]。
会社は、よそが客を集めた場に後から入る形で伸びた。2005年3月、2005年日本国際博覧会に『フェスティバルフードコート 愛知万博』を出店し[22]、半年後の同年9月には東京証券取引所マザーズへ株式を上場した[23]。上場を挟む2期の単体業績は、2005年2月期が売上高174億円、経常利益13億円、当期純利益6億円、2006年2月期が売上高268億円、経常利益21億円、当期純利益9億円[24]。2002年2月期の売上高37億円と比べると4年で7倍を超えた計算になり[25]、経常利益も同じ4年間で1億円から21億円へ伸びた[26]。
しかし2007年2月期は、単体売上高が320億円と前期の268億円から伸びた一方で、経常利益は21億円から9億円へ落ちて半分を下回り、当期純利益も9億円から4億円へ減った[27]。同年8月、株式会社吉祥との合弁会社である株式会社クリエイト吉祥が営業を開始した[28]。
2009年2月期に401億円をつけた連結売上高は、2013年2月期の372億円に至るまで一度もその額に届かなかった[29]。底は2012年2月期の346億円まで沈んだ[30]。出店をやめたためではなく、2010年2月期は37店舗を出して39店舗を閉め、2012年2月期は21店舗を出して41店舗を閉じた[31]。期末の国内店舗数は2010年2月末の387店舗から2011年2月末に376店舗、2012年2月末には356店舗まで減り[32]、国内の外食市場規模は数年間24.5兆円前後で推移して成熟状態にあり、同業他社に加えてコンビニエンスストアや中食が競合として加わっていた[33]。
2010年2月期の連結売上高は37,734百万円で前期比5.8%減、経常利益は2,142百万円で同5.9%減となった[34]。デフレの進行で消費者が低価格業態へ流れ、レストランの客数と客単価が落ちた[35]。会社は低価格競争に参入せず、既存店舗の料理とサービスの質を上げ、客数を取り戻すために料理フェアを開いた[36]。あわせて店舗での廃棄ロス低減による原価抑制、人時客数を指標とした週次での人件費管理、販促活動の見直しと賃料の減額交渉を進めた[37]。前期開店分を除く既存店売上高の前年比は88.0%で、業績予想の87.5%をわずかに上回った[38]。
2012年2月期の連結売上高は34,624百万円と前期比93.3%にとどまったが、営業利益・経常利益・当期純利益はいずれも過去最高を更新し、経常利益率は10.3%に達した[39]。原価は10,001百万円から9,379百万円へ、販管費は24,675百万円から22,529百万円へ下がり、その減少額の合計が売上高の減少額2,471百万円を上回った[40]。東日本大震災のあったこの期、会社はゼロベースでのコスト見直し、シフトコントロールの最適化、店舗における有効な施策の共有化、節電対策を実施した[41]。
2010年1月15日、会社は100%出資で株式会社クリエイト・レストランツ・ジャパンを設立し、同年3月1日に事業持株会社体制へ移行した[42]。従来自社で行っていた外食店舗運営業務の一部を業務委託の形式で新会社へ移し、店舗運営に係る資産・権利義務・契約上の地位は上場会社が引き続き保有する形をとった[43]。同年6月、上場会社は株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスへ商号を変え、新会社は株式会社クリエイト・レストランツへ商号を変えたことで[44]、1999年4月から11年間使ってきた社名は事業子会社の名として引き継がれた[45]。
会社が挙げた移行の目的の1つはグループ経営機能とコーポレートガバナンスの強化で、意思決定の迅速化と経営資源の最適な配分を含む[46]。もう1つは機動的な企業再編・組織再編の推進であり、グループ内の事業再編や組織再編に加え、他の事業会社とのM&Aや事業提携を柔軟かつ機動的に実施すると記した[47]。あわせて会社は、中期経営計画の新たな成長戦略として、国内外食企業の『M&A』、外食企業の『再生案件』への関与、成長余力の高い海外展開の本格化の3つを並べた[48]。3年後に国内店舗数を455店舗まで増やす計画を掲げた[49]。
岡本晴彦社長は Annual Report 2010 で、外食産業の成熟、消費者の嗜好の多様化、食の安全に対する意識の高まり、消費の手控えを厳しい事業環境として挙げた[50]。この環境に対処するため、2010年3月に持株会社組織へ切り替えたと述べた[51]。持株会社の下で、国内はマルチブランド・マルチロケーション戦略で得た経験と知識を全店舗の価値向上に使いながら国内外食産業のM&Aに注力し、海外は成長余力の高いアジア市場を軸に展開を加速すると記している[52]。会社は2010年10月に中國創造餐飲管理有限公司を、2011年2月に create restaurants asia Pte. Ltd. をいずれも100%出資で設立した[53]。
三菱商事は2000年1月に資本参加し[54]、レストラン事業の運営ノウハウを持つ会社への事業投資だった[55]。同じ2000年、当時三菱商事の社員だった岡本晴彦社長が社内ベンチャー制度で会社に加わった[56]。以後、会社は三菱商事の信用力を後ろ盾として商業施設等への出店を中心に店舗数を広げ、2005年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場した[57]。会社は2012年版に至るまで、英文のアニュアルレポートの巻頭に置くトップメッセージで、三菱商事の関連会社として得た信用に支えられていると書き続け[58]、同じ一文は2011年版の巻頭にも載る[59]。
