サイバーエージェントジークレストを完全子会社化:オンラインゲーム子会社の全株取得による課金事業の取り込み

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時期 2009年10月
意思決定者(推定) 藤田晋・西條晋一 代表取締役社長CEO・専務取締役COO
論点 広告に依存した収益構造への課金事業の接ぎ木
概要

2009年10月1日、サイバーエージェントが連結子会社だった株式会社ジークレストの株式を追加取得し、完全子会社とした経営判断。取得原価は1,424百万円で全額を現金で支出し、議決権比率は59.3%から100.0%になった。のれん1,142百万円が発生し、10年の定額法で償却する。子会社株式の追加取得にあたるため、共通支配下の取引等として会計処理している。2003年12月に株式を取得してオンラインゲーム事業に参入してから6年を経ての全株取得だった。

背景

サイバーエージェントは2004年9月に始めた「Ameba」を注力事業に据え、2009年2月にはアメーバピグを開始して課金事業に踏み込んでいた。同年4月にCyberZ、5月にサムザップを設立してソーシャルゲーム事業を本格的に始めており、9月には西條晋一専務取締役COOがジークレストの代表取締役に就いている。会社は「注力事業であるAmebaを中心とした高収益なビジネスモデルを目指す」なかで「選択と集中」の観点から事業ポートフォリオを見直したと記している。

内容

会社が挙げた目的は、Amebaでも課金事業を開始したなかでグループシナジーを最大限に活かしてサービスの充実をはかると同時に、課金事業を多元的に強化して収益を拡大させることだった。ジークレストの事業はオンラインゲームと携帯電話向けコンテンツの企画・開発・運営・販売で、資本金は239百万円。単体の関係会社株式の帳簿価額は2009年9月期末の302百万円から2010年9月期末には1,726百万円へ増えている。翌月にはネットプライスドットコムの株式の一部を売却して持分法適用関連会社としており、取り込みと切り離しは対になっていた。

含意

完全子会社化の直後、ジークレストが属したメディア関連事業の外部顧客への売上高は2010年9月期の31,474百万円から2012年9月期には47,059百万円へ、セグメント利益は2,235百万円から5,009百万円へ伸びた。この区分には2011年5月に設立されたCygamesなどが順次加わり、2013年9月期に「SAP・その他メディア事業」へ改称され、のちにゲーム事業へ再編される。ジークレストは2025年9月期に吸収合併により連結の範囲から外れた。

筆者の見解

14億円で買った6年ぶんの助走

取得原価1,424百万円という額は、同じ年に動いた案件としては小さい。だが、この買い物の中身は株式そのものではなく、2003年から6年かけて子会社の内側に溜まっていたオンラインゲームの運営経験だったとみることができる。会社が挙げた理由は「課金事業を多元的に強化し、収益を拡大させること」の一点で、シナジーの列挙も統合効果の試算もない。広告代理事業とAmebaという二つの柱を持ちながら、ユーザーから直接お金を受け取る技術と組織だけが手薄だった会社が、すでに手元にあった59.3%を100%に詰めただけの取引である。

それでも位置づけが軽いわけではない。同じ四半期にネットプライスドットコムを持分法適用関連会社へ外し、有報は一連の動きを「選択と集中」と呼んでいる。取り込むものと手放すものを同時に決めたということであり、そこで残す側に置かれたのがゲームと課金だった。この判断の2年後にCygamesが設立され、ジークレストを含む区分の売上は2010年9月期の314億円から2012年9月期には470億円へ伸びる。のれん1,142百万円の10年償却が終わる頃には、会社の稼ぎ頭は広告からゲームへ移っていた。買い足した4割の議決権は、そこへ至る助走の起点に置かれている。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

