アサヒ飲料による吸収合併(2016年・カルピスの決断)

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論点カルピスを法人として残すか
カルピス:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
法人カルピスの解消と、飲料・機能性食品・海外事業の3方向への分割2015年6月3日、アサヒグループホールディングスの取締役会は、国内の飲料事業と食品事業の再編を決めた。2016年1月1日、アサヒ飲料はカルピスを吸収合併し、1917年に始まった法人としてのカルピスは消えた。掲げた狙いは、各社の担当領域をはっきりさせて意思決定を速め、事業内のシナジーを最大にすることだった。

何をなぜ決めたか:法人カルピスの解消と、飲料・機能性食品・海外事業の3方向への分割

概要

2015年6月3日、アサヒグループホールディングスの取締役会は、国内の飲料事業と食品事業の再編を決めた。2016年1月1日、アサヒ飲料はカルピスを吸収合併し、1917年に始まった法人としてのカルピスは消えた。掲げた狙いは、各社の担当領域をはっきりさせて意思決定を速め、事業内のシナジーを最大にすることだった。

合併の前に、カルピスの事業は3つに分けられた。国内の飲料製造と乳製品は子会社のカルピスフーズサービスが引き継いで社名をカルピスに改め、機能性食品と飼料はアサヒカルピスウェルネスへ移した。海外の飲料事業と発酵応用の研究、間接機能の一部は、アサヒグループホールディングスへ移管した。

背景

合併は買収から3年余りの積み重ねの末にあった。アサヒグループホールディングスは2012年10月1日、味の素からカルピスの全株式を現金で取得した。両社の協業は2001年5月の自動販売機の相互乗り入れに始まり、2007年12月には自販機事業を統合する会社を共同で設けていた。2013年9月には、カルピスの国内飲料事業をアサヒ飲料へ移管・統合した。

取得原価は95,205百万円で、のれん26,330百万円を20年で均等償却するとした。カルピスの単体売上高は2013年12月期の100,134百万円から、移管後の2014年12月期には65,664百万円に縮小していた。販売を移した後のカルピスは、主に製造を担う会社になっていた。

内容

再編を率いたのは岸上克彦氏である。2015年3月、アサヒ飲料の専務からアサヒ飲料の社長に昇格し、同時にカルピスの社長にも就任した。カルピスで長く営業とマーケティングを担った人物で、アサヒビール出身者が就任するのが通例だったアサヒ飲料の社長に、買収された会社の出身者が就任したのは異例だった。

合併と並行して、工場はグループの製品をつくる体制に組み替えられた。2014年6月に群馬工場で新しいアセプティックラインが動き、2015年2月には岡山工場の新ラインで「バヤリース」と「三ツ矢サイダー」の生産を開始した。食品事業でも同じ日に、和光堂など3社の事業をアサヒグループ食品へ移す再編を行った。

含意

合併の翌年、飲料事業の利益は伸びた。国際会計基準に移った2016年12月期の飲料事業は、売上収益363,905百万円・事業利益32,335百万円で、2017年12月期には事業利益が38,321百万円に増加した。海外では、2019年に台湾カルピス、2020年に米国の飲料会社がアサヒ飲料の管轄に戻った。

一方、伸びは続かなかった。飲料事業の事業利益は2020年12月期に27,800百万円まで減少し、2021年12月期も33,139百万円と2017年の水準を下回った。アサヒグループホールディングスは後年、カルピスの買収額を920億円と記し、事業拡大に伴うリスクの例に挙げている。

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考察:ブランドを残し、会社をたたむ
考察

考察:ブランドを残し、会社をたたむ

なぜアサヒグループは、カルピスを会社として残さなかったのか。2013年に販売をアサヒ飲料へ移した時点で、カルピスは主に製造を担う会社になっていた。単体の売上高は100,134百万円から65,664百万円に縮小している。売る会社とつくる会社が別にあれば、工場の配分も商品の企画も二社の間で調整が要る。合併は、すでに一つになった販売に、製造と本社機能を合わせる手続きだったと考えられる。

