大林クリーンエナジーの設立(2012年・大林組の決断)

更新:
論点建設の請負以外に収益源を持つか
大林組:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
請負に加えた、発電所を自ら保有して運営する事業への参入

何をなぜ決めたか:請負に加えた、発電所を自ら保有して運営する事業への参入

概要

2012年7月、大林組は子会社の大林クリーンエナジーを設立し、再生可能エネルギーの発電事業に参入した。決めたのは当時の社長の白石達氏である。同じ年度に始めた3か年の中期経営計画は「収益基盤の多様化」を掲げ、海外展開と並ぶ方針として、培った技術を新しい事業の形で事業化する「ビジネス・イノベーション分野」を置いた。大林クリーンエナジーは、この分野の最初の担い手となった。

計画の最終年度の2014年度までに、連結営業利益に占める国内建設以外の営業利益の割合を約40%に、建設事業売上高に占める海外売上高の割合を約20%に引き上げる指標を置いた。初年度の2013年3月期には太陽光発電事業が順調に拡大し、次の段階として風力、バイオマス、地熱、小水力発電への参入も視野に入れた。

背景

参入を決める直前の2012年3月期、大林組の売上高約1兆2,457億円のうち、建設事業が約1兆1,701億円を占めていた。営業利益は約311億円で、売上高に対する比率は2.5%にとどまる(計算)。当期純利益は、投資有価証券売却益を約141億円計上しても約51億円だった。

事業環境も厳しかった。国内の建設市場は低迷し、製造業の設備投資は海外へ移りつつあった。新しい中期経営計画は収益力の指標に連結営業利益率を選び、2014年度までに3%へ引き上げる目標を掲げた。請負の採算だけに頼らず、国内建設の外にも利益を生む事業を持つことが、計画全体の課題だった。

内容

2014年5月時点で、太陽光発電は15件・約53MWが稼働しており、2016年度末までに24件・約120MWへ広げる計画だった。初期事業費は約385億円で、2015年度に営業黒字化、2017年度以降に売上高50億円以上、2022年度に営業利益20億円以上という目標を置いた。設備投資の「その他」は主に再生可能エネルギー事業の投資で、2014年3月期には16,477百万円と前期の2,695百万円から急増した。

太陽光の次は、秋田県の風力発電と中部地方の木質バイオマス発電に参入した。2016年3月期には大林クリーンエナジーが大月バイオマス発電の株式を取得し、連結子会社とした。再生可能エネルギー事業は現在も報告セグメントとして独立せず、PFI事業や金融事業と同じ「その他」の区分に入っている。

含意

大林クリーンエナジー(傘下の子会社を含む)は、設立初年度の売上高45百万円・営業損失206百万円から始まり、2017年3月期に売上高4,161百万円・営業利益231百万円と初めて黒字になった。目標の2015年度から1年遅れた。2018年3月期は売上高6,311百万円・営業利益2,034百万円だが、減価償却を定率法から定額法へ改めたことで営業利益が約16億円増加している。

その後、事業は海外へ広がった。2021年にニュージーランドでグリーン水素の試験販売を始め、2023年11月には地熱・水力発電所(総発電規模63MW)を運営するEastland Generation社の株式50%の取得を決めた。2026年3月期の年間発電量は1,013,467MWhで、目標の1,053,000MWhをわずかに下回った。2026年10月22日には同国の太陽光の資産保有会社LYOC1社の株式90%の取得を決議し、異動は2028年3月31日までの予定である。

いつ何が起きたか12件
当時の取締役9名

当時の取締役(2012年6月株主総会決議)

  • 大林剛郎:会長
  • 白石達:社長
  • 野口忠彦:代表取締役
  • 金井誠:代表取締役
  • 原田昇三:代表取締役
  • 岸田誠:取締役
  • 三輪昭尚:取締役
  • 柴田憲一:取締役
  • 杉山直:取締役
考察:建設会社が発電事業に参入した理由
考察

考察:建設会社が発電事業に参入した理由

なぜ発電事業だったのか。収益の源を広げるだけなら、すでに手がけていた不動産の賃貸を拡大すれば足りた。それでも発電所を選んだのは、発電所の建設と運営に建設会社の技術をそのまま使えるうえ、稼働すれば受注の波と関係なく長い期間にわたって収入が見込めるからだと思われる。2012年3月期の営業利益率は2.5%にとどまり、請負の採算は景気と受注競争に左右されていた。発電事業は、請負とは別の時間軸で利益を積む事業として選ばれたのだろう。

もっとも、発電所は建てた後に資金を長く固定する事業でもある。初期事業費は約385億円に及び、設立から4期は営業損失が続いた。2018年3月期の営業利益2,034百万円も、減価償却の方法の変更による約16億円を除けば、2022年度の目標とした20億円にはまだ遠い。請負は資金を早く回収する事業で、発電は資金を長く寝かせる事業である。同じ会社が両方を抱えれば、資本の効率を下げることにもなりうる。参入の判断は、その引き換えを承知したうえでのものだったと推察される。

