三菱重工業監査等委員会設置会社へ移行:取締役会を監督に寄せ、重要な業務執行の決定を取締役社長へ委ねた統治の組み替え
更新:
- 概要
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2015年6月26日の第90回定時株主総会をもって、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。3名以上の取締役で構成しその過半数を社外取締役が占める監査等委員会を設置する形で、取締役会は14名(うち監査等委員である取締役5名)となり、うち5名(うち監査等委員3名)を社外から選任している。
移行前の2015年3月末は取締役11名中3名が社外、監査役5名中3名が社外監査役で、取締役会の外側にいた監視役は議決権を持つ取締役として内側へ入った。狙いは監督と執行の分離をより明確にすることと、重要な業務執行の決定を取締役に委任して迅速な意思決定を可能にすることにある。
- 背景
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2015年度を初年度とする中期経営計画「2015事業計画」は、「事業拡大加速によるグローバル競争力強化」「財務基盤の更なる強化と高収益性追求」と並ぶ基本方針の一つに「企業統治と経営プロセスのグローバル適合推進」を据えた。取締役、チーフオフィサー、執行役員の責務の明確化と、意思決定プロセスや判断基準の整備・高度化を課題に置いている。
執行側の組み替えは先に進んでいた。2014年4月に事業本部制からドメイン制へ移り、CEOの下にドメインCEO・CFO・CAO/CRO・CTOを置くチーフオフィサー制を導入している。取締役は2013年3月期までの19名から2014年3月期に12名、2015年3月末には11名へ絞られていた。
- 内容
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定款の定めと取締役会の決議により、法令で取締役会の専決事項とされた事項、事業計画、取締役・チーフオフィサー・役付執行役員の選解任及び報酬、その他特に重要な個別の事業計画・投資を除いて、重要な業務執行の決定を取締役社長へ委任した。監査等委員会は取締役5名・うち社外3名で構成し、定款で常勤の監査等委員を選定する旨を定めて互選により2名を選任、専属スタッフを置く監査等委員会室を設けている。
同じ総会で、社外取締役全員と取締役社長のみで構成する任意の会議体「役員指名・報酬諮問会議」を設け、役員報酬BIP信託による株式報酬制度を導入した。
- 含意
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移行後の取締役会は2016年6月23日の定時株主総会で業務を執行する取締役を2名減らし、取締役11名・社外5名へ収れんした。独立性基準を満たす社外取締役が取締役会全体の3分の1以上を占める形を保ち、2020年3月期以降は取締役12名・社外6名で社外が半数となっている。
取締役会を監督に寄せる設計は、リスクを執行の側で受け止める体制と対になった。2016年4月には事業リスク総括部を新設してCEO直轄の全社リスクマネジメント体制を構築し、CAO/CROを廃してGC及びHR担当役員をCEOの下に置いている。
監督へ寄せた取締役会
この移行の核心は、機関の看板の掛け替えではなく、取締役会が何を決める場かの定義し直しにあったとみられる。重要な業務執行の決定は取締役社長へ委ね、取締役会には監督を残す。取締役会の外側から取締役の職務を監査していた監査役は姿を消し、議決権を持つ監査等委員として内側に入った。社外の顔ぶれも3名から5名へ増えている。19名だった取締役会が11名まで絞られてきた流れの先に置くと、意思決定の速さと監督の独立性を同時に取りにいった組み替えだと読める。
もっとも、器を組み替えることと、リスクが早く掬い上げられることは別である。移行の前後、会社は大型客船の建造で損失を積み続け、繰入額は4期で2,718億94百万円に達した。これに対する会社の手当ては、取締役会の側ではなく執行の側に現れる。2016年4月の事業リスク総括部はCEO直轄で、リスク管理室とリスクソリューション室を統括する組織だった。監督へ寄せた取締役会が個別案件の危うさをどこまで捉えられるのかは、この機関設計だけでは決まらないのだろう。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 移行の決議 | 2015年6月26日 | 第90回定時株主総会をもって監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行 |
| 移行の狙い | 監督と執行の分離の明確化 | 取締役会の権限のうち重要な業務執行の決定を取締役に委任し、迅速な意思決定を可能にする |
| 中期経営計画での位置づけ | 2015事業計画の基本方針の一つ | 「企業統治と経営プロセスのグローバル適合推進」。責務の明確化と判断基準の高度化を掲げた |
| 移行前の機関 | 監査役会設置会社 | 2015年3月末は取締役11名中3名が社外、監査役5名中3名が社外監査役 |
| 移行後の取締役会 | 取締役14名(うち監査等委員5名) | 5名(うち監査等委員である取締役3名)を社外から選任した |
| 監査等委員会 | 取締役5名・うち社外3名 | 定款で常勤の監査等委員を選定する旨を定め、互選により2名を選任した |
| 監査等委員会室 | 専属スタッフを配置 | 監査等委員でない取締役の指揮命令を受けず、人事異動・考課は監査等委員会の同意による |
| 業務執行の決定の委任 | 取締役社長へ委任 | 法定の専決事項、事業計画、取締役等の選解任・報酬、特に重要な事業計画・投資を除く |
| 役員指名・報酬諮問会議 | 社外取締役全員と取締役社長で構成 | 取締役候補者の指名や幹部役員の報酬を取締役会の審議に先立ち諮る。初年度は2回開催 |
| 内部統制システムの改定 | 2015年4月23日・6月26日の取締役会 | 会社法及び会社法施行規則の改正と移行に対応して決議を改めた |
| 株式報酬制度の導入 | 役員報酬BIP信託 | 2015年度は337,000ポイントを付与。1事業年度に付与するポイントの上限は500,000 |
| 金銭報酬の支給限度額 | 1,200百万円 | 監査等委員でない取締役の1事業年度当たり。監査等委員である取締役は300百万円 |
| 取締役の定員 | 20名以内 | うち監査等委員である取締役は10名以内と定款に定める |
| 移行後の減員 | 2016年6月23日 | 定時株主総会をもって業務を執行する取締役を2名減らし、取締役11名とした |
出所:三菱重工業 有価証券報告書 第196期(2015年3月期)・第197期(2016年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】【対処すべき課題】【役員の報酬等】
三菱重工業:取締役会の構成の推移(各期の有価証券報告書が記載する構成)
| (名) | 取締役 | うち社外取締役 | うち監査等委員である取締役 | 監査役 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 19 | 3 | − | 5 | 監査役会設置会社。監査役5名のうち3名が社外監査役 |
| 2012年3月期 | 19 | 3 | − | 5 | |
| 2013年3月期 | 19 | 3 | − | 5 | |
| 2014年3月期 | 12 | 3 | − | 5 | 事業本部制からドメイン制へ移り、取締役を19名から12名へ絞った |
| 2015年3月期 | 14 | 5 | 5 | − | 2015年6月26日に移行。この期の有価証券報告書は移行後の構成を記載している |
| 2016年3月期 | 11 | 5 | 5 | − | 2016年6月23日の定時株主総会で業務を執行する取締役を2名減員した |
| 2017年3月期 | 11 | 5 | 5 | − | |
| 2018年3月期 | 11 | 5 | 5 | − | |
| 2019年3月期 | 11 | 5 | 5 | − | |
| 2020年3月期 | 12 | 6 | 5 | − | 社外取締役が6名となり、取締役会の半数を占める |
| 2021年3月期 | 12 | 6 | 5 | − |
出所:三菱重工業 有価証券報告書 第192〜202期(コーポレート・ガバナンスの状況等)
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