ダイエーの東西2分割と食品スーパーの再編

完全子会社化から10年、赤字の名門をどう作り替えるか——首都圏と近畿へ分けたイオンの再編

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時期 2025年12月
意思決定者 吉田昭夫 イオン 社長
論点 都市部食品スーパーの再編と収益性
概要
2025年12月22日、イオンは傘下ダイエーを首都圏事業と近畿事業に分割する再編を公表した。2026年3月1日、首都圏事業はマックスバリュ関東・イオンマーケットと統合してユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)傘下の新会社「イオンフードスタイル」となり、近畿事業は食品スーパーの光洋を吸収合併して新生「ダイエー」として再出発した。
背景
ダイエーは2015年にイオンの完全子会社となった後も安定して利益を出せず、2025年2月期まで3期連続の営業赤字を計上していた。一方で都市部の好立地には店舗が多く残り、東京都内に42店舗、神戸から大阪北部の阪神地域に113店舗を抱えていた。吉田昭夫社長は2020年の就任以来「小売りの再編」を掲げてきたが、首都圏と近畿は子会社の再編が遅れていた。
内容
首都圏では新会社イオンフードスタイルがUSMH傘下に入り、USMHの営業収益は1兆円を超えて食品スーパー業界の最大手に躍り出た。ダイエーの店舗を改装して屋号を統一し、2030年度までに約340億円を投じる計画を掲げた。近畿では新生ダイエーを地域の中核企業と位置づけ、光洋との統合で187店舗・売上高およそ3000億円の体制とした。
含意
全国区の看板だったダイエーを地域ごとに分けて組み替え、都市部の立地価値を軸とする食品スーパーへ作り替える再編である。ただしUSMHもイオンの食品スーパー事業も営業利益率は低く、仕入れや本社機能の統合はこれからで、収益改善の成否は当面見えにくい。
筆者の見解

名門の看板を、地域の会社に入れ替える

この再編は、2013年から2015年にかけてイオンがダイエーを完全子会社化した一手の、続きに置かれている。あのとき屋号ごと吸収された「流通革命」の雄は、それでも会社としては残り、赤字を抱えたまま10年を過ごした。今回、その会社そのものが東西に切り分けられ、首都圏はUSMHの一員に、近畿は地域の旗艦にと、別々の会社へ入れ替えられた。企業としてのダイエーの輪郭は、ここでいっそう薄まったとみることができる。

全国を一つの看板で覆う時代の名門を、地域ごとに束ね直して立地の価値で稼ぐ会社へ作り替える。それが吉田社長の「小売りの再編」の一つの到達点といえる。ただし新しい二社は、いずれも利益率の低い食品スーパーの寄せ集めでもある。規模を広げる作業と、その規模を利益に変える作業は別物で、後者はまだ始まったばかりとみられる。ダイエーの東西分割が再編の完成なのか、それとも次の課題の入り口なのかは、統合の実りが見えてくるこれからにかかっている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

完全子会社化から10年、赤字が続いたダイエー

ダイエーは、戦後日本の「流通革命」を先導した総合スーパーだった。2000年代初めの経営危機を経て、2013年にイオンの連結子会社となり、2015年1月にはイオンの完全子会社となって経営再建の道を探ってきた。しかしその後も安定して利益を出せず、2025年2月期まで3期連続の営業赤字を計上していた。かつて小売業の頂点に立った名門は、イオンの傘下に入って10年を数えてもなお、単独では黒字を積み上げられずにいた[1][2]

とはいえ、ダイエーには都市部の好立地に多くの店舗が残っていた。2025年12月の時点でも、東京都内に42店舗、神戸市から大阪北部にかけての阪神地域を中心に113店舗を保有していた。首都圏と近畿の両地域でこれだけの店舗網を持つ食品スーパーは業界を見渡しても多くない。赤字の会社でありながら、立地という資産では優位に立てるという読みが、イオンの側にはあった[3]

「小売りの再編」路線と、遅れていた首都圏・近畿

イオンは度重ねるM&Aで拡大を続けてきた。2022年に中国・四国最大手のフジを傘下のマックスバリュ西日本と統合し、2023年にはいなげやを買収してUSMHと統合させ、2025年2月期には連結営業収益が初めて10兆円を超えた。2020年に就任した吉田昭夫社長は「小売りの再編」を掲げ、地域単位でスーパー事業を組み替えてコストを削り、収益性の改善を進めてきた。買収で膨らんだ子会社群を、地域ごとに束ね直す作業だった[4][5]

その再編路線の中で、首都圏と近畿だけが手つかずに近いまま残っていた。首都圏にはマックスバリュ関東やイオンマーケットなど複数の食品スーパーが並び立ち、近畿にはグループをまとめる中核会社がなかった。赤字のダイエーをどう扱うかは、この二つの空白をどう埋めるかという問いと結び付いていた。ダイエーの店舗網は、そのまま両地域の再編を動かすための資産でもあった[6]

決断

東西2分割という再編

2025年12月22日、イオンは食品スーパーの子会社再編を柱とする成長戦略を公表した。その核が、ダイエーの分割である。2026年3月にダイエーを首都圏事業と近畿事業の二つに分け、首都圏事業は首都圏のイオン系食品スーパーの持株会社であるUSMH傘下に入れる。これによりUSMHの営業収益は1兆円を超え、食品スーパー業界の最大手に躍り出る。共同仕入れやプライベートブランドの拡販で規模の利益を追う構想だった[7][8]

近畿事業については、食品スーパーの光洋と経営統合させたうえで、新生「ダイエー」として事業を続ける。イオンにはそれまで近畿地方を束ねるグループ企業がなく、新生ダイエーを中核会社に据えてシェア拡大を目指す構えだった。全国区の看板だったダイエーを、首都圏はUSMHの一員、近畿は地域の旗艦へと役割を分ける。一つの会社を東西で切り分ける、思い切った組み替えだった[9]

立地価値への転換と改装への投資

吉田社長は記者会見で、都市部では出店余地が限られて建設コストも高騰し、新規出店を軸にした成長は描きづらいと述べた。そのうえでダイエーの立地価値を最大限に発揮できる店舗モデルへ転換し、そこに収益改善の機会があると再編の意義を強調した。首都圏ではマックスバリュ関東、ダイエー関東事業、イオンマーケットを統合して新会社「イオンフードスタイル」を設立し、店舗を改装して三社の屋号を統一する。2030年度までに店舗改装などへおよそ340億円を投じる計画を掲げた[10][11]

結果

2026年3月、東西の新生スーパーが始動

2026年3月1日、再編は予定どおり動き出した。首都圏ではイオンフードスタイルがUSMH傘下で発足し、USMHは761店舗・営業収益1兆円超という食品スーパー最大手の陣容となった。近畿では新生ダイエーが光洋を吸収合併し、187店舗・売上高およそ3000億円で再出発した。近畿にグループの中核会社を持たなかったイオンは、ここで初めて地域を束ねる旗艦を得た。かつて全国区だった一つの看板が、東西で別々の会社へと分けられた[12][13]

もっとも、再編の効果を疑う見方は少なくなかった。核となるUSMHの2025年2月期の営業利益率は0.72%にとどまり、2〜5%台の同業大手に見劣りする。親会社イオンの食品スーパー事業も、2025年2月期の営業利益率は1.07%で、金融やディベロッパーに比べて採算が低い。仕入れ先の集約や本社機能の統合はこれから始まる段階で、器を大きくしただけでは収益はついてこない。統合をどれだけ早く実らせられるかが、成否を分けそうだった[14]

出典・参考