TABAYAホールディングスへの移行(2026年・ユナイテッドアローズの決断)

更新:
論点 単一の事業会社のまま領域を広げるか
ユナイテッドアローズ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
全事業の子会社承継と、M&Aを含む非アパレル進出への備え

何をなぜ決めたか:全事業の子会社承継と、M&Aを含む非アパレル進出への備え

概要

2026年5月11日、ユナイテッドアローズは取締役会で、4月1日に設立した全額出資の分割準備会社「株式会社ユナイテッドアローズ」へ、グループ管理とグループ運営を除く一切の事業を吸収分割で承継させる契約の締結を決議した。効力発生日は2026年10月1日で、同日付で分割会社は株式会社TABAYAホールディングスへ商号を改め、持株会社として上場を維持する。

6月22日の第37回定時株主総会は、吸収分割契約を99.41%、商号と事業目的を改める定款変更を99.39%の賛成で承認した。

背景

2023年5月に掲げた長期ビジョン2032は、高感度・高付加価値ライフスタイル提供グループを到達点に置き、ファッションを軸にした既存領域の拡大に加えてアパレル以外への進出を求めた。ところが当時のグループは衣料品小売の単一セグメントで、2026年3月期の単体売上高154,109百万円が連結の93.6%を占め、本体がほぼ事業そのものだった。

移行の前に顔ぶれも組み替えた。2024年10月に靴磨きのBOOT BLACK JAPANを取得し、2026年1月にTELMAを設立、3月2日には低価格帯の子会社コーエンの全株式をジーイエットへ譲渡している。2月5日に持株会社化の検討開始を決議した。

内容

承継会社は対価として普通株式2,000株を発行して分割会社に割り当て、分割会社の資本金3,030百万円は動かない。承継する債務は併存的債務引受による。分割する部門の2026年3月期売上高154,109百万円は単体実績の100%にあたり、3月末の帳簿価額で資産65,556百万円、負債28,576百万円を移す。分割会社の総資産71,175百万円の9割強が事業会社へ渡る計算になる。

TABAYAはユナイテッドアローズを日本語に意訳した語に由来し、松崎善則社長は株主総会で、企業名と事業の名称が同じことから生じていた 『「方向性の画一化」という課題を克服できる』 を挙げた。

含意

持株会社にはM&Aを含む多角化の推進、グループ経営の高度化、ガバナンスの強化、子会社経営の自立性の向上の4つを担わせ、事業会社には既存事業の成長と領域の拡大を委ねる。2026年5月には長期目標の売上高を2,500億円から3,000億円へ引き上げ、うち500億円以上を新規アパレル・アパレル派生・アパレル以外で積む絵を示した。

ただし中期経営計画2026-2028の売上高1,850〜1,950億円について、決算説明会では 『中期経営計画の財務目標は既存事業を中心とした成長を前提としており、現段階でM&Aの効果は織り込んでいません』 と答えている。持株会社の体制が先に整い、その下に加える案件はまだ公表されていない。

いつ何が起きたか 9件
当時の取締役 7名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

考察:事業そのものだった本体を持株会社へ
考察

考察:事業そのものだった本体を持株会社へ

この持株会社化は、組織図の上書きというより、会社の名前と事業の名前を切り離す決断だったと読める。2026年3月期の単体売上高は連結の93.6%、従業員は98.0%が単体に在籍しており、本体がほぼ事業そのものだった。その全事業を同じ名前の子会社へ移し、上場会社には社名の日本語意訳に由来するTABAYAの名を与えた。コーエンを手放し、BOOT BLACK JAPANとTELMAを迎え入れた直後の移行であり、高価格帯への集中と非アパレルへの進出を、一つのブランド名の下では進めにくいと判断したのだろう。

もっとも、体制が整っても、その下に加わる事業はまだ見えない。中期経営計画2026-2028の財務目標はM&Aを織り込まず、株主総会でも対象領域や体制は検討段階にあると答えている。長期目標の3,000億円のうち500億円以上をアパレル以外などで積むなら、2026年3月期の連結売上高1,646億円に対して大きな上積みが要る。持株会社という形が意味を持つかどうかは、飲食や宿泊のような体験価値の領域で最初の案件をどう選ぶかにかかっていると思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る 3表

数字で見る

図と表

ユナイテッドアローズ:単体売上高と連結に占める比率

単体売上高(百万円)単体売上高率(%)

2026年3月期の単体売上高は連結の93.6%。この全額を事業会社へ移す

ユナイテッドアローズ:単体売上高と連結に占める比率
(百万円) 単体売上高連結売上高 備考
2022年3月期 107,482118,384
2023年3月期 118,434130,135
2024年3月期 123,685134,269
2025年3月期 139,355150,910
2026年3月期 154,109164,603 単体売上高の全額が分割する部門の売上高にあたる
出所:ユナイテッドアローズ 有価証券報告書 第37期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:ユナイテッドアローズ 有価証券報告書 第37期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】

ユナイテッドアローズ:単体の事業本部別売上高

トレンドマーケット(百万円)ミッド・トレンドマーケット(百万円)

ミッド・トレンドは4年で1.5倍の45,775百万円。トレンドの伸びを上回る

ユナイテッドアローズ:単体の事業本部別売上高
(百万円) トレンドマーケットミッド・トレンドマーケットビジネスユニット計 備考
2022年3月期 59,48230,51790,000
2023年3月期 65,06333,72698,790
2024年3月期 70,03934,670104,709
2025年3月期 77,21140,886118,098
2026年3月期 83,97045,775129,746 アウトレット等のその他27,226は含まない
出所:ユナイテッドアローズ ファクトブック(2026年3月期)「単体 営業の概況 事業本部別 売上推移」
出所:ユナイテッドアローズ ファクトブック(2026年3月期)「単体 営業の概況 事業本部別 売上推移」

ユナイテッドアローズ:単体と連結の従業員数

単体従業員数(人)単体従業員数率(%)

コーエン譲渡で2026年3月期は従業員の98.0%が単体に在籍

ユナイテッドアローズ:単体と連結の従業員数
(人) 単体従業員数連結従業員数 備考
2022年3月期 3,8264,213
2023年3月期 3,5753,915
2024年3月期 3,6463,980
2025年3月期 3,7504,096
2026年3月期 3,8253,904 コーエンの譲渡で連結から外れ、単体の比率が上がった
出所:ユナイテッドアローズ 有価証券報告書 第37期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】(就業人員。アルバイトを除く)
出所:ユナイテッドアローズ 有価証券報告書 第37期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】(就業人員。アルバイトを除く)
当時の取締役 7名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

免責事項およびポリシー