東京海上ホールディングス 政策保有株ゼロ化 2029年度末までに上場株の残高をなくすと決め、取引関係を株式で結ぶ慣行を捨てた
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2024年5月20日の取締役会で、政策投資として保有する株式を2029年度末までにゼロにすると決めた。対象は上場株式で、非上場株式と資本業務提携による出資等は除く。2024年3月末におよそ3.5兆円あった保有時価を、2024年度に9,224億円、2025年度に7,456億円削減した。損害保険業が長く抱えてきた持ち合いを、企業向け保険の価格調整問題を触媒に手放す資本政策の転換である。
- 背景
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損保各社は取引先企業の株式を政策的に持ち、その企業向け保険の取引と関係を結んできた。東京海上日動は、独占禁止法に抵触すると考えられる行為とその背景にある態勢上の問題が認められたとして、2023年12月26日付で金融庁から保険業法に基づく業務改善命令を受け、2024年2月29日付で業務改善計画書を提出した。株式の持ち合いは、適正な競争を阻害してきた業界慣行の一部とみなされた。
- 内容
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2024年度からの3年間で2024年3月末の保有時価を半減させ、国際財務報告基準へ移行後の2026年度末には連結純資産対比20%程度まで下げる計画を置いた。東京海上日動が持つ非上場株式以外の株式は、2024年3月末の901銘柄・3兆5,615億円から2026年3月末に563銘柄・1兆9,217億円まで減った。売却まで一時的に保有する銘柄も、保有目的を純投資目的へ振り替えることはしない。
- 含意
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縮減ではなく、持たないという到達点を業界に先んじて掲げ、外からの圧力を資本配分の組み替えへ転じた。売却代金は特定のセクターへ集中させず、リスクリターンを勘案して機動的に投じる構えを取る。株式を手放したあとで取引先との関係をどう保ち、価格と商品で競争優位をどう築くかという問いが残る。
いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
持ち合いを解いた先の損保
この判断の芯は、損害保険業が長く抱えてきた政策保有株という慣行を、外からの圧力を触媒にして手放す側へ大きく舵を切った点にある。企業向け保険の価格調整という不祥事と、適正な競争を阻害してきた業界慣行への指摘が、皮肉にも積年の持ち合いを解く後押しになった。縮減ではなく、持たないという到達点を業界に先んじて掲げたことの意味は小さくない。ただ、売却益は当面の利益を厚くする一方で、一度きりの果実でもある。株式を手放した先で、取引先との関係をどう保つかという別の問いも残る。
決議から2年で、東京海上日動の上場株は901銘柄から563銘柄へ減った。計画を上回る速さだが、2030年3月末という期限までには、株価の変動、投資先企業との対話、売却益の一過性といった不確かさが横たわる。政策株を持たない損害保険会社が、価格と商品の力だけでどう競争優位を確立するのか——持ち合いという古い接着剤を剥がしたあとの損保の姿は、まだ像を結んでいない。積年の慣行を資本政策として組み替えるこの選択が、業界の競争のかたちをどこまで変えるかは、これからの数年が答えることになる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
ゼロ化方針の条件
ゼロ化方針の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 決議日 | 2024年5月20日 | 同日の2023年度決算電話会議でゼロ化の方針を正式に公表した |
| 決めたこと | 政策投資株式の残高をゼロにする | リスクポートフォリオを見直し、社会課題解決や成長分野等へ資本を振り向けるため |
| 対象 | 上場株式 | 非上場株式および資本業務提携による出資等は除く。非上場株式は225億円程度 |
| 期限 | 2029年度末 | 2030年3月末にあたる |
| 起点の保有時価 | 約3.5兆円 | 2024年3月末時点。全て売却するとリスク量は1兆円強が解放される |
| 起点の銘柄数 | 901銘柄 | 東京海上日動が保有する非上場株式以外の株式(2024年3月末) |
| 中間目標 | 3年間で保有時価を半減 | 2024年度から2026年度まで。2025年度までに簿価ベースで4割の削減が進む見込み |
| 2026年度末の水準 | 連結純資産対比20%程度 | 国際財務報告基準ベース。2026年3月末の実績は24.5% |
| 2024年度の削減額 | 9,224億円 | 年初計画6,000億円を上回った。2025年3月末は日本基準で連結純資産対比43.7% |
| 2025年度の削減額 | 7,456億円 | 東京海上日動は上場株463銘柄を売却価額7,422億円で手放した |
| 売却代金の使途 | 成長分野等への機動的な資本の振り向け | 特定のセクターへ集中させず、リスクリターンを勘案して投じる |
| 純投資への振替 | 行わない | 売却まで一時的に保有する場合も保有目的を純投資目的へ変更しない |
出所:東京海上ホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)・第24期(2026年3月期)【株式の保有状況】 / 東京海上ホールディングス 2023年度決算電話会議 質疑応答要旨(2024年5月20日)
純投資目的以外の投資株式の残高
東京海上ホールディングス:純投資目的以外の投資株式の残高
| (百万円) | 非上場株式以外の株式 | 非上場株式 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2020年3月期 | 1,952,468 | 30,793 | |
| 2021年3月期 | 2,490,013 | 26,827 | |
| 2022年3月期 | 2,538,358 | 32,921 | |
| 2023年3月期 | 2,415,766 | 40,250 | |
| 2024年3月期 | 3,561,508 | 44,090 | この期末の保有時価 約3.5兆円がゼロ化の起点 |
| 2025年3月期 | 2,165,316 | 43,885 | 2024年5月に決議。2024年度の削減額は9,224億円 |
| 2026年3月期 | 1,921,772 | 42,571 | 2025年度の削減額は7,456億円。国際財務報告基準へ移行 |
出所:東京海上ホールディングス 有価証券報告書 第18〜24期(2020年3月期〜2026年3月期)【株式の保有状況】。計数は最大保有会社である東京海上日動火災保険のもの
純投資目的以外の投資株式の銘柄数
東京海上ホールディングス:純投資目的以外の投資株式の銘柄数
| (銘柄) | 非上場株式以外の株式 | 非上場株式 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2020年3月期 | 1,102 | 803 | |
| 2021年3月期 | 1,096 | 812 | |
| 2022年3月期 | 1,059 | 811 | |
| 2023年3月期 | 1,003 | 789 | |
| 2024年3月期 | 901 | 779 | |
| 2025年3月期 | 691 | 740 | 決議の年度。1年で210銘柄が減った |
| 2026年3月期 | 563 | 681 | 2025年度に463銘柄を売却価額7,422億円で手放した |
出所:東京海上ホールディングス 有価証券報告書 第18〜24期(2020年3月期〜2026年3月期)【株式の保有状況】。計数は最大保有会社である東京海上日動火災保険のもの
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参考文献
- 東京海上ホールディングス 有価証券報告書 第18〜24期(2020年3月期〜2026年3月期)【株式の保有状況】
- 東京海上ホールディングス 2023年度決算電話会議 質疑応答要旨(2024年5月20日)
- 東京海上ホールディングス 2024年度決算電話会議 質疑応答要旨(2025年5月20日)
- 東京海上ホールディングス 決算電話会議 質疑応答要旨「2023年度決算電話会議 質疑応答要旨」
- 東京海上ホールディングス 決算電話会議 質疑応答要旨「2024年度決算電話会議 質疑応答要旨」
- 東京海上ホールディングス 有価証券報告書「有価証券報告書 第23期(2025年3月期)」
- 東京海上ホールディングス 有価証券報告書「有価証券報告書 第24期(2026年3月期)」
- 東京海上ホールディングス 有価証券報告書「有価証券報告書 第22期(2024年3月期)」