サイバーエージェント 終身雇用方針への転換 長く働き続けられる雇用方針の打ち出しと、離職率低減に向けた人事改革
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2003年、離職率が約30%に達していたサイバーエージェントが、藤田晋社長のもとで"長く働く人を奨励する会社"への方針転換に踏み切った経営判断。ベンチャーには異例の"終身雇用"を掲げ、人事機能の強化と福利厚生の整備で人材定着を図った。
- 背景
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上場前後に急拡大した同社は、中途採用の失敗もあって離職率が約30%に達し、3年ほど高止まりしていた。年200名を採用しても約100名が辞める消耗戦で、組織は混乱していた。
- 内容
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2003年秋、初の役員合宿で人事機能の強化と長期雇用の方針を決定。若手の曽山哲人氏を人事の中核に据え、2駅ルール(家賃補助)や理念小冊子"maxims"、年2回の社員総会など、定着と一体感を高める制度を整えた。
- 含意
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離職率は約2年で30%から20%へ、その後は約8%まで低下した。組織の安定が広告営業の拡大を支え、従業員1,000名超の体制を実現。
いつ何が起きたか 4件
筆者の見解
使い捨てないことを競争力にした人事
この改革の要点は、実力主義のベンチャーが、あえて日本型の長期雇用を自らの武器として取り込んだ点にある。高い離職率は当時のネット業界では珍しくなく、辞めた分をまた採ればよいという発想もありえた。藤田晋社長はそれを採らず、採用コストと定着を天秤にかけたうえで、長く働ける会社をつくるほうが合理的だと判断した。2駅ルールも社員総会も理念小冊子も、一見すると情緒的な施策に見えて、離職という最大のコストを下げるための計算された投資だった。
もっとも、制度だけで人がとどまるわけではない。離職率が30%から8%へ下がるまでにはおよそ十数年を要し、曽山氏の言う"素直でいい人"を軸にした採用と育成の積み重ねが伴って初めて数字が動いた。人材の定着を経営の中心に据えたこの選択は、のちにゲームやメディアといった新事業へ人を送り出す余力を生み、2014年のメディア事業の構造改革でも人員を外部の離職ではなく社内異動で吸収する運営につながっていく。人を辞めさせないことを競争力に変えたところに、この決断の一貫した思想がある。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
人事の方針と採用の規模
人事の方針と採用の規模
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 方針転換の決定 | 会社の公表資料に記載なし | 決定の時期と場、「終身雇用」の表現は開示資料にない |
| 離職率が公表された年 | 2018年9月末で9.3% | 統合報告書が離職率を載せたのは2018年版から。2000年代の水準は開示がない |
| 労働組合 | 結成されていない | 労使関係は良好と各期の有価証券報告書が記す |
| 提出会社の平均年齢 | 28.1歳 | 2005年9月期。2008年9月期まで28.0〜28.5歳の幅で動かない |
| 従業員が増えた理由 | 業容拡大にともなう採用増 | 提出会社は2005年9月期に206名増、2006年9月期に58名増、2007年9月期に95名増 |
| 新卒の受け入れ | 2006年4月に135名 | 技術者23名の採用内定を含む。連結役職員数は前四半期比229名増 |
| 2008年4月の新入社員 | 132名 | 128名入社予定として公表し、実績は132名 |
| 2008年9月期の採用方針 | 人員採用を抑制し育成に注力 | 第1・第2四半期の決算説明会資料が掲げた方針 |
出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第8〜11期【従業員の状況】/2006年9月期第3四半期・2008年9月期第1〜第2四半期 決算説明会資料
従業員数の推移
サイバーエージェント:従業員数の推移
| (人) | 連結従業員数 | 提出会社従業員数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2001年9月期 | 172 | 119 | 第4期。東証マザーズ上場の翌期 |
| 2002年9月期 | 333 | 168 | |
| 2003年9月期 | 473 | 264 | 連結は2年で2.7倍、提出会社は2.2倍に増えた |
| 2004年9月期 | 767 | 362 | |
| 2005年9月期 | 1,184 | 568 | 連結は前期末比417名増。子会社の増加と業容拡大にともなう採用増による |
| 2006年9月期 | 1,493 | 626 | |
| 2007年9月期 | 1,566 | 721 | |
| 2008年9月期 | 1,873 | 745 |
出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第8期・第11期・第14期【主要な経営指標等の推移】(連結・提出会社) / サイバーエージェント 有価証券報告書 第8〜11期【従業員の状況】
離職率と平均勤続年数
サイバーエージェント:離職率と平均勤続年数
| 離職率(%) | 平均勤続年数(年) | 備考 | |
|---|---|---|---|
| 2005年9月末 | − | 1.61 | 有価証券報告書【従業員の状況】の平均勤続年数はこの期から取れる |
| 2006年9月末 | − | 1.81 | |
| 2007年9月末 | − | 2.27 | |
| 2008年9月末 | − | 2.8 | |
| 2009年9月末 | − | 3.4 | |
| 2010年9月末 | − | 3.8 | |
| 2011年9月末 | − | 3.6 | |
| 2012年9月末 | − | 3.1 | |
| 2013年9月末 | − | 3.6 | |
| 2014年9月末 | − | 4.1 | |
| 2015年9月末 | − | 4.5 | |
| 2016年9月末 | − | 4.9 | |
| 2017年9月末 | − | 5.1 | 勤続年数はこの15年で1.61年から5.1年へ伸びた |
| 2018年9月末 | 9.3 | 5.2 | 単体の役員・正社員1,551名で集計。入社3年目以内の管理職比率は22.8% |
| 2019年9月末 | 10 | 5.4 | 「低い離職率を継続」と添えて円グラフで示す |
| 2020年9月末 | 7 | 6 | |
| 2021年9月末 | 8 | 6.3 | ESGデータの単体。カバレッジ100%で、連結は7.9% |
| 2022年9月末 | 8 | 6.1 | 連結は8.4%。平均年間給与は8,170,693円 |
出所:サイバーエージェント 統合報告書 CyberAgent Way 2018〜2022(数字で見るサイバーエージェント/ESGデータ) / サイバーエージェント 有価証券報告書 第8〜25期【従業員の状況】(提出会社の平均勤続年数)
同じ問いに直面した会社
参考文献
- ジャンプ株式会社 STRUCT REPORT 2020年9月30日「サイバーエージェントの『人事・曽山哲人』誕生秘話(前編)」
- サイバーエージェント 統合報告書「CyberAgent Way 2018(数字で見るサイバーエージェント 従業員情報)」
- サイバーエージェント 統合報告書「CyberAgent Way 2022(ESGデータ)」
- サイバーエージェント 決算説明会資料「2006年9月期 第3四半期」
- サイバーエージェント 決算説明会資料「2008年9月期 第1四半期」
- サイバーエージェント 決算説明会資料「2008年9月期 第2四半期」
- サイバーエージェント 決算説明会資料「2004年9月期 第4四半期」
- サイバーエージェント 株主通信「REPORT 2005年9月期」
- サイバーエージェント 有価証券報告書「第8期(2005年9月期)【従業員の状況】」
- サイバーエージェント 有価証券報告書「第11期(2008年9月期)【従業員の状況】」