2012年の参入から現在までを見れば、結果は部分的な成功といえる。黒字化は目標より1年遅れたが、事業は国内の太陽光から風力・バイオマスへ、さらにニュージーランドの地熱・水素・太陽光へと広がった。2026年3月期の年間発電量は1,013,467MWhに達し、2026年10月にはLYOC1社の株式90%の取得も決めている。一方で、この事業は今も報告セグメントとして独立せず「その他」の区分にとどまる。国内建設以外の利益を約40%に高めるという当初の指標を、発電事業がどこまで担ったかは、開示からは読み取れない。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る2表

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図と表

大林組:大林クリーンエナジーの売上高と営業利益

売上高(百万円)営業利益(百万円)

設立5期目の2017年3月期に営業利益231百万円で初めて黒字化

大林組:大林クリーンエナジーの売上高と営業利益
(百万円)売上高営業利益備考
2013年3月期45△2062012年7月に設立した初年度
2014年3月期824△498太陽光発電は2014年5月時点で15件・約53MW
2015年3月期2,855△325
2016年3月期3,620△78目標とした営業黒字化には届かなかった
2017年3月期4,161231初の営業黒字
2018年3月期6,3112,034減価償却を定額法へ変更し、営業利益が約16億円増加
出所:大林組 決算説明会資料 2016年3月期(2016年5月13日)・2018年3月期(2018年5月16日)【主要子会社の業績】(再生可能エネルギー事業を営む傘下の子会社を含む)
出所:大林組 決算説明会資料 2016年3月期(2016年5月13日)・2018年3月期(2018年5月16日)【主要子会社の業績】(再生可能エネルギー事業を営む傘下の子会社を含む)

大林組:連結設備投資と再生可能エネルギーの投資

その他(主に再生可能エネルギー)(百万円)建設事業・不動産事業(百万円)

設備投資の「その他」は2014年3月期に16,477百万円へ急増

大林組:連結設備投資と再生可能エネルギーの投資
(百万円)設備投資の合計その他(主に再生可能エネルギー)備考
2012年3月期17,0171,142設立前。「その他」は再生可能エネルギー以外の投資
2013年3月期35,0842,695大林クリーンエナジーを設立した期
2014年3月期69,11016,477「その他」は主に再生可能エネルギー事業の投資
2015年3月期42,30810,351
2016年3月期56,2315,269
2017年3月期31,4107,526
2018年3月期76,38313,192
出所:大林組 決算説明会資料 2016年3月期(2016年5月13日)・2018年3月期(2018年5月16日)【設備投資(連結・個別)】
出所:大林組 決算説明会資料 2016年3月期(2016年5月13日)・2018年3月期(2018年5月16日)【設備投資(連結・個別)】
当時の取締役9名

当時の取締役(2012年6月株主総会決議)

  • 大林剛郎:会長
  • 白石達:社長
  • 野口忠彦:代表取締役
  • 金井誠:代表取締役
  • 原田昇三:代表取締役
  • 岸田誠:取締役
  • 三輪昭尚:取締役
  • 柴田憲一:取締役
  • 杉山直:取締役
参考文献

参考文献

参考
  • 大林組 有価証券報告書 第109期(2013年3月期)【表紙】
  • 大林組 有価証券報告書 第108期(2012年3月期)【対処すべき課題】
  • 大林組 有価証券報告書 第109期(2013年3月期)【対処すべき課題】
  • 大林組 有価証券報告書 第108期(2012年3月期)【業績等の概要】
  • 大林組 有価証券報告書 第122期(2026年3月期)【セグメント情報】
  • 大林組 有価証券報告書 第122期(2026年3月期)【サステナビリティに関する考え方及び取組】
  • 大林組 決算短信「平成25年3月期 決算短信」
  • 大林組 適時開示「ニュージーランドの再生可能エネルギー発電事業者「Eastland Generation 社」の株式取得等について」
  • 大林組 臨時報告書「臨時報告書(特定子会社の異動)」
  • 大林組 決算説明会資料「2014年3月期 決算説明会」
  • 大林組 決算説明会資料「2016年3月期 決算説明会」
  • 大林組 決算説明会資料「2018年3月期 決算説明会」
  • 大林組 有価証券報告書「第108期(2012年3月期)【業績等の概要】【対処すべき課題】」
  • 大林組 有価証券報告書「第109期(2013年3月期)【対処すべき課題】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 大林組 有価証券報告書「第112期(2016年3月期)【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 大林組 有価証券報告書「第116期(2020年3月期)【沿革】」
  • 大林組 有価証券報告書「第121期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大林組 有価証券報告書「第122期(2026年3月期)【サステナビリティに関する考え方及び取組】【セグメント情報】」

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