取得の条件

科目 概要 備考
被取得企業 株式会社ジークレスト オンラインゲーム、携帯電話向けコンテンツの企画、開発、運営、販売
企業結合の法的形式 株式取得 連結子会社の株式の追加取得。共通支配下の取引等として注記されている
企業結合日 2009年10月1日 2010年9月期の初日。同日をもって完全子会社となった
取得前の議決権比率 59.3% 2009年9月期末の関係会社の状況。2003年12月の株式取得以来の持分
取得後の議決権比率 100.0% 2010年9月期末の関係会社の状況。役員の兼任と事業所の賃貸借がある
取得原価 1,424百万円 内訳は株式取得費用1,424百万円。全て現金で支出している
取得関連費用 記載なし アドバイザリー費用等の内訳は公表資料に記載がない
のれん 1,142百万円 償却の方法及び償却期間は10年の定額法
のれんの発生原因 少数株主持分との差額 時価純資産のうち少数株主に帰属する金額が取得原価を下回った差額
実施した会計処理 連結財務諸表原則 第四 5 「子会社株式の追加取得及び一部売却等」に基づき処理している
取引の目的 課金事業の多元的な強化 グループシナジーを活かしたサービスの充実と収益の拡大を挙げている
被取得企業の資本金 239百万円 本店は東京都渋谷区。2009年9月期・2010年9月期とも同額
関係会社株式の帳簿価額 302→1,726百万円 提出会社の貸借対照表。2009年9月期末から2010年9月期末への増加額は1,424百万円
買付価格・買付期間 該当なし 被取得企業は非上場で、公開買付けによる取得ではない

出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第12期(2009年9月期)【企業結合等関係】 / 第13期(2010年9月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】 / 第14期(2011年9月期)【企業結合等関係】

サイバーエージェント:メディア関連事業とAmeba関連事業の推移

(百万円) Ameba関連事業メディア関連事業メディア関連事業の利益 備考
2005年9月期 事業の種類別セグメントの区分が異なり、同じ名前で比較できない
2006年9月期
2007年9月期
2008年9月期
2009年9月期 3,94448,8264,832 2010年9月期の区分に組み替えた前期の数値。営業利益ベース
2010年9月期 7,77731,4742,235 完全子会社化は期首の10月1日。売上高は外部顧客への売上高
2011年9月期 15,67434,8582,415 メディア関連事業にはCyberX・サムザップ・Cygames・ジークレストが属する
2012年9月期 19,39047,0595,009
2013年9月期 メディア関連事業は「SAP・その他メディア事業」に改称した
2014年9月期
2015年9月期
両セグメントの外部顧客への売上高
メディア関連事業(百万円)Ameba関連事業(百万円)

出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第13期〜第15期(セグメント情報、報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報)

サイバーエージェント:のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2005年9月期 連結貸借対照表の科目は「連結調整勘定」で、のれんの区分掲記がない
2006年9月期
2007年9月期 連結調整勘定は1,230百万円。無形固定資産・総資産は有報で照合していない
2008年9月期 1,5953,08362,911
2009年9月期 1,0613,12367,291
2010年9月期 2,3084,93283,723 ジークレスト分1,142を計上。10年の定額法で償却する
2011年9月期 3,1026,555111,689
2012年9月期 2,99110,019136,366
2013年9月期 2,81210,41781,425 サイバーエージェントFXの全株式を売却し、FX事業から撤退した期
2014年9月期 3,73514,339100,545
2015年9月期 4,55117,955131,188
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第11期〜第18期(連結貸借対照表)

同じ問いに直面した会社

収益モデル転換による隣接領域への展開2001年NSD地域の計算センターの取り込みと、運用受託部門の切り出し収益モデルとグループ構成
2022年ペプチドリーム富士フイルム富山化学から引き継ぐ放射性医薬品事業の取得事業構造の転換と第二の柱の構築
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出典・参考
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第12期(2009年9月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第13期(2010年9月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】【セグメント情報】【沿革】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第14期(2011年9月期)【企業結合等関係】【セグメント情報】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第15期(2012年9月期)【セグメント情報】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第16期(2013年9月期)【沿革】【セグメント情報】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第19期(2016年9月期)【事業の状況】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第28期(2025年9月期)【連結財務諸表作成のための基本となる事項】」

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