三菱UFJフィナンシャル・グループ法定三委員会の設置:監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移り、持株会社の執行と監督を分けた

更新:

時期 2015年6月
当時の社長 平野信行
論点 持株会社の執行と監督の分離
概要

2015年6月25日の定時株主総会で定款の変更が決議され、三菱UFJフィナンシャル・グループは同日付で監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移った。会社法が定める指名委員会・報酬委員会・監査委員会を設置し、法令で定められた専決事項以外の業務執行の決定は原則として執行役へ委ねる体制とした。

取締役会は17名、執行役は17名で構成し、会社法上の指名委員会には「指名・ガバナンス委員会」の名を与えた。移行に合わせて「MUFGコーポレートガバナンス方針」を制定し、その概要を公表している。

背景

移行前から社外取締役を置き、海外と国内の有識者による経営会議の諮問機関としてグローバル・アドバイザリーボードやアドバイザリーボードを設けるなど、社外の視点を重んじる態勢づくりは進めていた。取締役会の傘下にも、委員の過半数を社外取締役と法律・会計分野の社外専門家が占める任意のガバナンス委員会・指名報酬委員会・監査委員会・リスク委員会があった。

ただし指名と報酬は一つの委員会が兼ね、いずれも取締役会への提言にとどまる任意の機関だった。2014年度の開催は指名・報酬委員会が12回、ガバナンス委員会が7回、監査委員会が15回である。

内容

移行の狙いは二つある。一つは持株会社の執行と監督を分け、取締役会の監督機能を強めること。もう一つは、G-SIFIとして海外のステークホルダーがより理解しやすい、実効性が高く効率的な態勢を築くことだった。

指名・ガバナンス委員会は、株主総会に提出する取締役の選任・解任の議案内容を決定するほか、主な子会社の重要な人事とコーポレート・ガバナンスの方針・態勢を審議して取締役会に提言する。委員6名のうち5名は社外取締役で、委員長は奥田務氏、社内からは代表執行役社長の平野信行氏が加わった。任意のリスク委員会は移行後も残している。

含意

取締役会の開催は移行前の2014年度が19回、移行後の2015年度は12回、2016年度は7回へ減った。決定を執行役へ委ね、取締役会は監督を主たる役割とする設計が、回数の上に表れている。入れ替わるように法定三委員会が動きはじめ、指名・ガバナンス委員会は2015年度11回、2016年度12回、2017年度14回と開催を増やした。

この枠組みのもとで、2019年4月に三毛兼承氏が、2020年4月に亀澤宏規氏が社長に就任している。指名・ガバナンス委員会の開催は2024年度に23回まで増えた。

筆者の見解

会議の数が語る権限の移動

この移行で実際に動いたのは、どこで何を決めるかという権限の所在だった。取締役会の開催が19回から12回、7回へと減少していく一方で、法定三委員会の開催は増えていく。決定を執行役へ委ね、取締役会と委員会は人事・報酬・監査という監督の仕事に資源を振り向けた結果だとみられる。任意の委員会が提言する立場にとどまっていたときと違い、指名・ガバナンス委員会は取締役の選解任議案そのものを決める権限を持つ。提言と決定の差は小さくない。

