カチタス同業リプライスの株式を全部取得し、中古住宅の買取再販で首位の規模を固める
自力の積み上げで待つか、同業を買って量を先に取るか——再上場を控えた規模の選択
- 概要
- 2016年3月30日、カチタスは中古住宅の買取再販を手がける同業リプライス(名古屋市)の株式を約40億円で全部取得し、完全子会社とした。両社の2014年度の年間再販戸数を合わせるとおよそ3,500戸、売上高は約460億円となり、買取再販での規模は他社を引き離した。
- 背景
- 非公開化後の再建で利益は回復したものの、売上高は2014年3月期397億円から2016年3月期393億円と横ばいであった。買取再販は一件ごとの積み上げで伸ばす事業であり、年間の処理件数がそのまま経験の蓄積と競争条件を左右していた。
- 内容
- 取得は2016年3月30日付。リプライスが抱えていた総合都市開発とアークティブも同時に連結対象となったが、中古住宅再生との関わりが薄い2社は同年9月に売却された。カチタスは地方都市、リプライスは東京圏という担当地域の違いも残された。
- 含意
- 買収の翌期にあたる2017年3月期の連結売上高は618億円へほぼ倍増し、2017年12月の東証一部再上場につながった。買う対象を中古住宅再生の本体だけに絞り、付随する不動産事業を半年で手放した点に、この買収の性格が表れている。
量を買うことと、量が意味を持つ事業
同業を買って順位を確かめる買収は珍しくない。この案件が目を引くのは、すでに2位に2,000戸の差をつけて首位にあった会社が、それでも量を買った点にある。買取再販では、扱った物件の数が値づけと工事範囲の判断に直接はね返る。順位を守るためではなく、判断の精度を上げるために件数を買ったとみると、40億円という金額の意味も変わってくる。同じ理屈が働かない業種で同じ買収をしても、これほど素直に数字へ結びついたかは分からない。
もうひとつ印象に残るのは、買ったものの一部を半年で手放した速さである。多角化で広げた周辺事業を5年かけて畳んだ経験を持つ会社が、買収に付いてきた不動産2社を抱え込まずに売った。買収は事業を足す行為であると同時に、何を足さないかを決める行為でもある——2004年からの拡大と縮小を通ってきた会社が、その順序を取り違えなかったことに、非公開化期間の整理が残した学習がうかがえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
利益は戻ったが、売上は横ばいだった
2012年の非公開化から4年、カチタスの再建は利益の面では実を結んでいた。2014年3月期の単体売上高397億円・経常利益14億円に対し、2016年3月期は連結売上高393億円・経常利益33億円・親会社株主に帰属する当期純利益20億円で、売上をほとんど動かさずに利益を倍以上に伸ばしている。もっとも、売上の水準は3年間ほぼ変わらないままであった。値決めと仕入の型を直して採算を戻す作業は、そこで一区切りに達していた[1]。
仕入の側の作り直しも進んでいた。創業以来の競売中心の取得は、競売件数の減少と参加者の増加で条件が悪くなっており、主軸は不動産仲介経由の任意売買へ移され、テレビCMで売り手を直接集める経路も加えられている。売る相手は地方に住む年収200万〜500万円の層、およそ900万世帯と定められた。仕入の入口と売り先の輪郭が定まったあと、なお足りないものが、扱う件数そのものであった[2][3]。
買取再販の順位と、広がり続ける母市場
買収前のカチタスは、業界紙の中古住宅再販ランキング2014で約3,000戸の販売実績、売上高400億円弱をあげて首位に立っていた。販売戸数2位のフジ住宅との差は2,000戸あり、順位そのものは動きにくかった。一方でリプライスは名古屋市に本社を置く同業で、両社の2014年度の年間再販戸数を足すと約3,500戸、売上高は約460億円になる。同じ買取再販でも扱う地域が重ならない相手であった[4]。
母となる市場は広がる方向にあった。バブル期に年間170万戸規模で建てられた住宅が軒並み築30年を超え、この層の改修需要は量でも金額でも増していくと、新井社長は2015年の時点で見ていた。空き家は年間60万軒発生し、ストックでは850万軒に及ぶとされる。取り扱える物件が細っていく市場ではなく、むしろ供給が積み上がる市場で、先に処理の量を確保できるかどうかが問われる場面にあった[5][6]。
決断
2016年3月30日、約40億円で全株式を取得
