フンザを115億円買収(2015年・MIXIの決断)

更新:
論点 主力依存の脱却を買収で図るか
MIXI:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
モンスト一本足からの脱却を狙ったチケット売買事業への参入と、その閉鎖

何をなぜ決めたか:モンスト一本足からの脱却を狙ったチケット売買事業への参入と、その閉鎖

概要

2015年3月31日、ミクシィはチケットフリマサービス「チケットキャンプ」を運営するフンザの全株式を取得した。取得原価は11,573百万円で、対価は現金11,521百万円とアドバイザリー費用等51百万円である。スマートフォンゲーム「モンスターストライク」に集中した収益構造から抜け出すための第一手であった。

背景

2014年3月期に上場来初の当期純損失227百万円を計上した経験が、単一サービスへの依存に対する警戒を残していた。モンスターストライクのヒットで2015年3月期の売上高は1,129億円、営業利益は527億円へ急伸し、期末の現金及び現金同等物は654億円まで積み上がっていた。その資金を次の収益源へ振り向ける余地が生まれていた。

内容

有価証券報告書は、SNS「mixi」で培いモンスターストライクを飛躍させたマーケティング・アプリ開発・カスタマーサポート等のノウハウを提供し、フンザの持つサービス開発力と融合させることで急成長している事業の拡大を加速させる、と結合の理由を記した。のれんは取得原価の配分が未了のため暫定的に11,934百万円で計上され、翌期に11,577百万円へ確定して8年間の均等償却となった。

含意

2017年12月にサイト上の表示をめぐり商標法違反などの容疑で捜査を受け、同月27日に事業終了を決定、2018年5月31日にサービスを終えた。のれん8,683百万円は全額償却され、うち7,597百万円が特別損失に立った。森田仁基氏は2018年6月22日に社長を辞任し、木村弘毅氏が後任となった。

いつ何が起きたか 11件
考察:分散を急いだ会社が、分散の作法を知るまで
考察

考察:分散を急いだ会社が、分散の作法を知るまで

この買収の判断そのものは、当時の材料から見れば理解しやすい。単一タイトルへの収益集中を解くという課題は明確で、対象事業は現に伸びており、資金も潤沢であった。第三者委員会も、買収判断に関する調査方法・意思決定プロセスに特段の問題はなかったとしている。躓いたのは買うかどうかの判断より、買った後に何を見ておくべきかという部分にあっただろう。同委員会の報告は、管理体制そのものに問題があったとは認められないとしつつ、その運用面で必ずしも十分な情報共有が図られていたとは言えない点、フンザの経営判断にレピュテーションリスクへの配慮が不足していた面は否めない点を挙げている。チケット2次流通は利用者の利便と興行主・演者の意向が正面から衝突しうる事業であり、収益の伸びだけを追っていると、その衝突が事業の存続条件であることに気づきにくい。

それでも、この失敗が残したものは小さくなかった。指摘を受けた同社は管理担当取締役の選任、社外取締役候補者の増員、統括管理本部と子会社管理の専門部署の設置、内部監査室の増員、監査役室の設置を進めた。その体制は2024年にチャリ・ロトで不正が発覚した際に再び試され、審査部の設置や取引先との面談記録の義務化といったさらなる手当てにつながった。事業を買収することと、取得した事業を統治することは別の能力にあたる——MIXIがスポーツや海外ベッティングへ買収を重ねる今日、2015年の115億円が残した問いは、なお現在形で残っているとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

