ケミカル製品のUL認証不正(2021年・京セラの決断)

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論点発覚した認証不正をどこまで調べるか
京セラ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
半世紀近く続いた試験サンプルのすり替えと、外部委員会による全容の解明2020年秋、ケミカル事業部の若手社員が、ULのフォローアップ検査で指定とは異なる試験片を提出していると申告した。社内調査で5つの製品群に及ぶことが判明し、2021年1月8日に事実を公表、15日に外部の専門家で構成する特別調査委員会を設置した。

何をなぜ決めたか:半世紀近く続いた試験サンプルのすり替えと、外部委員会による全容の解明

概要

2020年秋、ケミカル事業部の若手社員が、ULのフォローアップ検査で指定とは異なる試験片を提出していると申告した。社内調査で5つの製品群に及ぶことが判明し、2021年1月8日に事実を公表、15日に外部の専門家で構成する特別調査委員会を設置した。

ULは2021年3月17日時点で465品番の登録について認証の取消措置を行い、委員会は5月13日に調査報告書を提出した。京セラは翌14日、報告書とともに是正措置及び再発防止策を公表している。

背景

ケミカル事業は、2002年8月に東芝ケミカルを子会社化して京セラケミカルとし、2016年4月に吸収合併してケミカル事業部とした経緯を持つ。不正が確認できた最も古い時期は不飽和ポリエステル樹脂成形材料の1972年で、東芝ケミカル時代に始まった行為が、社名と資本関係が変わったあとも引き継がれていた。

買収は社名と資本関係の変更にとどまり、業務手順は大きく変わっていなかった。セラミック製品を主に扱ってきた京セラにケミカル事業の経験がなく、日常業務は旧東芝ケミカル出身者に委ねる部分が多かった。

内容

委員会は2021年1月15日から5月13日まで13回開かれ、延べ81名・約127時間のヒアリングと、川崎工場・福島郡山工場・栃木真岡事業所での現地調査を延べ6回行った。不正が確認された品番は封止材379、プリミックス39、レジン21、フェノール11、絶縁ワニス8。いずれも過去2年間に製造実績のある品番を数えた。

2009年以降、代表取締役を含む複数の幹部層が不正を認識しながら黙認していた。ただし各製品担当へ不正を指示または命令した事実までは認められていない。ケミカル事業部以外で同種の事案が疑われたのは1件にとどまった。

含意

再発防止策の骨格は、事業部・事業本部の品質保証部・本社のCS推進部・グローバル統括監査部の4段階の砦を立て直すことに置かれた。UL認証は技術部門だけが扱い品質保証部門が関与していなかったため、3拠点の品質保証課に承認行為を担わせる体制へ2021年4月1日に改めている。黙認してきた役職者層は刷新し、人事処分を行うとした。

業績への影響は不明とされ、第67期の有価証券報告書にも損失の計上はない。ケミカル事業はその後、2026年1月に住友ベークライトへの譲渡が決議された。

いつ何が起きたか9件
当時の取締役15名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

  • 山口悟郎:会長
  • 谷本秀夫:社長執行役員
  • 触浩:執行役員専務
  • 伊達洋司:執行役員専務
  • 伊奈憲彦:執行役員常務
  • 厳島圭司:執行役員常務
  • 嘉野浩市:執行役員常務
  • 青木昭一:執行役員常務
  • 佐藤隆:執行役員常務
  • 神野純一:執行役員常務
  • ジョンサービス:取締役
  • ロバートウィスラー:取締役
  • 溝端浩人:取締役
  • 青山敦:取締役
  • 古家野晶子:取締役
考察:買収できなかったのは、事業ではなく仕事のやり方だった
考察

考察:買収できなかったのは、事業ではなく仕事のやり方だった

この一件が突きつけたのは、品質の不正というより、買収した事業をどこまで自分のものにできていたのかという問いであった。1972年に始まった行為は、東芝ケミカルから京セラケミカル、そしてケミカル事業部へと、資本関係が二度変わっても途切れなかった。セラミックを本業とする買い手にケミカルの技術を測る物差しがなく、日常の業務は旧経営の出身者に委ねられた。京セラフィロソフィもアメーバ経営も、この事業部の内側には届いていなかったことになる。再発防止策がPMIの見直しを一項目として掲げたのは、原因の所在を自らそう認めたということだろう。

