OnLogicを傘下に持つInterlogicの買収(2026年・オムロンの決断)

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オムロン:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
自社開発より外部取得を選んだ、産業用PCと欧米の直販網の取り込み2026年10月10日、オムロンは取締役会で、米国のInterlogic, Inc.(IL社)を、自社が米国に設立する子会社との逆三角合併で買収し、産業用PCのOnLogic, Inc.(OL社)を含む同社グループを取得すると決議した。同日、IL社との間で買収の契約を締結している。取得価格は企業価値ベースで675百万米ドル、1米ドル155円換算で約1,046億円となり、アドバイザリー費用等は未確定である。

何をなぜ決めたか:自社開発より外部取得を選んだ、産業用PCと欧米の直販網の取り込み

概要

2026年10月10日、オムロンは取締役会で、米国のInterlogic, Inc.(IL社)を、自社が米国に設立する子会社との逆三角合併で買収し、産業用PCのOnLogic, Inc.(OL社)を含む同社グループを取得すると決議した。同日、IL社との間で買収の契約を締結している。取得価格は企業価値ベースで675百万米ドル、1米ドル155円換算で約1,046億円となり、アドバイザリー費用等は未確定である。

IL社はOL社をはじめとする子会社の株式を保有する持株会社で、本店を米バーモント州サウスバーリントンに置く。取得前のオムロンとの間に資本関係・人的関係・取引関係は無い。取得の完了時期は臨時報告書に記載が無く、買収はまだ完了していない。決議したときの社長は辻永順太氏で、2023年4月に社長CEOに就任していた。

背景

制御機器事業(IAB)は米国での買収を重ねてきた。2015年にモーションコントローラーのDelta Tau SystemsとロボットのAdept Technologyを、2017年にコードリーダーのMicroscan Systemsを取得し、2022年3月期末のIABにはこれらに起因するのれん37,459百万円が載っていた。IABのセグメント損益は2023年3月期の85,835百万円から2024年3月期に21,463百万円へ縮小し、2024年2月に構造改革「NEXT2025」を決議したのち、2026年3月期に42,787百万円まで回復した。

2025年11月の中期ロードマップ「SF 2nd Stage」は、コントローラ・汎用センサなど13事業を注力事業と定め、最重要事業のIABを中心に集中投資すると掲げた。2030年までの5年間はデバイス事業を成長の原動力とする。2026年3月には電子部品事業をカーライルへ譲渡すると決議した。5月の決算説明会で辻永順太社長は、譲渡で得る資金の使い道について『キャピタルアロケーションにおいては、制御機器事業でのM&Aを最優先に進めていきます』と言い切った。

内容

OL社は構成の自由度が高く堅牢な産業用PC(IPC)を、代理店を介さない顧客への直接販売を中心に、受注生産で提供している。売上の9割超を米州・欧州等で計上し、多様な業種に顧客を持つ。IL社の連結売上高は2023年12月期に129.6百万米ドル、2024年12月期に122.3百万米ドル、2025年12月期に154.2百万米ドルで、2025年12月期のEBITDAは22.6百万米ドル、当期純利益は13.2百万米ドルだった。

取得の目的は3つある。OL社のIPCに自社の高精度制御技術を組み合わせて次世代のフィジカルAIプラットフォームの開発を急ぐこと、OL社の米州・欧州の顧客基盤で両社製品の相互販売を進めること、自社のセンシング機器・ロボティクス機器とIPCを組み合わせてGEMBA DXとフィジカルAIのソリューションを共同で展開することである。制御機器事業を「FA機器メーカー」から「GEMBA DX×フィジカルAI企業」へ転換する施策の一つに位置付けた。

含意

取得価格675百万米ドルは、IL社の2025年12月期の連結売上高の約4.4倍、EBITDAの約30倍、2025年12月期末の連結純資産70.1百万米ドルの約9.6倍にあたる。2026年3月期末のIABののれんは49,182百万円で、約1,046億円の取得価格はその約2.1倍の規模である。のれんの額と連結業績への影響は、まだ開示されていない。

2026年3月期のオムロンの外部顧客向け売上高767,351百万円のうち、米州は73,283百万円、欧州は116,770百万円で、合わせて約25%だった。売上の9割超を米州・欧州等で上げるOL社の直販網は、比率の低いこの2地域の販路を補う。同じFAの領域では、ミスミグループ本社が2025年4月に米Fictivの逆三角合併による買収を決議しており、取得原価は50,778百万円、のれんは41,992百万円だった。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:祖業の売却資金を産業用PCへ

この決断は、現場の機器を作る会社が、データを処理する計算機の領域へ自社の事業を広げるときに、開発と買収のどちらで入るかという問いへの答えである。オムロンは、高精度の制御技術とIPCを組み合わせる手段として、売上の9割超を米州・欧州等で上げる直販のIPCメーカーの買収を選んだ。取得価格675百万米ドルはIL社のEBITDAの約30倍にあたり、開発にかかる時間を価格で置き換えた判断と読める。取得はまだ完了しておらず、成否は決まっていない。

IABの米国での買収は今回が初めてではない。2015年にDelta Tau SystemsとAdept Technologyを、2017年にMicroscan Systemsを取得し、2022年3月期末のIABにはそれらに起因するのれん37,459百万円が載っていた。その後IABのセグメント損益は2024年3月期に21,463百万円まで縮小し、会社は2024年2月に構造改革「NEXT2025」を決議し、2026年3月に電子部品事業の譲渡を決めた。今回の買収は、構造改革と祖業の売却の後に置かれた制御機器への再投資であり、三つの決断は資金配分の順序として一本につながる。

