SUBARU監査等委員会設置会社への移行:重要な業務執行の決定を取締役へ委ね、取締役会の過半数を社外取締役とする選択

更新:

時期 2026年6月
当時の社長 大崎篤
論点 監督機能の強化と意思決定の迅速化の両立
概要

2026年6月24日開催の第95期定時株主総会で第2号議案「定款一部変更の件」が承認可決され、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。取締役会の構成員は8名から11名となり、うち4名が監査等委員である取締役である。

社外取締役は3名から6名へ増え、取締役会の過半数を占めた。監査等委員4名のうち3名が社外取締役で、常勤の監査等委員を1名置いている。定款の員数枠は取締役15名以内で、うち監査等委員である取締役は5名以内とした。

背景

自動車メーカーとしては規模の大きくない同社は、限られた経営資源の選択と集中によって差別化を図るビジネスモデルを取る。移行前は企業統治体制として監査役会設置会社を選び、取締役会の3分の1を独立社外取締役とすることで経営のモニタリングの実効性を高めてきた。

2025年度はガバナンス・役員指名会議を9回開催し、中長期的な企業価値向上に資する選択すべき機関設計と、機関設計変更後の重要な業務執行の決定権限の委譲を含む取締役会のあり方を審議している。取締役会の実効性評価でも、移行を見据えたアジェンダ設定の高度化と、グループ全体を俯瞰したモニタリングのあり方が課題として残されていた。

内容

法令で特に監査等委員会設置会社に認められている範囲で、取締役会から取締役へ重要な業務執行の決定を委任した。あわせて取締役会規程で自己の決議事項を定め、決議事項に該当しない事項の決定などは執行役員へ委任し、経営の意思決定・監督機能と業務執行機能を区分している。

監査等委員会の職務を補助する監査等委員会室を設け、専任の使用人補助スタッフを配置した。スタッフの人事は監査等委員会の同意を得て実施する。同日の取締役会決議で、ガバナンス・役員指名会議をガバナンス・役員指名委員会に、役員報酬会議を役員報酬委員会にそれぞれ改称し、両委員会とも社外取締役4名・社内取締役2名の6名構成、委員長は社外取締役の山下茂氏が務める。

含意

取締役会による監督機能と業務執行機能の区分を、制度の面から明確にした移行である。移行前の社外役員は取締役3名・監査役2名に分かれ、監査役は取締役会で議決権を持たなかった。移行後は社外6名がいずれも取締役として議決権を持ち、監査を担う3名もその中に入る。

常勤監査役であった庄司仁也氏は常勤の監査等委員である取締役となった。取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬枠は12億円以内、うち社外取締役分2億円以内で、総会終結時点の員数は7名である。取締役会の議長は代表取締役会長の早田文昭氏が務める。

筆者の見解

議題の線引きを引き直す

この移行は監査の器を取り替えた話ではなく、取締役会が何を決める場なのかを引き直した判断だったとみられる。移行前の取締役会は重要な業務執行の決定と監督を同じ場で担い、社外は3分の1にとどまっていた。移行後は法令が認める範囲で重要な業務執行の決定を取締役へ委ね、11名のうち6名を社外が占める。取締役会に残るのは経営の根幹にかかわる意思決定と監督で、限られた審議の時間をそこへ寄せる構えである。実効性評価が繰り返し突いてきたのは「取締役会で何を議論すべきか」というアジェンダ設定の問題で、機関設計の変更はその答えの一つとして選ばれたのだろう。

もっとも、権限を委ねた先が見えにくくなる危うさは残る。取締役会の決議事項から外れた事項は取締役と執行役員へ渡され、取締役会が握るのは付議基準の線引きそのものになる。その線をどこに引くかは移行後の運用に委ねられており、付議基準の運用や自由討議の場の拡充は実効性評価の論点として持ち越されたままである。監督機能が強まったかどうかは、社外が過半を占めることになった取締役会が何を議題に載せ、どこまで踏み込んだかで測られることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
機関設計の審議 2025年度に9回 ガバナンス・役員指名会議。権限委譲後の取締役会のあり方まで含めて議論した
定款一部変更の決議 2026年6月24日 第95期定時株主総会の第2号議案。承認可決により監査等委員会設置会社へ移行
移行前の組織形態 監査役会設置会社 取締役会8名のうち社外3名、監査役会4名のうち社外2名
移行後の取締役会 11名 うち社外取締役6名で過半数。監査等委員である取締役4名を含む
監査等委員会 4名 うち社外3名、常勤1名。委員長は社内取締役が務める
定款の員数枠 取締役15名以内 うち監査等委員である取締役は5名以内。総枠15名は移行前から変えていない
重要な業務執行の決定 取締役へ委任 法令で特に監査等委員会設置会社に認められている範囲で委任した
執行役員への委任 取締役会規程の決議事項以外 決議事項に該当しない事項の決定などを委任し、意思決定・監督と執行を区分
監査等委員会室 専任スタッフを配置 監査等委員会の指揮命令に従い、人事は監査等委員会の同意を得て実施する
任意の委員会の改称 2026年6月24日 ガバナンス・役員指名会議と役員報酬会議を、それぞれ委員会へ改称した
両委員会の構成 各6名 社外取締役4名・社内取締役2名。委員長は社外取締役の山下茂氏
取締役の報酬枠 12億円以内 監査等委員である取締役を除く。うち社外取締役分2億円以内、員数は7名
譲渡制限付株式報酬 年額2億円が上限 上記の報酬枠の範囲内。2026年6月24日の定時株主総会で決議した

出所:SUBARU 有価証券報告書 第95期(2026年3月期)【コーポレートガバナンスの状況等】・コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月23日)

SUBARU:取締役会と監査機関の員数

(名) 取締役うち社外取締役監査役・監査等委員うち社外 備考
2021年3月期 9342
2022年3月期 9353 社外監査役を1名増やした期。役員に占める女性の比率は29%
2023年3月期 8342
2024年3月期 8342
2025年3月期 8342
2026年3月期 8342 有価証券報告書提出日現在。移行の決議は2026年6月24日の定時株主総会
2027年3月期 11643 監査等委員である取締役4名は取締役11名の内数。社外6名で過半数となった
2028年3月期
2029年3月期
2030年3月期
2031年3月期
取締役会の員数と社外取締役の比率
社内取締役(名)うち社外取締役(名)うち社外取締役率(%)

出所:SUBARU 有価証券報告書 第90〜95期(役員の状況・コーポレートガバナンスの状況等) / SUBARU コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年6月23日)

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出典・参考
  • SUBARU 有価証券報告書「第95期(2026年3月期)【コーポレートガバナンスの状況等】」
  • SUBARU 有価証券報告書「第95期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • SUBARU 有価証券報告書「第95期(2026年3月期)【役員の状況】」
  • SUBARU コーポレート・ガバナンスに関する報告書「移行後の機関構成・組織運営等に係る事項」
  • SUBARU コーポレート・ガバナンスに関する報告書「移行前の機関構成・組織運営等に係る事項」

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