もっとも、移行の説明で会社が前面に置いたのは国内の統治論ではなく、G-SIFIとして海外のステークホルダーに理解されることだった。グローバルに監督を受ける金融機関にとって、機関設計は自国の制度選択であると同時に、海外の投資家や当局に自らの統治を説明するための共通言語でもある。指名・ガバナンス委員会の開催が2024年度に23回まで増えたことは、その言語が飾りに終わらなかったことを示しているのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行の決議 2015年6月25日 定時株主総会で定款の変更が決議され、同日付で指名委員会等設置会社へ移行した
移行前の機関設計 監査役会設置会社 取締役会傘下に任意のガバナンス委員会・指名報酬委員会・監査委員会・リスク委員会
移行の目的(1) 執行と監督の分離 持株会社の取締役会の監督機能を強化する
移行の目的(2) 海外から理解されやすい態勢 G-SIFIとして実効性が高く効率的なガバナンス態勢の構築を目指した
設置した法定の委員会 指名・ガバナンス委員会、報酬委員会、監査委員会 会社法上の指名委員会に「ガバナンス」の名を加えている
存置した任意の委員会 リスク委員会 グループ全体のリスク管理全般と重大なコンプライアンス事案を審議し取締役会に提言
指名・ガバナンス委員会の権限 取締役の選任・解任の議案内容の決定 主な子会社の重要な人事とガバナンスの方針・態勢も審議し、取締役会に提言する
指名・ガバナンス委員会の構成 委員6名のうち社外取締役5名 委員長は奥田務氏。社内からは代表執行役社長の平野信行氏が加わった
報酬委員会の構成 委員6名のうち社外取締役5名 委員長は岡本圀衞氏。社内からは代表執行役社長の平野信行氏が加わった
監査委員会の構成 委員5名 委員長は山手章氏
取締役会の規模 17名 金融・財務会計・リスク管理・法令遵守等の知見をバランスさせるとした
執行役 17名 取締役会の決議で選定し、委任を受けた業務執行の決定を行う
社外取締役 7名 2016年3月期の有価証券報告書提出日現在。取締役17名に対する比率は41%
業務執行の決定の委任 法定の専決事項以外は原則として執行役へ 特に重要な業務執行の決定は取締役会が行うと留保した
併せて制定した方針 MUFGコーポレートガバナンス方針 ガバナンスの考え方と枠組みを示し、その概要を公表した

出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第10期(2015年3月期)・第11期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】

三菱UFJフィナンシャル・グループ:取締役会と委員会の開催回数

(回) 取締役会指名・ガバナンス委員会報酬委員会監査委員会 備考
2011年3月期 15 監査役会設置会社。任意の指名・報酬委員会7回、監査委員会13回
2012年3月期 18 任意の指名・報酬委員会6回、監査委員会13回
2013年3月期 16 任意の指名・報酬委員会5回、監査委員会12回
2014年3月期 20 任意の指名・報酬委員会8回、リスク委員会4回、監査委員会13回
2015年3月期 19 任意のガバナンス委員会7回、指名・報酬委員会12回、リスク委員会4回、監査委員会15回
2016年3月期 1211614 2015年6月に移行。法定三委員会の初年度。任意のリスク委員会は4回
2017年3月期 712816 取締役会は7回まで減った。リスク委員会5回、傘下の米国リスク委員会4回
2018年3月期 11141016 リスク委員会5回、傘下の米国リスク委員会4回
2019年3月期 913717 リスク委員会4回、傘下の米国リスク委員会4回
2020年3月期 1014816 亀澤宏規氏の社長就任が決まった年度。リスク委員会4回
2021年3月期 1012616 リスク委員会5回、傘下の米国リスク委員会7回

出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第6〜16期(コーポレート・ガバナンスの状況等)

同じ問いに直面した会社

取締役会改革2015年荏原製作所監査役会を畳み、執行への権限委任と社外取締役の監督に組み替える機関設計の転換経営の監督と業務執行の分離をどこまで進めるか
2015年三菱重工業取締役会を監督に寄せ、重要な業務執行の決定を取締役社長へ委ねた統治の組み替え取締役会の役割と機関設計
2016年セイコーエプソン監督の担い手を取締役会の内側へ移し、審議を重要議案に絞った機関設計の切り替え取締役会の監督機能と意思決定の速さの両立
2016年サイゼリヤ社外取締役のいない取締役会を改め、過半数を社外とする監査等委員会を設置した機関設計の切り替え取締役会に社外の議決権がない統治体制
2016年ニコン監査役会を廃して監査等委員5名を取締役会に置き、重要な業務執行の一部を執行側へ委ねた機関設計の組み替え監督機能の強化と業務執行の委任をどう両立させるか
出典・参考
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第10期(2015年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第10期(2015年3月期)【役員の状況】」
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第11期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【役員の状況】」
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第6〜9期(2011年3月期〜2014年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」

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