MIXI:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
MIXI:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産合計総資産 備考
2010年3月期 −18317,372 無形固定資産は「その他」のみで、のれんの区分掲記はない
2011年3月期 −31020,917
2012年3月期 −31719,649
2013年3月期 17827720,083
2014年3月期 84696526,492
2015年3月期 14,19214,236104,178 フンザの暫定のれん11,934とミューズコーの1,891が加わった期
2016年3月期 10,25610,552165,039 フンザののれんが11,577に確定。8年償却の1期目
2017年3月期 8,6838,954176,974 のれん償却額1,679はすべてメディアプラットフォーム事業に帰属
2018年3月期 0391192,123 チケットキャンプの終了決定でのれん8,683を全額償却し残高が消えた
2019年3月期 3,1106,775192,955 チャリ・ロトの子会社化で再びのれんが立った
2020年3月期 11,93725,413202,814
出所:ミクシィ 有価証券報告書 第11〜22期(連結貸借対照表)【主要な経営指標等の推移】
出所:ミクシィ 有価証券報告書 第11〜22期(連結貸借対照表)【主要な経営指標等の推移】

MIXI:買収した事業が属したセグメントの推移

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
MIXI:買収した事業が属したセグメントの推移
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2015年3月期 10,6662,116 メディアプラットフォーム事業を新設した期。フンザの業績は含まれない
2016年3月期 13,4432,164 チケットキャンプが通年で寄与し売上高は前期比26.0%増
2017年3月期 14,4571,806 売上高は前期比7.5%増。のれん償却額1,679が利益の外に置かれている
2018年3月期 13,1461,638 事業終了の決定で売上高は前期比9.1%減。第20期の組替後の利益
2019年3月期 5,427△1,690 ライフスタイル事業へ改称。チケットキャンプの売上が消えた
2020年3月期 4,954△675
出所:ミクシィ 有価証券報告書 第16〜21期【セグメント情報等】(セグメント利益は減価償却費及びのれん償却額を考慮しない営業利益ベース)
出所:ミクシィ 有価証券報告書 第16〜21期【セグメント情報等】(セグメント利益は減価償却費及びのれん償却額を考慮しない営業利益ベース)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業の名称 株式会社フンザ 取得した事業はチケットフリマサービス「チケットキャンプ」の開発・運営
企業結合日 2015年3月31日 みなし取得日は2015年2月28日。当期の連結損益に同社の業績は含まれない
企業結合の法的形式 株式取得 結合後企業の名称は株式会社フンザ
取得した議決権比率 100.0% 議決権の全てを取得して連結子会社化したことが取得企業決定の根拠
取得の対価 現金11,521百万円
取得に直接要した費用 51百万円 アドバイザリー費用等
取得原価 11,573百万円 うち未払分49百万円。取得による支出は純額10,841百万円
のれんの金額(暫定) 11,934百万円 取得原価の配分が未了のため暫定値。償却期間も未定としていた
のれんの金額(確定) 11,577百万円 2016年3月期に確定。8年間の均等償却
のれん以外の無形固定資産 商標権290百万円/顧客関係資産240百万円 商標権は5年、顧客関係資産は10か月の均等償却
連結開始時の資産・負債 流動資産690百万円/流動負債1,051百万円 連結キャッシュ・フロー計算書注記。固定資産の計上はない
業績に与える影響(通期換算) 記載なし 影響の概算額に重要性が乏しいとして記載を省略している
のれんの最終処理 2018年3月期に8,683百万円を全額償却 うち7,597百万円は特別損失。無形固定資産の減損損失131百万円も計上
出所:ミクシィ 有価証券報告書 第16期(2015年3月期)・第17期(2016年3月期)【企業結合等関係】
出所:ミクシィ 有価証券報告書 第16期(2015年3月期)・第17期(2016年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • ミクシィ 適時開示「チケットフリマサービスを運営する株式会社フンザの全株式を取得」
  • ミクシィ 有価証券報告書「第16期(2015年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • ミクシィ 有価証券報告書「第17期(2016年3月期)【企業結合等関係】」
  • ミクシィ 有価証券報告書「第19期(2018年3月期)【経営環境及び対処すべき課題】【減損損失】【のれん償却額】」
  • ミクシィ 有価証券報告書「第16〜21期【セグメント情報等】」

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