サイバーエージェントCygames株をDeNAへ一部譲渡:子会社株式460株の譲渡と引き換えに結んだ資本業務提携

更新:

時期 2012年11月
意思決定者(推定) 藤田晋 社長
論点 ソーシャルゲーム事業の連携相手と子会社の持分の置き方
概要

2012年11月6日、サイバーエージェントが取締役会で連結子会社㈱Cygamesの株式の一部を譲渡することを代表取締役CEOに一任し、翌7日に㈱ディー・エヌ・エーと合意して株式譲渡契約を締結した経営判断。譲渡したのは普通株式460株で、譲渡価額は6,818百万円。同年12月28日に実行し、持分比率は96.2%から74.04%へ下がったものの、Cygamesは引き続き子会社として残った。

背景

Cygamesは2011年5月にソーシャルゲーム事業の強化を目的として設立され、2012年2月にはソーシャルRPG「神撃のバハムート」英語版(Rage of Bahamut)を開始していた。国内のソーシャルゲーム市場は2011年度に前年度比1.8倍の2,570億円へ拡大し、2012年度は3,429億円に伸びると見込まれていた。2012年9月期のCygamesは売上高16,906百万円・当期純利益2,635百万円で、連結売上高に占める割合が10%を超える規模に育っていた。

内容

会社が挙げた売却の理由は、Cygamesとディー・エヌ・エー両社の協力関係を強固なものにし、国内外において連携を強化するための資本・業務提携。両社は2011年4月にスマートフォン向けアドネットワーク事業の㈱AMoAdを合弁で設立した間柄でもあった。売却益は約6,000百万円の特別利益を見込むとされ、譲渡時点のCygamesの純資産等により変動するとの但し書きが付いた。監査法人は同じ後発事象を監査報告書の強調事項に記載している。

含意

2013年9月期の連結損益計算書では、関係会社株式売却益16,661百万円のうちCygames株式の一部売却に係るものが6,068百万円(個別では6,791百万円)で、見込んだ約6,000百万円をわずかに上回った。同期のCygamesは売上高32,124百万円・経常利益8,739百万円へ倍近く伸び、SAP・その他メディア事業の売上高も60,010百万円(前年同期比24.9%増)となった。持分比率はその後61.7%前後で推移し、2025年9月期のCygamesは売上高137,528百万円に達している。

筆者の見解

売っても手放さなかった株

460株で6,818百万円という値は、Cygamesの2012年9月期の純資産2,751百万円をはるかに上回る。その差は、ソーシャルゲームという当時いちばん勢いのあった領域で、すでに連結売上高の1割を超える規模の会社を育てきっていたことへの評価に他ならない。設立から1年半で、出資した側が売り手として値を付けられる位置に立ったことになる。売却益約6,000百万円という見込みは、同じ期の連結営業利益17,410百万円と比べても軽い額ではなかった。

注目すべきは、売った後も子会社のまま残した点であろう。96.2%から74.04%へという下げ幅は、過半を大きく上回る水準を保ったまま相手を株主として迎え入れる幅で、連結から外れる線には遠く及ばない。連携の相手に資本を持たせて協力関係を強くしつつ、事業の指揮権は渡さないという設計になっている。同じ後発事象の節に並ぶサイバーエージェントFXの全株譲渡が「選択と集中」を理由に掲げていたのと比べると、この一部譲渡が撤退ではなく提携であったことがはっきり分かる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

譲渡の条件

科目 概要 備考
売却した子会社 ㈱Cygames モバイル向けゲームアプリ開発事業。親会社との取引関係は広告取引
取締役会の決議日 2012年11月6日 株式の一部を譲渡することを代表取締役CEOに一任する決議
株式譲渡契約の締結 2012年11月7日 ㈱ディー・エヌ・エーと合意して締結した
売却先 ㈱ディー・エヌ・エー 2011年4月に合弁で㈱AMoAdを設立していた相手
売却の時期 2012年12月28日 有価証券報告書の提出時点では予定として記載された
売却の理由 資本・業務提携 両社の協力関係を強固にし、国内外において連携を強化していくため
売却した株式の数 普通株式460株 Cygamesの資本金は52百万円
売却価額 6,818百万円
見込んだ売却益 約6,000百万円 特別利益。譲渡時点のCygamesの純資産等により変動するとした
計上した売却益(連結) 6,068百万円 2013年9月期の関係会社株式売却益16,661百万円のうちの内訳
計上した売却益(個別) 6,791百万円 個別の関係会社株式売却益は26,561百万円
譲渡前の議決権比率 96.2% 2012年9月30日現在の議決権の所有割合
譲渡後の持分比率 74.04% 売却後もCygamesは引き続き子会社である
監査報告書の扱い 強調事項に記載 重要な後発事象として、決議と譲渡契約の締結が記された

出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第15期(2012年9月期)【重要な後発事象】 / 第16期(2013年9月期)【関係会社の状況】【連結損益計算書関係】

サイバーエージェント:㈱Cygamesの業績

(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
2009年9月期
2010年9月期
2011年9月期 2011年5月の設立期。主要な損益情報等の記載はない
2012年9月期 16,9064,6892,635 議決権の所有割合96.2%。純資産額2,751・総資産額9,199
2013年9月期 32,1248,7394,674 譲渡後の議決権の所有割合74.0%。純資産額7,426
2014年9月期 28,5234,4912,656 議決権の所有割合61.7%
2015年9月期 39,48610,4066,220 議決権の所有割合61.9%
2016年9月期 78,00323,35013,306 議決権の所有割合64.7%
2017年9月期 92,29118,16813,360 議決権の所有割合64.7%
2018年9月期 96,64415,48311,356 議決権の所有割合61.7%
2019年9月期 108,65119,52811,025 議決権の所有割合61.7%
Cygamesの売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第15期〜第22期(【関係会社の状況】注記の主要な損益情報等、議決権の所有割合)

サイバーエージェント:ゲーム事業セグメントの推移

(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2009年9月期
2010年9月期
2011年9月期
2012年9月期 47,0595,009 SAP・その他メディア事業。区分変更に伴い組み替えた数値
2013年9月期 50,5968,478 ゲーム区分への組替後。第16期のSAP事業等は60,010・8,800
2014年9月期 68,47915,967
2015年9月期 85,90617,875
2016年9月期 121,74030,451
2017年9月期 139,77526,503
2018年9月期 146,15425,303
2019年9月期 151,80626,040
ゲーム事業の売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:サイバーエージェント 有価証券報告書 第16期〜第22期(セグメント情報。2012年9月期と2013年9月期は報告セグメントの区分変更に伴う組替後の数値)

同じ問いに直面した会社

資本提携と政策保有1999年横河電機36年続いた合弁の清算と、持分売却による単独経営への移行事業の選択と集中、投資財源の確保
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2012年塩野義製薬合弁持分を手放す代わりに受け取った相手方株式10%の保有HIVフランチャイズの販売体制と収益モデル
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出典・参考
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第15期(2012年9月期)【重要な後発事象】【関係会社の状況】【業績等の概要】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第16期(2013年9月期)【連結損益計算書関係】【関係会社の状況】【沿革】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第17期〜第22期(2014年9月期〜2019年9月期)【関係会社の状況】【セグメント情報】」
  • サイバーエージェント 有価証券報告書「第28期(2025年9月期)【関係会社の状況】」

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