ベイカレント Sunrise主導のMBO 創業者の持分縮小と、投資ファンドを主導役に据えた資本の組み替え

更新:

時期 2014年4月
当時の社長 萩平和巳
論点 資本構成と経営承継
何をなぜ決めたか
概要

2012年に創業者の江口新氏が社長を退任して萩平和巳氏へ承継し、2014年にはSunrise Capital中心のMBOを実施した経営判断。創業者が保有する株式をベイカレントの経営陣へ譲渡することを目的に、ファンドによる出資受入れの受皿会社としてバイロン・ホールディングスを設立した。

2014年6月6日に旧ベイカレント・コンサルティングの全株式を取得して完全子会社とし、同年10月1日に吸収合併して法人を一つにまとめている。

背景

1998年3月創業のピーシーワークスは2006年12月にベイカレント・コンサルティングへ商号を変更し、上流コンサルへの脱皮を志向した。だがリーマンショック後に需要が細り、オーナー創業者が株式の多くを握る所有のままでは、経営の刷新も外部からの資金調達も進めにくかった。

内容

受皿会社は2014年4月18日に普通株式1株・資本金5千円で設立され、6月の三度の有償第三者割当増資で計8,849,990千円を集めた。6月3日にSunrise Capital Ⅱの2本へ普通株式344,999株、5日にR-ファンドへ普通株式70,000株とA種優先株式200,000株および萩平和巳氏へ普通株式13,000株、6日に江口新氏へ普通株式257,000株を割り当てている。

資本金残高は4,425,000千円まで積み上がり、7月31日に剰余金配当の原資とすること等を目的として4,325,000千円が減資された。

含意

創業者は退場したのではなく、全株式を譲渡したうえで2,570,000千円を再出資し、持分を薄めて残った。A種優先株式は2015年7月と9月に全株が取得・消却され、2016年9月の上場を経て江口新氏とSunrise Capital Ⅱの2本は主要株主ではなくなっている。2017年2月28日現在の所有比率は江口新氏4.98%、Sunrise Capital Ⅱの2本で計5.33%である。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

オーナー創業の限界を資本の組み替えで越える

この判断の核心は、財務危機の回避ではなく、創業者が握る資本の構成そのものを組み替えた点にある。独立系の中堅が上流コンサルへ抜け出すには、高給の専門人材を継続して集め、案件を大型化する資金と、それを差配する専門経営者が要る。オーナー創業者が株式の多くを持つ体制のままでは、その両方を同時にそろえにくい。江口新氏はいったん全株式を譲渡し、そのうえで2,570,000千円を割当増資で引き受けて少数株主として戻った。所有をいったん解体してから配り直すこの手順が、ファンドの資本と外部の経営者を同じ株主名簿に並べることを可能にした。

もっとも、この再出発が後の急成長を約束したわけではない。上場直後の業績は伸び悩み、成長が加速したのは2019年以降のDX需要という外部の追い風と重なってからである。MBOで積んだのれんは毎期943百万円ずつ減り、10,975百万円まで膨らんだ有利子負債の返済も並行して続いた。買った資産と借りた金の重さを事業の伸びが上回るかどうかが問われる期間が、数年あったことになる。創業の功労者の所有をどう解き、次の資本と経営へ引き継ぐか——ベイカレントのMBOは、その問いに一つの答えを示した事例として読める。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
MBOの条件

MBOの条件

科目 概要 備考
受皿会社の設立 2014年4月18日 バイロン・ホールディングスの商号で東京都港区に設立。普通株式1株・資本金5千円
MBOの目的 創業者保有株式の経営陣への譲渡 ファンドによる出資受入れの受皿会社として設立された
第三者割当増資①(2014年6月3日) 3,449,990千円 Sunrise Capital Ⅱの2本へ普通株式344,999株を割当て。1株10,000円
第三者割当増資②(2014年6月5日) 2,830,000千円 R-ファンドへ普通株式70,000株・A種優先株式200,000株、萩平和巳氏へ普通株式13,000株
第三者割当増資③(2014年6月6日) 2,570,000千円 江口新氏へ普通株式257,000株を割当て。1株10,000円
増資による調達額の合計 8,849,990千円 2014年6月の三度の有償第三者割当増資の発行価格の合計
全株式の取得 2014年6月6日 旧ベイカレント・コンサルティングの全株式を取得して完全子会社とした
資本金残高 4,425,000千円 2014年6月6日時点。資本準備金残高も同額
減資 2014年7月31日・4,325,000千円 剰余金配当の原資とすること等が目的。資本金残高は100,000千円となった
吸収合併 2014年10月1日 旧ベイカレント・コンサルティングを吸収合併し、同日商号を同社名へ変更
A種優先株式の消却 2015年7月・9月に全200,000株 28,000株を金銭対価で、172,000株を普通株式86,000株対価で取得し同日消却

出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3期(2017年2月期)【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】【大株主の状況】

MBOで積んだのれんと借入の推移

ベイカレント:MBOで積んだのれんと借入の推移

(百万円) のれん有利子負債自己資本総資産 備考
2015年2月期 −−8,84023,458 第1期。貸借対照表は掲載されず、主要な経営指標等の推移の純資産額・総資産額のみ
2016年2月期 17,21610,9759,37223,510
2017年2月期 16,2739,72510,62122,809 2016年9月に東証マザーズへ上場
2018年2月期 15,3308,67511,45623,113
2019年2月期 14,3877,61312,44223,167
2020年2月期 13,4446,56316,60629,097
のれんと自己資本比率
のれん(百万円)自己資本率(%)
上場後最初の期末・2017年2月28日現在の大株主
  • EHRS L.P. 11%
  • 江口新 5%
  • NOMURA INTERNATIONAL PLC TOKYO TRADE 1 5%
  • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3%
  • Sunrise Capital Ⅱ, L.P. 3%
  • Sunrise Capital Ⅱ(Non-U.S.), L.P. 3%
  • 株式会社R-ファンド 1%
  • その他 69%

出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3〜6期(貸借対照表・【主要な経営指標等の推移】・【大株主の状況】)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • 株式会社ベイカレント・コンサルティング 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(2016年)
  • ベイカレント・コンサルティング 代表取締役社長 萩平和巳 インタビュー(キャリアインキュベーション)
  • ベイカレント・コンサルティング 公式サイト「会社概要」「沿革」(Internet Archive 保存の各時点、2010年3月9日〜2012年4月29日)
  • ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書「第3期(2017年2月期)【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】【大株主の状況】」
  • ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書「第3〜6期(貸借対照表)」

免責事項およびポリシー