東京海上ホールディングス監査等委員会設置会社へ移行:不祥事を受けて置いたグループ監査委員会の機能を法定の監査等委員会へ集約し、執行への権限委譲と組織的監査を組み合わせた

更新:

時期 2026年6月
当時の社長 小池昌洋
論点 機関設計と監査の体制
概要

2026年6月29日開催の第24回定時株主総会で「定款一部変更の件」が承認可決され、同日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。掲げた目的は、「成長戦略とガバナンスの高位均衡」の実現をさらに進化、充実させることである。

取締役会は7名の社外取締役を含む13名から、9名の社外取締役を含む17名となり、このうち5名が監査等委員である取締役となった。

背景

それまでの機関設計は、監査役会設置会社をベースに任意の指名委員会・報酬委員会を設置するハイブリッド型だった。監査役会は社外監査役3名を含む5名で構成し、監査役の任期は4年としていた。

加えて2024年4月1日付で内部統制委員会を改組し、執行から独立した社外視点を活用する取締役会委員会としてグループ監査委員会を設置していた。改組の契機は、グループ会社における保険料調整事案等の不祥事案等の発生にあった。

内容

移行後は、取締役会から執行へ大幅な権限委譲を行い、中長期戦略に基づく迅速な事業運営を加速する。監査等委員が取締役会のメンバーとなることで取締役会が一体的にガバナンス機能を果たし、監査等委員会は内部監査部門を活用した組織的監査を行う。内部監査年度計画は、監査等委員会の承認を得たうえで取締役会に諮ることとした。

グループ監査委員会の主な機能は監査等委員会へ集約された。取締役候補者の選任や報酬の決定は、引き続き任意の指名委員会・報酬委員会の答申を経て取締役会が決める。

含意

監査等委員会は監査等委員である取締役5名で構成され、このうち3名が社外取締役で、委員長は松山遙氏が務める。定款上の取締役の員数は15名以内から17名以内へ改まり、うち監査等委員である取締役は5名以内となった。

指名委員会・報酬委員会は任意の委員会として残る。いずれも5名で、指名委員会の委員長は片野坂真哉氏、報酬委員会の委員長も社外取締役が務める。

筆者の見解

応急の委員会を恒久の器へ

この移行は、機関設計の名札を掛け替えた話ではなく、不祥事のあとに立てた仕組みを恒久の器へ移し替えた作業だったとみられる。グループ監査委員会は、保険料調整事案等の不祥事案等が発生したことを受けて2024年4月に内部統制委員会を改組して生まれた、取締役会の下の任意機関である。執行から独立した社外視点を活用してきたその主な機能が、会社法の定める監査等委員会へ集約された。任意の委員会はいつでも畳めるが、法定機関はそうはいかない。二年で器を替えたことには、再発防止の仕掛けを経営の代替わりに左右されない場所へ置き直す意味がある。

もっとも、会社が掲げた移行の目的は「成長戦略とガバナンスの高位均衡」の実現であって、不祥事への対応とは書かれていない。取締役会から執行への大幅な権限委譲が同じ文脈で語られている以上、監督の強化と意思決定の加速という、向きの異なる二つを一つの器で成り立たせる設計だと読める。社外取締役は7名から9名へ増えたが、17名の取締役会の過半には届かない。権限を渡した先を誰がどこまで見るのか——器が整ったことと、監査が実際に届くことは別の問題として残るのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行の日 2026年6月29日 第24回定時株主総会で「定款一部変更の件」が承認可決され、同日付で移行した
移行前の機関設計 監査役会設置会社 任意の指名委員会・報酬委員会を設置するハイブリッド型の機関設計だった
移行の目的 成長戦略とガバナンスの高位均衡 その実現をさらに進化、充実させることを目的に掲げた
定款上の取締役の員数 17名以内 移行前は15名以内。うち監査等委員である取締役は5名以内とする
移行後の取締役会 17名(うち社外取締役9名) 移行前は社外取締役7名を含む13名。有価証券報告書提出日現在の構成
監査等委員である取締役 5名(うち社外取締役3名) 委員長は松山遙氏。移行前の監査役会は社外監査役3名を含む5名だった
グループ監査委員会 主な機能を監査等委員会へ集約 保険料調整事案等を受け2024年4月1日に内部統制委員会を改組して設置した
内部監査部門との関係 内部監査年度計画を監査等委員会が承認 承認を得たうえで取締役会に諮る。重要な監査結果は両者へ報告する
執行への権限委譲 取締役会から大幅な権限委譲 中長期戦略に基づく迅速な事業運営を加速することを狙う
指名委員会・報酬委員会 任意の委員会として存続 各5名。指名委員会の委員長は片野坂真哉氏で、いずれも社外取締役が務める
監査等委員の選任決議要件 議決権の3分の1以上が出席し過半数 定款に定める。移行前の監査役の選任決議と同じ要件
株主総会に付議した役員議案 取締役12名と監査等委員である取締役5名 定款一部変更の件および報酬に関する3議案とあわせて付議した

出所:東京海上ホールディングス 有価証券報告書 第24期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】 / 東京海上ホールディングス コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月29日)

東京海上ホールディングス:取締役会と監査役会の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役 備考
2022年3月期 1465
2023年3月期 1465
2024年3月期 1575
2025年3月期 1575
2026年3月期 1375 移行前の最後の期。監査役5名のうち社外監査役は3名
2027年3月期 179 2026年6月29日に移行。監査役会は廃止され、監査等委員である取締役は5名
2028年3月期 第26期は未到来
2029年3月期 第27期は未到来
2030年3月期 第28期は未到来
2031年3月期 第29期は未到来
2032年3月期 第30期は未到来
取締役会の規模と社外取締役比率
取締役(名)うち社外取締役率(%)

出所:東京海上ホールディングス 有価証券報告書 第20〜24期(2022年3月期〜2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】。各期とも有価証券報告書提出日現在の構成 / 東京海上ホールディングス コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月29日)。2027年3月期の行は移行直後の構成

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出典・参考
  • 東京海上ホールディングス 有価証券報告書「有価証券報告書 第24期(2026年3月期)」
  • 東京海上ホールディングス コーポレート・ガバナンスに関する報告書「コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月29日)」
  • 東京海上ホールディングス 有価証券報告書「有価証券報告書 第22期(2024年3月期)」

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