もっとも、不正を止められなかった責任を仕組みだけに帰すのは早い。2009年以降だけを見ても代表取締役を含む幹部層が事実を知りながら是正しきれず、報告が京セラ本体へ正面から上がることもなかった。会社の存亡にかかわると認識していた取締役までいたのだから、分かっていなかったのではなく、引き受ける者がいなかったのである。半世紀近く続いた行為を顕在化させたのが、面談の席に着いた一人の若手社員だったという事実が、その落差を最もよく示していると推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

京セラ:本件不正が行われた品番数

京セラ:本件不正が行われた品番数
(品番)不正適正グレー備考
封止材(半導体用エポキシ封止材料)3792162020年度のケミカル事業売上の42%。不正の開始は1988年
プリミックス(不飽和ポリエステル樹脂成形材料)3911同2%。確認できた開始時期は1972年で、5製品群のうち最も古い
レジン(注形レジン)2120同13%。不正の開始は1986年
フェノール(フェノール樹脂成形材料)11023同1%。不正の開始は1990年代初め
絶縁ワニス8365同6%。不正の開始は1985年
出所:京セラ UL問題特別調査委員会 調査報告書(公表版・2021年5月13日)
出所:京セラ UL問題特別調査委員会 調査報告書(公表版・2021年5月13日)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
発覚の端緒2020年秋、若手社員からの相談・報告労務のフォローアップ面談での申告。これを受けて社内調査に入った
不正の内容指定とは異なる試験片をULへ提出フォローアップ検査で、量産品とは別に作ったサンプルにすり替えていた
事実の公表2021年1月8日
特別調査委員会の設置2021年1月15日事実関係の解明、原因究明と再発防止策の提言を目的に設置した
委員会の構成委員3名・調査補助者3名委員長は弁護士・公認不正検査士。委員は弁護士と東京工業大学名誉教授
調査体制事務局17名とフォレンジック調査事務局は社内弁護士2名を含むコンプライアンス部門の社員で構成した
調査期間2021年1月15日から5月13日委員会を合計13回開催した
調査の方法延べ81名・約127時間のヒアリング川崎工場・福島郡山工場・栃木真岡事業所での現地調査を延べ6回実施
認証の取消465品番2021年3月17日時点。封止材・レジン・フェノール・プリミックス・絶縁ワニス
取り消された規格UL94・UL746・UL1446登録品番が取消を受け、同じ製品群の適正な品番にも取消が及んだ
不正の期間1972年から30年以上東芝ケミカル、京セラケミカル、ケミカル事業部へと引き継がれていた
幹部層の関与認識しながら黙認2009年以降、代表取締役を含む複数の幹部層。指示・命令の事実は認められない
他事業部への広がり同種事案が疑われたのは1件プリント配線板のプレス温度の報告。悪質性が高いとまではいえないとされた
調査報告書の受領2021年5月13日起案権は委員会に専属し、提出前に会社へ開示する義務を負わない取り決め
是正措置の公表2021年5月14日報告書の公表版とともに、会社が作成した再発防止策を開示した
再発防止の骨格4段階の砦の見直しケミカル事業部、事業本部の品質保証部、CS推進部、グローバル統括監査部
組織体制の是正2021年4月1日実施郡山・川崎・真岡の品質保証課がUL認証とFUS対応の承認行為を担う
人事の措置役職者層の刷新と人事処分黙認してきた役職者を他事業部の者と入れ替え、公平・適切な処分を行う
業績への影響現時点では不明2021年5月14日の開示。第67期の有価証券報告書にも損失の計上はない
出所:京セラ 当社ケミカル製品における不適切対応に関する調査結果等のご報告(2021年5月14日)/有価証券報告書 第67期(2021年3月期)【事業等のリスク】
当時の取締役15名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

  • 山口悟郎:会長
  • 谷本秀夫:社長執行役員
  • 触浩:執行役員専務
  • 伊達洋司:執行役員専務
  • 伊奈憲彦:執行役員常務
  • 厳島圭司:執行役員常務
  • 嘉野浩市:執行役員常務
  • 青木昭一:執行役員常務
  • 佐藤隆:執行役員常務
  • 神野純一:執行役員常務
  • ジョンサービス:取締役
  • ロバートウィスラー:取締役
  • 溝端浩人:取締役
  • 青山敦:取締役
  • 古家野晶子:取締役
参考文献

参考文献

参考

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