この判断の核心は、目先の在庫を捌くための値下げに加わらず、他社の在庫が尽きて相場が戻るまで金利負担に耐え抜くという、時間を味方につける我慢にあった。呼び値だけで相場を動かす空売りは、実弾を伴わずに市況の主導権を掌握する手であったが、それを成り立たせていたのは、値を崩さずとも売れるという品質への自信であっただろう。安売りではなく品質と我慢で相場を取り戻す型が、ここに現れていた。
そしてこの型は、酪連が北海道の酪農家による共同事業として出発した来歴と、静かに結びついていたようにも見える。組合員から集めた牛乳を無駄にできない立場では、投げ売りで在庫を減らすより、価格そのものを守ることに利があった。効率や物量ではなく品質と価格の秩序に賭けた選択の背後に、生産者の共同という出自がうかがえる。断ずることはできないが、後年の輸出での高い評価もふくめ、この一戦は雪印という名が品質で立つ端緒であったとみられる。