2016年3月30日、カチタスはリプライスの全株式を約40億円で取得した。翌31日には同業のリプライスと経営統合すると発表している。有価証券報告書の沿革は、この取得によりリプライスが連結子会社となったと記載する。自力で年間3,000戸を3,500戸へ積み上げるには数年を要するところを、一度の取得で先に確保した判断にあたる[7][8][9]。
買収の狙いは、規模の確保と株式公開の両方に置かれていた。会社側はさらなる拡大と株式上場を目指すと説明し、日本経済新聞は、成長分野とされる中古住宅の流通で競争力を高めるとともに、3年以内に東京証券取引所1部への上場を目指すと伝えた。2012年に市場を降りた会社が、5年以内の復帰を前提に事業の形を整えていた。規模の裏づけを持たないまま公開市場に戻るより、首位の位置を数字で示してから戻るという順序が選ばれている[10][11]。
買うものと、半年で手放したもの
株式の全部取得により、リプライスの子会社であった総合都市開発とアークティブも同時に連結の対象へ入った。カチタスはこの2社を、中古住宅再生との関わりが薄いとして2016年9月に売却している。取得から半年での処分であり、買収の対象を買取再販の本体に絞る意図が明確であった。多角化で広げた事業を5年かけて畳んだ会社が、買収に伴って再び抱え込むことを避けた対応とみることができる[12]。
買取再販で件数を増やすことには、売上以上の意味があった。年間3,000件の改修を重ねていると、ある時期にある建材を使った家に共通する注意点が見えてくると新井社長は説明している。一件ごとに状態の異なる中古の戸建では、扱った数がそのまま値づけと工事範囲の判断の精度に変わる。同業を取り込んで年間の処理件数を一段上げることは、翌期の売上を足すだけでなく、他社が追いつきにくい判断の材料を増やす選択でもあった[13]。
結果
売上618億円への倍増と、外部からの評価
買収の効果は翌期の数字にそのまま出た。2017年3月期の連結売上高は618億円、営業利益50億円、経常利益48億円、親会社株主に帰属する当期純利益35億円で、売上高は前期の393億円から1.6倍近くに増えている。連結の従業員数も620名となった。売上が3年間動かなかった会社が、一度の取得で規模の水準を切り替えたことになる[14][15]。
事業の評価も相次いだ。2016年2月には経済産業省の「先進的なリフォーム事業者表彰経済産業大臣賞」を受け、2017年10月には一橋大学大学院国際企業戦略研究科が主催する第17回ポーター賞を受賞している。ポーター賞は独自の戦略によって業界平均を上回る収益性を保つ企業を選ぶもので、大手の新築ハウスメーカーが手薄な地方の戸建中古住宅を、年間3,000件規模の処理量と一人が仕入から販売まで担う業務設計で押さえる組み立てが、外部の目にも評価された[16][17]。
1年9カ月後の東証一部再上場
2017年4月、カチタスはニトリホールディングスと資本・業務提携契約を結び、ニトリHDが筆頭株主として株式を保有する関係に入った。2018年3月期末の持株比率は35.73%で、その後も34%台で推移している。そして2017年12月、カチタスは東京証券取引所市場第一部に株式を上場した[19]。リプライス取得の発表から1年9カ月であり、買収時に伝えられた「3年以内」より早い復帰であった[18]。
再上場を控えた2017年12月の取材で、新井社長は中古住宅の再販において2位以下に10倍の差があると述べている。カチタスは人口5万〜30万人の地方都市を中心に構え、グループ会社となったリプライスが東京圏を受け持つ分担も定まった。以降の売上高は2018年3月期の692億円から2025年3月期の1,295億円へ伸びており、2016年に一段引き上げた規模の水準が、その後の増収の土台にあたる[20][21]。
- カチタス 有価証券報告書【沿革】
- カチタス 有価証券報告書 第38期(2016年3月期・連結)/第39期(2017年3月期・連結)/第40期(2018年3月期)/第47期(2025年3月期・連結)
- 日本経済新聞(2016年3月30日)「カチタス、中古住宅の中堅買収 40億円で 1部上場狙う」
- 日本経済新聞(2017年12月5日)「カチタス社長「中古住宅の再販、2位以下に10倍の大差」」
- リフォーム産業新聞(2016年4月12日)「カチタス、リプライスと経営統合 「戸建て買取再販」軸に500億円超計画」
- リフォーム産業新聞(2015年7月28日・2018年7月30日)カチタス 新井健資社長インタビュー
- ポーター賞 第17回受賞企業インタビュー
- 財界オンライン(2021年7月2日)カチタス社長・新井健資インタビュー
- キャリアインキュベーション(2013年8月)「プロ経営者インタビュー 新井健資 氏 株式会社カチタス 代表取締役社長」