ブラザー工業監査等委員会設置会社へ移行:監督の担い手を取締役会の内側へ移し、執行へ権限を委ねる機関設計の組み替え

更新:

時期 2026年6月
当時の社長 池田和史
論点 事業ポートフォリオの変革を支える機関設計
概要

2026年6月24日に開いた第134回定時株主総会の決議により、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員が取締役会の構成員として議決権を持つことで取締役会の監督機能を一層強化し、経営上の重要な事項について多角的な審議を行う体制とした。

併せて取締役会から執行部門への権限委任により、迅速・果断な業務執行の意思決定を可能とする体制整備を進める。移行前の取締役は10名でうち社外は5名だったが、移行後は取締役12名のうち7名を社外取締役が占める。

背景

2025年3月に策定した中期戦略「CS B2027」は、最終年度の2027年度に売上収益1兆円、営業利益1,000億円、ROE10%、産業用領域の売上比率40%を掲げ、3年間でM&A・アライアンスを中心とした2,000億円規模の成長投資を予定する。機関設計の組み替えは、この事業ポートフォリオの変革を後押しするためのガバナンス改革にあたる。

初年度にあたる2026年3月期は、株式公開買付けによるMUTOHホールディングスの連結子会社化と、ネットワーク・アンド・コンテンツ事業の非継続事業への分類が重なった期である。

内容

定款上の取締役の員数は11名以内から16名以内へ広がり、監査等委員でない取締役を11名以内、監査等委員である取締役を5名以内と定める。任期は1年のままである。監査等委員会は5名で構成し、うち常勤が2名、社外が3名で、委員長は社内取締役が務める。監査役室に代えて監査等委員会室を置き、専任スタッフ3名を配置した。

取締役候補者は任意の指名委員会の審査を経て取締役会が決めるが、監査等委員である取締役の指名には監査等委員会の同意を要する。監査等委員である取締役の報酬は固定金銭報酬である基本報酬のみとした。

含意

2025年度の取締役会は13回開かれ、決算関連や中期戦略の進捗と並んで「機関設計変更検討」を審議事項に挙げている。任意の指名委員会は7回開き、次年度の執行役員・取締役・監査等委員体制等を検討した。報酬委員会も7回開き、新中期戦略と機関設計変更に伴う役員報酬の改定を審議している。

任意の指名委員会と報酬委員会は移行後も残った。委員は監査等委員でない全社外取締役と代表取締役社長で構成され、委員長はいずれも社外取締役が務める。

筆者の見解

議決権の側へ移した監督

監査等委員会設置会社への移行は、監督の担い手を取締役会の外から内側へ移す組み替えであった。監査役は重要な会議に出席して意見を述べても、取締役会の議決には加われない。監査等委員はその5名が取締役として票を持ち、社外取締役7名と合わせれば12名の取締役会で独立した立場が過半を占める構図になる。多角的な審議という言葉が指しているのはこの議決権の移動で、監督の強化は員数の増減ではなく、誰が決議に参加するかという設計の問題として片づけられたとみられる。

もっとも、この移行がねらう果実は取締役会の側よりも執行の側にある。権限委任によって個別案件の決裁を執行部門へ下ろせば、取締役会は戦略と監督に時間を回せる。2027年度に営業利益1,000億円を掲げ、3年間で2,000億円規模の成長投資を予定する会社にとって、買収と事業譲渡の判断を速める仕組みは戦略の前提そのものである。委任の範囲がどこまで広がり、取締役会に何が残るのかは、次の期の開示を待つほかない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行を決めた総会 2026年6月24日 第134回定時株主総会。この決議に基づき監査等委員会設置会社へ移行した
移行前の機関設計 監査役会設置会社 取締役10名(うち社外5名)・監査役5名(うち社外3名)。2026年6月22日現在
移行後の機関設計 監査等委員会設置会社 取締役12名のうち社外は7名。監査等委員は5名で常勤2名・社外3名
移行の目的 取締役会の監督機能の強化 監査等委員が取締役会の構成員として議決権を持ち、重要事項を多角的に審議する
併せて進める体制整備 取締役会から執行部門への権限委任 迅速・果断な業務執行の意思決定を可能とし、健全なリスクテイクを促進する
定款上の取締役の員数 16名以内 監査等委員でない取締役11名以内、監査等委員である取締役5名以内。移行前は11名以内
取締役の任期 1年 定款の定め。移行の前後で変わっていない
取締役候補者の指名手続 指名委員会の審査を経て取締役会が決定 監査等委員である取締役の指名には、あわせて監査等委員会の同意を要する
監査等委員の報酬 固定金銭報酬である基本報酬のみ 監査等委員会が定める監査等委員会報酬規則による。株式報酬の対象としない
監査等委員会の補助組織 監査等委員会室(専任スタッフ3名) 執行部門から一定の独立性を確保している。移行前は監査役室を置いていた
取締役会の開催(2025年度) 13回 審議事項に「機関設計変更検討」を挙げている
指名委員会の開催(2025年度) 7回 次年度の執行役員・取締役・監査等委員体制等を検討した
報酬委員会の開催(2025年度) 7回 新中期戦略と機関設計変更に伴う役員報酬の改定を審議した
任意の指名・報酬委員会 移行後も存置 委員は監査等委員でない全社外取締役と代表取締役社長。委員長は社外取締役

出所:ブラザー工業 有価証券報告書 第134期(2026年3月期)【サステナビリティに関する考え方及び取組】【コーポレート・ガバナンスの状況等】/コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月25日)

ブラザー工業:取締役会と監査機関の員数

(名) 取締役(監査等委員を除く)うち社外監査役または監査等委員うち社外 備考
2022年3月期 11553
2023年3月期 11553
2024年3月期 11553
2025年3月期 11553
2026年3月期 10553 監査役会設置会社としての最後の期。2026年6月22日現在の員数
2027年3月期 7453 2026年6月24日の総会で移行。取締役は計12名で社外7名。6月25日現在
2028年3月期
2029年3月期
2030年3月期
2031年3月期
2032年3月期

出所:ブラザー工業 有価証券報告書 第130〜134期【コーポレート・ガバナンスの状況等】(各期の有価証券報告書提出日現在) / ブラザー工業 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月25日)

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出典・参考
  • ブラザー工業 有価証券報告書「第134期(2026年3月期)【サステナビリティに関する考え方及び取組】」
  • ブラザー工業 有価証券報告書「第134期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • ブラザー工業 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2026年6月25日更新」
  • ブラザー工業 有価証券報告書「第130〜133期(2022年3月期〜2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」

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