京セラモニタリングボードへの移行:監査役会設置会社からの転換と、社外取締役が過半数を占める取締役会

更新:

時期 2026年2月
当時の社長 谷本秀夫
論点 監督と執行の分離
概要

2026年2月2日の取締役会で、監査等委員会設置会社への移行を第72期定時株主総会に付議すると決議した。掲げた目的は取締役会の監督機能の強化と審議の充実で、移行後の取締役会は独立社外取締役が過半数を占めるモニタリングボードとなる。

6月25日の総会では、定款変更と取締役10名・監査等委員である取締役3名の選任を含む会社提案の8議案がいずれも可決され、総会終結の時をもって移行が効力を生じた。

背景

移行は、2025年4月に発足した経営改革プロジェクトの一環に置かれている。株主との対話では、事業ポートフォリオマネジメントの強化、資本効率の向上と並んで、社外取締役が過半数を占めるモニタリングボードへの移行と取締役会の多様性が主なテーマに挙がっていた。

取締役会の実効性評価でも、子会社管理の監督と、議案の検討経緯を明確にして議論の質を上げることが課題として残っていた。取締役の任期は2025年6月の総会で2年から1年へ短縮されている。

内容

定款上の取締役の員数は12名以内から14名以内へ改め、うち監査等委員である取締役を4名以内と定めた。取締役会は社内7名・社外4名の11名から、社内6名・社外7名の13名となり、監査等委員会は社内1名・社外2名の3名で構成される。監査等委員である取締役には青木昭一氏、木田稔氏、小原路絵氏が新たに選ばれ、木田氏と小原氏はいずれも社外監査役からの移行である。

指名報酬委員会は委員の過半数を独立社外取締役とし、議長も独立社外取締役から選ぶ体制とした。

含意

同じ総会には、提案株主が求める監査等委員である社外取締役1名の選任議案も並んだ。提案の理由は、制度変更そのものがガバナンスの実質的強化を自動的にもたらすものではなく、取締役会の構成が実態として経営の規律付けに資するかどうかが問われる、というものだった。株主提案の4議案はいずれも否決されている。

会社は、事業ポートフォリオの見直しを主導し資本構成とキャピタル・アロケーションを監督できる資本政策の専門家として、中村彰利氏を新任の独立社外取締役に選んだ。

筆者の見解

決める場から、見る場へ

監査役会をやめて監査等委員会を設置することの実質は、監査の形を変えることよりも、取締役会の顔ぶれを入れ替えられるようにすることにある。監査役は議決権を持たないが、監査等委員である取締役は取締役会の一員として票を持つ。社内7名・社外4名だった11名の取締役会が、社内6名・社外7名の13名になったのは、その仕組みを使って社外を一気に過半数へ乗せたからであった。業績の落ち込みと資本効率の低迷が続いた3年を経て、取締役会を事業の意思決定の場から経営の監督の場へ移す、という設計の変更だとみられる。

もっとも、過半数という数が監督の実効をただちに生むわけではない。株主提案の理由には、制度変更それ自体がガバナンスの強化を自動的にもたらすものではないという指摘が置かれ、監査等委員3名のうち2名が社外監査役からの横滑りである点も突かれている。会社の側も、移行の検討を進めながらその事実を公表しないまま社外取締役候補者の推薦を受けていた経緯がある。組み替えた器に何を盛るかは、ROE目標の達成と事業ポートフォリオの選別という、これから数年の運用で示されることになるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行の決議 2026年2月2日 取締役会で、監査等委員会設置会社への移行を第72期定時株主総会へ付議すると決議
移行の目的 取締役会の監督機能の強化と審議の充実 監督と執行の分離を進め、中長期の経営ビジョンの進捗を監督する体制とする
掲げた4点 全社視点の経営判断への注力ほか 中長期的な経営ビジョンを優先的に議論、監督機能の強化、監督と執行の分離
付議した議案 第2号議案から第8号議案 定款変更、取締役の選任、補欠の選任、報酬総額と株式報酬の決定
定款変更の効力 2026年6月25日の総会終結の時 監査等委員会の規定を新設し、監査役会と監査役の規定を削除した
取締役の員数 12名以内から14名以内へ うち監査等委員である取締役は4名以内と定めた
移行前の取締役会 11名(社内7名・社外4名) 監査役は4名で、うち社外監査役が2名
移行後の取締役会 13名(社内6名・社外7名) 独立社外取締役が過半数を占めるモニタリングボードとなる
監査等委員会 3名(社内1名・社外2名) 青木昭一、木田稔、小原路絵。木田と小原は社外監査役からの移行
補欠の監査等委員 中野雄介 第5号議案で選任された
新任の社外取締役 中村彰利 事業ポートフォリオの見直しを主導する資本政策の専門家として選任した
監査等委員の報酬 基本報酬を年額1億円以内 取締役(監査等委員を除く)の報酬総額とは別枠で決議した
取締役の任期 1年 2025年6月の第71期定時株主総会で2年から短縮した
指名報酬委員会 委員の過半数を独立社外取締役 議長も独立社外取締役の中から選定する体制とした
株主提案との関係 監査等委員である社外取締役1名の選任 2026年4月17日提出。移行を公表した後に、提案株主が別候補を求めた
議決の結果 会社提案の8議案をいずれも可決 株主提案の4議案は否決。移行に関する第2号議案は原案どおり承認された

出所:京セラ 第72期定時株主総会招集ご通知・決議ご通知/有価証券報告書 第72期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】

京セラ:取締役会と監査機関の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役うち社外監査役 備考
2021年12月 9342
2022年9月 9342
2023年12月 9342
2024年10月 10442 社外取締役が4名になり、独立役員の指定も4名へ増えた
2025年11月 11442 定款上の員数を20名から12名へ改め、任期を1年へ短縮した後
2026年7月 137 監査等委員である取締役3名(うち社外2名)を含む。監査役会は廃止した
取締役の人数と社外取締役の比率
取締役(名)うち社外取締役率(%)

出所:京セラ コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2021年12月24日〜2026年7月8日)

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出典・参考

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