もっとも、会社をたたむことは、カルピスが持っていた独自の事業を散らすことでもあった。機能性食品と飼料は別会社へ、海外飲料と発酵の研究は持株会社へ移った。乳酸菌の技術を軸に、飲料から健康食品・飼料までを一社で担う体制は、この日に解かれた。その代わりにアサヒは、カルピス出身の岸上克彦氏をアサヒ飲料の社長に据えた。会社の形を崩す一方で、人とブランドで連続を保つ組み方だった。

合併から10年がたち、結果は数字に出ている。飲料事業の事業利益は2016年の32,335百万円から2017年に38,321百万円へ増加した。統合の効果は早く出た。しかし2020年には27,800百万円まで減少し、2021年も33,139百万円と2017年を下回った。台湾と米国の会社は持株会社からアサヒ飲料の管轄に戻され、分割の一部は数年で組み直された。この合併は、利益を早く引き上げた点では成功し、その水準を保てなかった点では課題を残した、部分的な成功である。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る1表

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図と表

カルピス:アサヒグループの飲料事業の売上と利益の推移

売上高(日本基準)(百万円)売上収益(IFRS)(百万円)

飲料の事業利益は合併翌年の2017年に383億円へ増加し、2020年に278億円へ減少した

カルピス:アサヒグループの飲料事業の売上と利益の推移
(百万円)売上高(日本基準)営業利益(日本基準)売上収益(IFRS)事業利益(IFRS)備考
2011年12月期324,78211,389−−カルピスの取得前
2012年12月期370,8367,379−−10月からカルピスを連結
2013年12月期461,05415,457−−9月にカルピスの国内飲料事業をアサヒ飲料へ移管
2014年12月期471,45621,319−−営業利益はのれん等償却後
2015年12月期490,18622,409−−6月に再編を決議。営業利益はのれん等償却後
2016年12月期−−363,90532,3351月にカルピスを吸収合併。国際会計基準へ移行
2017年12月期−−374,51738,321
2018年12月期−−368,75438,099
2019年12月期−−376,24033,239
2020年12月期−−353,38127,800
2021年12月期−−357,80933,139翌期から報告セグメントを地域別へ変更
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第89期〜第92期(2012年〜2015年12月期)【業績等の概要】(事業セグメント別の実績) / アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93期〜第98期(2016年〜2021年12月期)(報告セグメント別の実績)
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第89期〜第92期(2012年〜2015年12月期)【業績等の概要】(事業セグメント別の実績) / アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93期〜第98期(2016年〜2021年12月期)(報告セグメント別の実績)
参考文献

参考文献

参考
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第92期(2015年12月期)【重要な後発事象】
  • アサヒ飲料「カルピス経営史 1 「カルピス」の誕生と普及」(2022年)
  • アサヒ飲料「カルピス経営史 6 アサヒ飲料との経営統合へ」(2022年)
  • カルピス 第68期決算公告(2014年3月20日)・第69期決算公告(2015年3月24日)
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93期(2016年12月期)【業績等の概要】
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第94期(2017年12月期)【業績等の概要】
  • アサヒ飲料「カルピス経営史 4 生産および研究開発体制強化と海外展開」(2022年)
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第97期(2020年12月期)・第98期(2021年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第101期(2024年12月期)【事業等のリスク】
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第97期(2020年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第89期〜第92期(2012年〜2015年12月期)【業績等の概要】(事業セグメント別の実績)
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93期〜第98期(2016年〜2021年12月期)(報告セグメント別の実績)
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第92期(2015年12月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第89期(2012年12月期)【企業結合等関係】」
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第90期(2013年12月期)【業績等の概要】」
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第93期〜第98期(2016年〜2021年12月期)【業績等の概要】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第101期(2024年12月期)【沿革】【事業等のリスク】」
  • カルピス 決算公告「第68期・第69期 決算公告(2013年・2014年12月期)」
  • アサヒ飲料 社史「カルピス経営史 4・6(2022年)」

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