この買収の判断そのものは、当時の材料から見れば理解しやすい。単一タイトルへの収益集中を解くという課題は明確で、対象事業は現に伸びており、資金も潤沢であった。第三者委員会も、買収判断に関する調査方法・意思決定プロセスに特段の問題はなかったとしている。躓いたのは買うかどうかの判断より、買った後に何を見ておくべきかという部分にあっただろう。同委員会の報告は、管理体制そのものに問題があったとは認められないとしつつ、その運用面で必ずしも十分な情報共有が図られていたとは言えない点、フンザの経営判断にレピュテーションリスクへの配慮が不足していた面は否めない点を挙げている。チケット2次流通は利用者の利便と興行主・演者の意向が正面から衝突しうる事業であり、収益の伸びだけを追っていると、その衝突が事業の存続条件であることに気づきにくい。
それでも、この失敗が残したものは小さくなかった。指摘を受けた同社は管理担当取締役の選任、社外取締役候補者の増員、統括管理本部と子会社管理の専門部署の設置、内部監査室の増員、監査役室の設置を進めた。その体制は2024年にチャリ・ロトで不正が発覚した際に再び試され、審査部の設置や取引先との面談記録の義務化といったさらなる手当てにつながった。事業を買収することと、取得した事業を統治することは別の能力にあたる——MIXIがスポーツや海外ベッティングへ買収を重ねる今日、2015年の115億円が残した問いは、なお現在形で残っているとみられる。