同じFAの領域では、ミスミグループ本社は2025年4月、米Fictivの買収を決議した。手法は同じ逆三角合併で、取得原価は50,778百万円、のれんは41,992百万円だった。オムロンの約1,046億円はその約2.1倍の規模になる。違いは買う対象にある。ミスミが取得したのはカスタム機械部品のオンライン調達サービスで、オムロンが取得するのは産業用PCという機器である。2030年までデバイス事業を成長の原動力とする方針が、サービスではなく機器を買う選択につながったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

数字で見る

オムロン:制御機器事業(IAB)のセグメントの推移

オムロン:制御機器事業(IAB)のセグメントの推移

IAB売上高計(百万円)利益率(%)

IABの利益率は2024年3月期に5.4%まで落ち、2026年3月期に10.4%へ回復

オムロン:制御機器事業(IAB)のセグメントの推移
(百万円)IAB外部顧客売上高IAB売上高計IABセグメント損益IABセグメント資産備考
2022年3月期432,637439,12078,103533,355
2023年3月期485,738492,56085,835576,488利益率は17.4%
2024年3月期393,572398,77921,463547,440セグメント損益が前期の4分の1に縮小。2月にNEXT2025を決議
2025年3月期360,799365,52136,276567,267この期から損益をセグメント利益として表示
2026年3月期409,478410,90042,787615,651電子部品事業を非継続事業へ分類した後の区分
出所:オムロン 有価証券報告書 第85〜89期(オペレーティング・セグメント情報、各期の当期欄)
出所:オムロン 有価証券報告書 第85〜89期(オペレーティング・セグメント情報、各期の当期欄)
オムロン:IABののれんとセグメント資産

オムロン:IABののれんとセグメント資産

IABのれん(百万円)セグメント資産に占める比率(%)

決議前の2026年3月期末のIABののれんは492億円で、取得価格の半分に満たない

オムロン:IABののれんとセグメント資産
(百万円)IABのれんIABセグメント資産備考
2022年3月期37,459533,355主にDelta Tau・Adept・Microscanの取得に起因
2023年3月期40,766576,488増加は為替換算調整額等による
2024年3月期46,537547,440
2025年3月期45,944567,267
2026年3月期49,182615,651買収を決める前の期末
出所:オムロン 有価証券報告書 第85〜89期(連結財務諸表注記「のれんおよびその他の無形資産」・オペレーティング・セグメント情報)
出所:オムロン 有価証券報告書 第85〜89期(連結財務諸表注記「のれんおよびその他の無形資産」・オペレーティング・セグメント情報)
当時の取締役8名

取締役8名(2026年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務宮田喜一郎取締役:代表取締役業務執行:執行役員副社長・CTO担当:
辻永順太取締役:代表取締役業務執行:社長・CEO担当:
山田義仁取締役:取締役業務執行:会長担当:
行本閑人取締役:取締役業務執行:担当:
冨田雅彦取締役:取締役業務執行:執行役員専務・CHRO担当:
独立役員上釜健宏取締役:社外取締役業務執行:担当:
小林いずみ取締役:社外取締役業務執行:担当:
鈴木善久商社取締役:社外取締役業務執行:担当:
この一覧は2026年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • オムロン 有価証券報告書 第89期(2026年3月期)【役員の状況】
  • オムロン 有価証券報告書 第85期(2022年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • オムロン 有価証券報告書 第86期・第87期・第89期(オペレーティング・セグメント情報、各期の当期欄)
  • オムロン 中期ロードマップ「SF 2030 2nd Stage」説明資料(2025年11月7日)
  • オムロン 2026年3月期 決算説明会 プレゼンテーション・スクリプト(2026年5月13日)
  • オムロン 有価証券報告書 第87期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【重要な後発事象】
  • オムロン 有価証券報告書 第89期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • オムロン 有価証券報告書 第89期(2026年3月期)連結財務諸表注記「のれんおよびその他の無形資産」/臨時報告書(2026年10月30日提出)
  • オムロン 有価証券報告書 第89期(2026年3月期)【地域別情報】
  • オムロン 2026年3月期 決算説明会(2026年5月13日)
  • オムロン 有価証券報告書 第87期(2024年3月期)オペレーティング・セグメント情報
  • オムロン 有価証券報告書 第89期(2026年3月期)オペレーティング・セグメント情報
  • オムロン 有価証券報告書 第89期(2026年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • オムロン 有価証券報告書 第85〜89期(オペレーティング・セグメント情報、各期の当期欄)
  • オムロン 有価証券報告書 第85〜89期(連結財務諸表注記「のれんおよびその他の無形資産」・オペレーティング・セグメント情報)
  • オムロン 臨時報告書「臨時報告書(子会社取得の決定)」
  • オムロン 決算説明会資料「2026年3月期 決算説明会 プレゼンテーション・スクリプト」
  • オムロン 決算説明会資料「中期ロードマップ「SF 2030 2nd Stage」説明資料」
  • オムロン 臨時報告書「臨時報告書(吸収分割・特定子会社の異動ほか)」
  • オムロン 有価証券報告書「第89期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【役員の状況】【地域別情報】オペレーティング・セグメント情報」
  • オムロン 有価証券報告書「第85〜88期(2022年3月期〜2025年3月期)オペレーティング・セグメント情報・連結財務諸表注記「のれんおよびその他の無形資産」」
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第64期(2026年3月期)【注記事項】(企業結合等関係)」

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