人月単価の役職別一律化(2026年・ベイカレントの決断)

更新:
論点 個別交渉の柔軟さより単価の統一を取るか
ベイカレント:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
顧客ごとの個別交渉をやめ、一律の基準で価格を決める仕組みへの転換

何をなぜ決めたか:顧客ごとの個別交渉をやめ、一律の基準で価格を決める仕組みへの転換

概要

コンサルタントの人月単価を役職別に定め、全クライアントで一律とする方針である。従来は顧客ごとに単価を決めていた。会社が主要KPIとして開示するのはコンサルタント数・案件数・コンサルタント一人当たり売上の三つで、2027年2月期は一人当たり売上を前期比約5%向上させる想定に置いている。

背景

2024年4月に公表した中期経営計画で、2025年2月期から2029年2月期にかけて年率平均20%を目安とした成長を続け、2029年2月期の売上2,500億円を目標に掲げている。成長戦略はコアクライアント戦略の推進、ケイパビリティの拡充、優秀な人材の採用・育成の三つで、コンサルタント数と案件数を積み上げる道筋が中心に置かれていた。

内容

売上の拡大と利益の伸びがともに当初計画より速く進んできたことを踏まえ、中期経営計画は前倒しでの達成をめざす方針が示された。単価は顧客ごとに決める方式をやめる。代わりに役職別の単価表へ一本化する。

含意

単価を役職別の表へ揃えれば、顧客ごとの交渉で値段を決める余地はなくなる。会社が収益の枠として置いているのは、稼働率を80%〜90%の想定レンジに保ち、EBITDAマージン30%〜40%を維持することであり、単価の統一はその枠の内側でコンサルタント一人当たり売上を押し上げる手段にあたる。

いつ何が起きたか 6件
当時の取締役 10名
考察:値段を揃えるという判断が試されるもの
考察

考察:値段を揃えるという判断が試されるもの

顧客ごとに単価を決めるやり方を役職別の一律表へ揃えるのは、交渉の余地を減らしてでも単価の水準を引き上げるという選択にあたる。値上げの一手というより、価格の決め方そのものを、個別の交渉から統一された表へ移す変更と推察される。中期経営計画の早期達成という言い方も、コンサルタント数と案件数を積み上げるだけでは目標の規模に届きにくいという認識の裏返しとして読める。

試されるのは、その単価に見合う中身を示せるかどうかである。生成AIが分析や設計の一部を担い始めた時期に、人月という単位の値段だけを上げれば、発注する側は支払う根拠を問い直すことになる。コアクライアント戦略、すなわち既存の大口顧客との取引を広げるという方針は、その問いに"積み上げた理解"で答えようとする構えといえる。増収を続けた期に株価が下げた事実は、市場がこの答えをまだ受け取っていないことを示している。価格政策の当否は、本稿の時点では決着していない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 4表

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図と表

ベイカレント:売上収益を期末の人数で割った1人当たり売上高

コンサルタント1人当たり売上高(百万円)
ベイカレント:売上収益を期末の人数で割った1人当たり売上高
(百万円) コンサルタント1人当たり売上高連結従業員1人当たり売上高 備考
2021年2月期 22.119.8
2022年2月期 24.321.8
2023年2月期 25.723
2024年2月期 24.521.7 採用が計画を上回り、コンサルタント数が前期末2,961名から3,837名へ増加
2025年2月期 24.321.2
2026年2月期 26.521.9 会社の指標であるコンサルタント一人当たり売上は計画を約4%上振れた
出所:ベイカレント 有価証券報告書(連結損益計算書・従業員の状況) / ベイカレント 通期決算説明会資料(2022年2月期〜2026年2月期・期末コンサルタント数)
出所:ベイカレント 有価証券報告書(連結損益計算書・従業員の状況) / ベイカレント 通期決算説明会資料(2022年2月期〜2026年2月期・期末コンサルタント数)

ベイカレント:売上収益と利益の推移

売上収益(百万円)売上総利益率(%)
ベイカレント:売上収益と利益の推移
(百万円) 売上収益売上総利益営業利益 備考
2021年2月期 42,82820,27112,646
2022年2月期 57,46530,65220,649
2023年2月期 76,09042,42129,916
2024年2月期 93,90951,26634,219
2025年2月期 116,05662,45542,615
2026年2月期 148,33283,98650,931 EBITDAは52,125百万円、EBITDAマージンは35.1%
出所:ベイカレント 有価証券報告書(連結損益計算書) / ベイカレント 2026年2月期 通期決算説明会資料(EBITDA・EBITDAマージン)
出所:ベイカレント 有価証券報告書(連結損益計算書) / ベイカレント 2026年2月期 通期決算説明会資料(EBITDA・EBITDAマージン)

ベイカレント:期末コンサルタント数と連結従業員数の推移

期末コンサルタント数(名)
ベイカレント:期末コンサルタント数と連結従業員数の推移
(名) 期末コンサルタント数連結従業員数 備考
2021年2月期 1,9412,161
2022年2月期 2,3692,638
2023年2月期 2,9613,310
2024年2月期 3,8374,321
2025年2月期 4,7845,467
2026年2月期 5,5906,788 総社員数は6,768名。連結従業員数は有報の値で、算定の時点が異なる
出所:ベイカレント 通期決算説明会資料(2022年2月期〜2026年2月期・期末コンサルタント数) / ベイカレント 有価証券報告書(従業員の状況)
出所:ベイカレント 通期決算説明会資料(2022年2月期〜2026年2月期・期末コンサルタント数) / ベイカレント 有価証券報告書(従業員の状況)

価格政策の建て付け

価格政策の建て付け
科目 概要 備考
単価改定の公表 記載なし 決算説明会資料と決算FAQに人月単価の改定を示す記述はない
改定の対象・適用開始・据え置いた範囲 記載なし 役職別の区分と適用の時期を示した会社の公表資料はない
単価を目標に掲げていた時期 2019年2月期の計画まで 2019年2月期は前期比5%の期中平均単価の向上を目標に掲げた
2018年2月期の平均単価 前期末比 約6.8%上昇 目標は前期末比4%。以降の決算説明会資料に単価の記述はない
現在の主要KPI コンサルタント数/案件数/一人当たり売上 2026年2月期通期の決算FAQで、この三つを主要KPIとして開示している
一人当たり売上の想定 2027年2月期に前期比約5%向上 2026年2月期は計画を約4%上振れて着地した
稼働率の想定レンジ 80%〜90% 通期平均では概ね85%前後。2026年2月期は80%台半ばで推移した
EBITDAマージンの計画レンジ 30%〜40% 2026年2月期の実績は35.1%、2027年2月期の予想は35.0%
中期経営計画の売上目標 2029年2月期に250,000百万円 2024年2月期からの年平均成長率は約20%を見込む
出所:ベイカレント 2026年2月期 通期決算説明会資料/FY2026 通期決算FAQ/2018年2月期 通期決算説明会資料
当時の取締役 10名
参考文献

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