NEXT 2025で2000人削減(2024年・オムロンの決断)

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論点 固定費をどこまで削減するか
オムロン:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
制御機器の不振を受けた構造改革と、これに伴う大規模な人員削減

何をなぜ決めたか:制御機器の不振を受けた構造改革と、これに伴う大規模な人員削減

概要

2024年2月26日、オムロンは取締役会で全社的な構造改革の実施を決議し、構造改革プログラム「NEXT2025」を策定した。2024年4月1日から2025年9月末までを構造改革期間とし、制御機器事業の早急な立て直しと収益・成長基盤の再構築という2つの経営課題に取り組む枠組みである。

5つの経営施策のひとつが人員数・能力の最適化で、国内約1,000名、海外約1,000名の合計約2,000名を削減して総人件費を適正化するとした。日本では希望退職の募集によって実行する。当時の意思決定者は辻永順太社長である。

背景

制御機器事業(IAB)は2023年3月期に外部顧客への売上高4,857億38百万円を上げ、連結売上高8,760億82百万円の55%を占めた。セグメント損益858億35百万円は、消去調整後の連結セグメント損益1,006億86百万円の85%にあたる。文字どおり売上と収益源だった。

ところが2024年3月期は外部売上高が3,935億72百万円へ落ち、セグメント損益は214億63百万円と前期の4分の1に縮む。設備投資需要の低迷に加え、前年上期の売上高が受注残に支えられていた反動も重なった。全社の販管費比率は32.0%まで膨らんでいた。

内容

希望退職はオムロンおよび一部の国内子会社を対象に、2024年7月20日時点で勤続3年以上かつ年齢40歳以上の正社員およびシニア社員へ、募集人員1,000名程度で2024年4月10日から5月31日まで募集された。応募の結果、国内の削減人員数は募集人員を上回る1,206名となり、特別一時金の費用は約130億円、うちオムロン単体で約80億円を見込んだ。

海外を含めた最終的な退職者はグローバル合計2,526名(国内1,206名、海外1,320名)である。2025年3月期の連結損益計算書には構造改革費用277億81百万円を計上し、うち退職関連費用が220億7百万円。制御機器事業には拠点の統廃合等を含め151億49百万円が充てられた。

含意

構造改革費用の過半が制御機器事業に向けられ、同事業のセグメント損益は2024年3月期の214億63百万円から2025年3月期362億76百万円、2026年3月期427億87百万円へ戻した。連結の従業員数は2024年3月期末の28,450人から2026年3月期末に26,050人まで減っている。固定費は2024年度と2025年度の2年間で2023年度比 約350億円削減され、販管費の比率は33.1%から31.9%へ下がった。

NEXT2025は2025年9月末で期間を終え、2026年4月から中期ロードマップ「SF 2nd Stage」へ引き継がれた。ただし売上高・営業利益ともに過去最高水準に到達しておらず、ROICやROEが資本コストを下回る水準にあることから、収益・成長基盤の再構築は道半ばと総括している。

いつ何が起きたか 9件
当時の取締役 8名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:独り負けからの立て直しをめぐって
考察

考察:独り負けからの立て直しをめぐって

この判断が映すのは、好調期に大口顧客と中国へ深く食い込んだことが、需要の反転とともにそのまま重荷へ転じたという構造である。業界の最先端を走る大手に複雑なソリューションを売り込む戦略は、取引先が伸びるうちは高い成長をもたらすが、景気の変動をまともに受ける弱さと表裏一体であった。制御機器事業のセグメント損益が1年で858億円から214億円へ4分の1に縮んだ落差は、稼ぎ方の裏側にあった集中の代償を映しているのだろう。最終損益で黒字を保ちながら、期間を区切って約2,000名の削減へ踏み切った点には、環境が変わる前提で構造を先回りして組み替えようとする判断がうかがえる。

もっとも、2年で約350億円の固定費を削っても、それだけで失われた競争力が戻るわけではない。辻永順太社長は2021年3月から制御機器事業カンパニーの社長として従来路線を率いた当事者であり、立て直しの成否は、中国偏重の見直しと欧米・非製造業分野への展開がどこまで実を結ぶかにかかっている。人員数の最適化は5つの経営施策のひとつにすぎず、顧客起点の思考と行動をマネジメントへ根づかせるという、数字に表れにくい課題が残されている。会社自身が収益・成長基盤の再構築を道半ばと総括して次の中期ロードマップへ引き継いだことは、この構造改革が終点ではなく通過点であったことを示しているだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

