この移行は、機関設計の名札を掛け替えた話ではなく、不祥事のあとに立てた仕組みを恒久の機関へ移し替えた作業だったと推察される。グループ監査委員会は、保険料調整事案等の不祥事案等が発生したことを受けて2024年4月に内部統制委員会を改組して生まれた、取締役会の下の任意機関である。執行から独立した社外視点を活用してきたその主な機能が、会社法の定める監査等委員会へ集約された。任意の委員会はいつでも畳めるが、法定機関はそうはいかない。二年で機関設計を替えたことには、再発防止の仕掛けを経営の代替わりに左右されない場所へ置き直す意味がある。
もっとも、会社が掲げた移行の目的は「成長戦略とガバナンスの高位均衡」の実現であって、不祥事への対応とは書かれていない。取締役会から執行への大幅な権限委譲が同じ文脈で語られている以上、監督の強化と意思決定の加速という、向きの異なる二つを一つの機関設計で成り立たせる設計だと読める。社外取締役は7名から9名へ増加したが、17名の取締役会の過半には届かない。権限を渡した先を誰がどこまで見るのか——仕組みが整ったことと、監査が実際に届くことは別の問題として残るのだろう。