2012年、会社は三菱商事の保有全株式を公開買付けで取得し、2000年1月から12年続いた資本関係を解消した[60]。取得した株式のうち約8割を消却した結果、2012年2月期まで35%を超えていた親会社所有者帰属持分比率は2013年2月期末に19.7%へ低下する[61]。同じ2012年の3月1日、会社は株式会社ワールドから株式会社ルモンデグルメの全株式を取得し、完全子会社とした[62]。ルモンデグルメは『Tanto Tanto』ブランドをはじめとするレストラン・カフェを渋谷・恵比寿・台場・大宮・京都・なんば・宇都宮の7店舗で展開し、取得株式数は1,800株にのぼった[63]。
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|---|---|---|---|---|
| 1997〜2007年地ビール会社を捨て、他人の店を買って商業施設に並べる | 後藤仁史 | 地ビール製造販売のヨコスカ・ブルーイング・カンパニーを設立 | ★★ | |
| 後藤仁史 | クリエイト・レストランツに商号変更 | ★★ | ||
| 後藤仁史 | 徳壽より洋食レストラン5店舗を譲り受けレストラン事業開始 | ★★★ | ||
| 後藤仁史 | 三菱商事が資本参加 | ★★★ | ||
| 後藤仁史 | オリエント・レストランツより洋食レストラン5店舗を譲受 | ★ | ||
| 後藤仁史 | 御殿場プレミアムアウトレットに出店しフードコート事業開始 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | 徳壽より「雛鮨」等13店舗を譲受 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | 愛知万博にフェスティバルフードコートを出店 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | 東京証券取引所マザーズに株式を上場 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | 吉祥との合弁会社クリエイト吉祥が営業開始 | ★ | ||
| 2008〜2012年売上が止まった5年で持株会社に移り資本を買い戻した | 岡本晴彦 | 上海豫園南翔饅頭店との合弁会社を上海に設立 | ★ | |
| 岡本晴彦 | 事業持株会社体制に移行 | ★★★ | ||
| 岡本晴彦 | クリエイト・レストランツ・ホールディングスに商号変更 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | 三菱商事の保有全株式を公開買付けで取得 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | ルモンデグルメを完全子会社化 | ★ | ||
| 2013〜2020年路面へ出て買い続けた7年、増えた売上と落ちた利益率 | 岡本晴彦 | SFPダイニングの株式74.6%を取得し子会社化 | ★★★ | |
| 岡本晴彦 | イートウォークなど3社を完全子会社化 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | 東京証券取引所市場第一部に指定替え | ★ | ||
| 岡本晴彦 | YUNARIを完全子会社化 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | 子会社SFPダイニングが東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | 共同新設分割でグルメブランズカンパニーを設立 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | KRフードサービスの株式99.8%を取得し子会社化 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | グループ連結売上高が1,000億円を突破 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | イクスピアリからクリエイト・ベイサイドを取得し完全子会社化 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | はしもとを完全子会社化し遊鶴に商号変更 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | 国際財務報告基準(IFRS)に移行 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | グループ店舗数が1,000店舗を突破 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | Il Fornaio (America) の持分100%を取得し完全子会社化 | ★★ | ||
| 岡本晴彦 | 西洋フード・コンパスグループのスポーツ・レジャー事業を譲受 | ★ | ||
| 岡本晴彦 | いっちょうを完全子会社化 | ★ | ||
| 2021〜2026年営業損失142億円から売上1,654億円へ、立地と業態を割り直す | 川井潤 | 東京証券取引所プライム市場に移行 | ★ | |
| 川井潤 | 日本たばこ産業からサンジェルマンの全株式を取得 | ★★ | ||
| 川井潤 | Wildflower Bread Companyのベーカリーレストラン事業を譲受 | ★ | ||
| 川井潤 | 一幻フードカンパニーを完全子会社化 | ★ | ||
| 川井潤 | 狼煙を完全子会社化 | ★ | ||
| 川井潤 | グルメブランズカンパニーがTecona Bagelを完全子会社化 | ★ |
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事実根拠:出所(クリエイト・レストランツ・ホールディングス)