オムロン:従業員数と構造改革費用の推移

連結従業員数(人/百万円)構造改革費用(百万円)
オムロン:従業員数と構造改革費用の推移
(人/百万円) 連結従業員数単体従業員数構造改革費用 備考
2019年3月期 35,0904,741−
2020年3月期 28,0064,980− 車載事業の売却で連結の就業人員が前期末から7,000人規模で減った
2021年3月期 28,2544,829−
2022年3月期 29,0204,610−
2023年3月期 28,0344,621−
2024年3月期 28,4504,538− 2024年2月26日に決議。構造改革費用の計上は翌期からで、当期は科目なし
2025年3月期 26,6143,87327,781 希望退職の退職日は2024年7月20日。単体の就業人員は665名減
2026年3月期 26,0503,8552,617 2025年9月末に構造改革期間が終了
出所:オムロン 有価証券報告書 第82〜89期(従業員の状況、連結財務諸表注記「構造改革費用」)
出所:オムロン 有価証券報告書 第82〜89期(従業員の状況、連結財務諸表注記「構造改革費用」)

オムロン:制御機器事業(IAB)の推移

IAB外部顧客売上高(百万円)IABセグメント損益率(%)
オムロン:制御機器事業(IAB)の推移
(百万円) IAB外部顧客売上高IABセグメント損益 備考
2019年3月期 391,82662,895
2020年3月期 352,76253,595
2021年3月期 346,44658,793
2022年3月期 418,10776,257
2023年3月期 485,73885,835 連結売上高の55%、消去調整後の連結セグメント損益の85%を占めた
2024年3月期 393,57221,463 セグメント損益が前期の4分の1へ。この期の実績を受けて構造改革を決議
2025年3月期 360,79936,276 構造改革費用15,149を計上しつつセグメント損益は回復
2026年3月期 409,47842,787 電子部品事業を非継続事業へ分類した継続事業ベースの区分
出所:オムロン 有価証券報告書 第83〜89期(オペレーティング・セグメント情報)
出所:オムロン 有価証券報告書 第83〜89期(オペレーティング・セグメント情報)

構造改革の条件

構造改革の条件
科目 概要 備考
取締役会決議日 2024年2月26日 全社的な構造改革の実施を決議し、構造改革プログラム「NEXT2025」を策定した
実行期間 2024年4月1日〜2025年9月末 中期経営計画SF 1st Stageの戦略と目標値は取り下げ、構造改革期間とした
対象となる事業 全社(5つの経営施策) 制御機器事業の立て直し、ポートフォリオ・人員数・固定費生産性・マネジメントの最適化
削減人員(計画) 合計約2,000名 国内約1,000名、海外約1,000名。現地の労働法・規則・規制に従って実施
希望退職の対象者 勤続3年以上かつ年齢40歳以上 2024年7月20日時点。対象会社はオムロンおよび一部の国内子会社の正社員・シニア社員
希望退職の募集人員 1,000名程度
希望退職の募集期間 2024年4月10日〜5月31日 退職日は2024年7月20日
国内の削減人員数 1,206名 募集期間終了後に確定。募集人員1,000名程度を上回った
削減人員(実績) グローバル合計2,526名 国内1,206名、海外1,320名が退職または退職に合意した
特別一時金の見込み 約130億円 国内の人員削減分。うちオムロン株式会社で発生する費用は約80億円
構造改革費用(2025年3月期) 27,781百万円 退職関連22,007/資産の減損及び処分損3,145/その他の関連費用2,629
構造改革費用(2026年3月期) 2,617百万円 退職関連1,321/資産の減損及び処分損662/その他の関連費用634
制御機器事業の構造改革費用 15,149百万円 2025年3月期。リバイバルプラン(IFR)や拠点の統廃合を含む。5事業中で最大
固定費の削減 2023年度比 約350億円 2024年度と2025年度の2年間の実績。販管費の比率は33.1%から31.9%へ
出所:オムロン 有価証券報告書 第87期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【重要な後発事象】・第88期(2025年3月期)・第89期(2026年3月期)【構造改革費用】
出所:オムロン 有価証券報告書 第87期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【重要な後発事象】・第88期(2025年3月期)・第89期(2026年3月期)【構造改革費用】
当時の取締役 8名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • オムロン 適時開示「構造改革プログラム「NEXT 2025」に関するお知らせ」
  • オムロン 有価証券報告書「第87期(2024年3月期)【対処すべき課題等】【重要な後発事象】」
  • オムロン 有価証券報告書「第88期(2025年3月期)連結財務諸表注記【構造改革費用】」
  • オムロン 有価証券報告書「第89期(2026年3月期)【対処すべき課題等】」

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