米Fictiv買収で加工事業獲得(2025年・ミスミグループ本社の決断)

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論点 北米展開は自前か買収か
ミスミグループ本社:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
北米のオンライン加工事業の獲得と、meviyとの統合

何をなぜ決めたか:北米のオンライン加工事業の獲得と、meviyとの統合

概要

2025年4月17日、ミスミグループ本社は取締役会で米Fictiv Inc.およびその子会社7社の買収を決議し、合併契約を締結して6月17日(米国時間)に完全子会社化を完了した。逆三角合併による現金対価の株式取得で、取得原価は50,778百万円であった。

背景

型番で選ぶカタログ通販では賄えない領域へ、ミスミは設計データから直接見積もりと加工指示を出すmeviyを育ててきた。2025年3月期の連結売上高は4,020億円、自己資本比率83.2%と、大型投資を担える財務余力を保っていた。買収資金は6月13日に米国子会社へ3.5億米ドルを貸し付ける形で手当てした。

内容

Fictivは2013年設立のオンライン製造サービス会社で、米国・中国・インド・メキシコの4地域に約400名、世界に約250社の製造パートナーを持つ。自社加工で応えるmeviyに対し、Fictivは外部の加工能力を集約して手配する仕組みを担う。

含意

のれんは暫定50,906百万円から取得原価の配分確定で41,992百万円へ8,914百万円減り、技術関連資産12,381百万円が切り出された。償却期間はいずれも15年に置かれている。企業結合が期首に完了したと仮定した影響は売上高3,308百万円・営業損失7,766百万円で、うち6,919百万円はFictivの権利確定前株式報酬に係る費用であった。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 9名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

考察:時間を短縮する買収の値段
考察

考察:時間を短縮する買収の値段

この買収でミスミが獲得したのは、工場でも技術でもなく、他社の加工能力を必要なだけ呼び出せる回路であったと思われる。同社が20年かけて磨いてきたのは、標準化した部品を自社の工程で作り、決めた日に届ける方法であった。北米で設計データを受け口とするサービスを広げるとき、同じ方法を一から積み上げれば年数がかかる。約250社のパートナー網と、それを割り振る仕組みを508億円で引き受けた選択は、規模ではなく時間を買う取引に近い。2012年の北米最大手買収が販路を買う判断だったとすれば、今回は能力の調達手段そのものを買う判断であったといえる。

ただし、値札はのれん420億円と技術関連資産124億円として貸借対照表に残り、いずれも15年かけて費用に振り替わっていく。買収した事業を含むFA事業の利益は2026年3月期に前期比9.9%減となり、自己資本比率も83.2%から81.7%へ下がった。自社で作る強みを持つ会社が、作らない仕組みをどこまで自分のものにできるか——meviyとFictivという性格の違う二つのサービスが一つの調達体験へ収れんするかどうかに、この508億円の評価は左右されるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ミスミグループ本社:のれん残高と総資産の推移

のれん(百万円)
ミスミグループ本社:のれん残高と総資産の推移
(百万円) のれん総資産 備考
2021年3月期 0288,921 Dayton Lamina買収ののれんは2018年3月期に償却を終えていた
2022年3月期 0347,390
2023年3月期 0378,458
2024年3月期 0413,517
2025年3月期 0419,574 4月にFictiv買収を決議。自己資本比率83.2%で大型投資の余力があった
2026年3月期 43,962464,969 のれん41,992百万円を計上。償却額は2,209百万円、自己資本比率は81.7%へ
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第60期〜第64期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移、セグメント情報)
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第60期〜第64期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移、セグメント情報)

ミスミグループ本社:FA事業のセグメント業績

ミスミグループ本社:FA事業のセグメント業績
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2021年3月期 102,24416,115
2022年3月期 119,25323,381
2023年3月期 121,93221,384
2024年3月期 118,21915,097
2025年3月期 135,80322,510
2026年3月期 160,49820,283 Fictivを連結に含めた影響とM&A関連費用で、利益は前期比9.9%減
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第62期〜第64期【セグメント情報】
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第62期〜第64期【セグメント情報】

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 Fictiv Inc. 子会社7社を含む。事業内容はカスタム機械部品のオンライン調達サービス提供
取締役会の決議 2025年4月17日 同日にFictiv社との間で本買収に関する合併契約を締結した
企業結合日 2025年6月17日(米国時間) みなし取得日は2025年6月30日。連結に含めた業績の期間は7月1日から翌年3月31日まで
企業結合の法的形式 逆三角合併による株式取得 MIUCが設立したD1 Merger Subsidiary CorporationをFictiv社に吸収合併させた
取得した議決権比率 100%
取得原価 50,778百万円 未払を含む現金。前期の後発事象では3.5億米ドルと記載されていた
取得関連費用 1,065百万円 アドバイザリー費用等。前期の後発事象では1,100百万円の暫定額
のれん 41,992百万円 中間期末の暫定額から8,914百万円減少して確定。15年間にわたる均等償却
技術関連資産 12,381百万円 のれん以外の無形固定資産に配分された額。償却期間は15年
受け入れた資産・負債 資産18,833百万円/負債10,047百万円 流動資産5,334・固定資産13,498/流動負債6,346・固定負債3,700
期首に完了と仮定した影響 売上高3,308百万円/営業損失7,766百万円 権利確定前のストック・オプション等の株式報酬費用6,919百万円を含む。監査証明を受けていない
買収資金 3.5億米ドル 2025年6月13日(米国時間)に米国子会社MIUCへ貸付を実行した
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第63期(2025年3月期)【重要な後発事象】・第64期(2026年3月期)【企業結合等関係】
出所:ミスミグループ本社 有価証券報告書 第63期(2025年3月期)【重要な後発事象】・第64期(2026年3月期)【企業結合等関係】
当時の取締役 9名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ミスミグループ本社「Fictiv Inc.の買収に関するお知らせ」(2025年4月17日)
  • ミスミグループ本社「(開示事項の経過)Fictiv Inc.の買収完了に関するお知らせ」(2025年6月18日)
  • ミスミグループ本社 Fictiv事業説明会 質疑応答(2025年10月31日)
  • ミスミグループ本社 2025年度通期決算説明会 質疑応答(2026年4月30日)
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書 第63期(2025年3月期)・第64期(2026年3月期)
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第63期(2025年3月期)【重要な後発事象】」
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第64期(2026年3月期)【企業結合等関係】」
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第64期(2026年3月期)【セグメント情報】」
  • ミスミグループ本社 有価証券報告書「第63期(2025年3月期)財務諸表 重要な後発事象」

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