ベイカレント SI案件の受注制限と高付加価値化 上場直後の継続案件の受注制限による稼働率の70%台への急落と、3か月での社長辞任

更新:

時期 2016年10月
当時の社長 萩平和巳
論点 上場直後の高付加価値化の進め方
何をなぜ決めたか
概要

2016年9月に東証マザーズへ上場したベイカレント・コンサルティングで、萩平和巳社長が10月から営業部門を含む体制を組み替え、継続的に安定した収益を生んでいた案件の受注を制限して、高付加価値案件へコンサルタントを振り向けた経営判断である。新しい案件は空いた人数に見合うほど取れず、上場から3か月後の12月9日に業績予想を下方修正し、同じ日に萩平和巳氏が社長を辞任した。

背景

2017年2月期の期初の想定は、サービスの上流化による平均受注単価の5%上昇と、採用によるコンサルタント数の20%増を、年間90%水準の稼働率を保ったまま進める設計だった。上半期は想定どおりに推移し、売上収益8,729百万円・営業利益1,861百万円と前年同期を上回っていた。

引き上げの対象となったのは、安定収益の基盤ではあるが相対的に収益性の低い、主にSI領域の案件である。

内容

受注を絞ったことで待機コンサルタントが積み上がり、過去に安定して90%超を保っていた稼働率は2016年10月から11月に70%台へ落ちた。撤退交渉は長年の顧客の信頼を損ない、後任の阿部義之社長は当時を 『当社からの突然の申し入れにお客様も困惑し、社員からも施策に対して疑問の声が上がり始めました』 と明かしている。

萩平和巳氏は業績悪化の責任を取るとして辞任を申し出、取締役会は全会一致で受理した。後任にはコンサルティング&IT事業本部長の阿部義之氏が就き、12月中旬に受注制限の方針を改めた。

含意

下半期の営業利益は1,361百万円と前年同期の1,654百万円を下回り、営業利益率は20%から16%へ下がった。それでも通期では稼働率の年間平均が85%の水準にとどまりながら、コンサルタント数の5.7%増と平均単価の4%上昇で増収を保った。失った顧客の約70%と再契約し、2月に稼働率は90%近くへ戻った。SI の売上収益は翌期も3,637百万円へ減り続け、上流への移行そのものは方針を変えた後も進んでいる。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

上流化の速さを読み違えた3か月

この判断の誤りは、高付加価値化という方向ではなく、その速さにあったと思われる。全員を1つの母集団から案件へ割り当てる同社の運営では、案件を断れば翌月には待機の人数となって粗利を削る。上流の案件が取れる量は営業と評判で決まり、体制の組み替えだけでは増えない。安定案件を先に手放して後から高単価案件で埋めるという順序は、稼働率という単一の指標を最も急な形で崩した。上場から3か月での社長辞任は、その崩れがいかに速く業績と組織に伝わったかを物語っている。

もっとも、この3か月で方向そのものが否定されたわけではない。SI の売上収益は翌期も減り続け、戦略・ビジネスプロセスは翌期に1.8倍へ伸びた。後任の体制は安定案件を取り戻して稼働率を戻したうえで、採用で人員を先に積み、上流の案件をその上に重ねていった。萩平体制が急いだ移行を、順序を入れ替えて引き継いだとみることができる。同じ目標でも、どの数字を先に守るかで結果が分かれた事例だろう。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

業績の推移
半期ごとの売上収益と営業利益

ベイカレント:半期ごとの売上収益と営業利益

(百万円) 売上収益売上総利益営業利益 備考
2015年3〜8月 7,6253,0541,561
2015年9月〜2016年2月 8,2093,3841,654
2016年3〜8月 8,7293,6361,861 上場前。想定に沿って推移し、営業利益率21%
2016年9月〜2017年2月 8,4593,2401,361 10月から受注を制限。売上総利益率は42%から38%へ
半期の売上収益と営業利益率
売上収益(百万円)営業利益率(%)

出所:ベイカレント・コンサルティング 2017年2月期 決算説明会資料(2017年2月期実績 IFRS)

サービス区分別の売上収益

ベイカレント:サービス区分別の売上収益

(百万円) 戦略・ビジネスプロセスITコンサルティングシステムインテグレーション 備考
2016年2月期 3,4868,0314,318 第3期の当期値から前期比の増減を差し引いた値
2017年2月期 3,5659,5704,053 SI は264百万円減。IT コンサルティングは1,539百万円増
2018年2月期 6,38910,4133,637 戦略・ビジネスプロセスが2,824百万円増
システムインテグレーションの売上収益
システムインテグレーション(百万円)

出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3期・第4期(IFRS に基づく経営成績の分析) / ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第5期【生産、受注及び販売の状況】

売上収益と営業利益の推移

ベイカレント:売上収益と営業利益の推移

(百万円) 売上収益営業利益 備考
2015年2月期 5,565− 第1期。事業は2014年10月からの5か月分
2016年2月期 15,8343,215
2017年2月期 17,1883,222 営業利益は前期比6百万円増にとどまる
2018年2月期 20,4384,150
2019年2月期 24,2944,489
2020年2月期 32,9788,038
2021年2月期 42,87313,551
2022年2月期 57,64221,518
売上収益と営業利益率
売上収益(百万円)営業利益率(%)

出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3期〜第8期(IFRS に基づく経営成績の分析)

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