FPG信託機能を用いた不動産小口化商品の提供開始と、国内不動産ファンド事業の主力化

法人の節税か、個人の相続か——単一商品で伸びてきた会社が、顧客の課題そのものを載せ替えた10年

時期 2016年4月
意思決定者(推定) 谷村尚永 社長
論点 単一商品への依存と、顧客層の組み替え
概要
2016年4月、FPGは子会社FPG信託の信託機能を活用した不動産小口化商品の提供を始めた。自ら取得した都心一等地の不動産を信託し、その受益権を1口1,000万円から投資家に売る仕組みで、初年度の不動産関連事業の売上高は2億7,400万円にすぎなかった。9年後の2025年9月期には959億8,800万円と連結売上の7割超を占め、創業以来の本業だったリースファンド事業を抜いた。
背景
2004年に海上輸送用コンテナのオペレーティング・リース匿名組合出資持分の販売を始めて以来、FPGの売上は法人税の繰延べを求める中堅企業オーナー向けの一品で立っていた。2014年9月期の連結売上高63億円のうち58億6,500万円がタックス・リース・アレンジメント事業で、業績はリース資産の市況と法人税制に握られていた。
内容
2013年4月に宅地建物取引業の免許、6月に不動産特定共同事業法に基づく許可を取得してFPGリアルエステートを設立し、2014年10月に運用型信託会社ベルニナ信託を子会社化して信託事業へ入った。免許を3年かけて揃えたうえで、不動産の取得から信託・運用指図・販売までを自社グループで担う商品を組み、法人の利益繰延から個人の相続対策へ顧客の課題を移した。
含意
2023年9月期に国内不動産ファンド事業の売上高450億7,600万円がリースファンド事業の221億8,400万円を上回り、主力が入れ替わった。ただし乗り換えた先も相続税評価の圧縮という税制上の前提に立っており、2025年12月の令和8年度税制改正大綱で直撃を受けた。同時に、二本の柱を持ったことが減収時の支えにもなった。
筆者の見解

免許は前提を守らない

2016年9月期に2億7,400万円だった事業が、9年後に959億8,800万円になって創業以来の本業を抜いた。伸びた幅より効いたのは、初年度の販管費で不動産の販売体制を主力と同じ列に置いた配分であった。売上の1.5%にすぎない事業へ人と経費を先に配ったのは、コンテナから船舶、航空機へと対象を広げても法人の利益繰延という一つの需要しか持てない構造を、谷村尚永社長が限界と見ていたからだとみられる。宅建業から不動産特定共同事業、信託へと3年かけて免許を積んだ順序にも、行き先を決めてから道具を揃えた形跡が読める。

ただ、載せ替えた先の商品もまた、路線価と実勢価格の差という税制の一点に価値を預けていた。2025年12月の大綱でその一点が動くと、通期の売上高予想は1,305億円から828億7,600万円へ落ちた。宅建業も不動産特定共同事業も信託も、扱う資産を増やしはしても、前提そのものを守ってはくれない。それでも2026年9月期の中間期に売上総利益の減少が9.7%で止まったのは、10年前に二本目を立てておいたからで、多角化の効き目は伸びているときではなく、片方が折れたときに測られるといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

一品で伸びた会社

FPGが2004年8月に売り始めた商品は、海上輸送用コンテナを対象とするオペレーティング・リースの匿名組合出資持分であった。リース資産の減価償却を前倒しで組合員に配分し、法人税の支払いを繰り延べる。買い手は業績の良い中堅企業のオーナーで、対象資産は2009年に船舶、2011年に航空機へ広がったものの、売っている商品の性格は変わらなかった[1]

2014年9月期の連結売上高63億円のうち、58億6,500万円はタックス・リース・アレンジメント事業が稼いでいた。翌2015年9月期は組成金額が2,973億円へ76.3%増え、出資金販売額も841億円と2.2倍になって連結売上は153億円に跳ねたが、これも同じ一品の拡大にすぎない。業績はリース資産の市況と法人税制に握られたままであった[2]

3年かけて免許を揃える

不動産へ踏み出す準備は、免許の取得から始まった。2013年4月に宅地建物取引業者の免許(国土交通大臣第8421号)、6月にFPGリアルエステートを設立して不動産特定共同事業法に基づく許可(国土交通大臣第1号)を取得し、8月に不動産関連事業を開始する。2014年10月には運用型信託会社の免許を持つベルニナ信託を株式取得で子会社化し、信託事業へ入った[3]

時機も重なっていた。1994年施行の不動産特定共同事業法は、2013年と2017年の改正で参入事業者や案件組成の要件を緩めており、案件数は2014年の41件から2021年には372件へ7年で約9倍に増えている。FPGが免許を積み上げたのは、この規制緩和が始まる入口にあたる時期であった[4]

決断

信託受益権として売る

2016年4月、FPGは子会社FPG信託の信託機能を活用した不動産小口化商品の提供を始めた。自ら取得した対象不動産をFPG信託に信託し、そこで得た複数の信託受益権を投資家に譲渡する。不動産から生じる損益は受益者である投資家に帰属し、FPGは取得から運用指図までの一連の業務で収益を得る。物件の目利きから信託、販売までを自社グループの内側に収めた設計であった[5]

商品が移したのは資産の種類だけではない。法人が抱える利益の繰延べという課題から、個人が抱える相続と資産承継の課題へ、顧客の困りごとそのものを載せ替えている。売り先は同じ中堅企業のオーナーでありながら、会社としての節税ではなく、その人自身の財産をどう次代へ渡すかという問いに応える商品になった[6]

2億7,400万円からの出発

出発点の規模は小さかった。信託を使った不動産小口運用商品の販売を始めた2016年9月期、不動産関連事業の売上高は2億7,400万円(前年度比64.1%増)にとどまる。同じ期のタックス・リース・アレンジメント事業は176億6,400万円で、不動産は連結売上189億円の1.5%にも届かない。当時の会社の顔は、あくまで節税リースの販売会社であった[7]

それでも会社は先に費用を出した。2016年9月期の販売費及び一般管理費は45億400万円と36.8%増え、その内訳にはリース案件の組成・販売体制の強化と並んで、信託を使った不動産小口運用商品の販売体制の強化が含まれている。売上の1.5%の事業に、主力と同じ列で人と経費を割り当てたことになる[8]

結果

主力の入れ替わり

逆転は2023年9月期に起きた。国内不動産ファンド事業の売上高450億7,600万円が、リースファンド事業の221億8,400万円を倍近く上回る。2024年9月期は750億9,300万円対292億7,800万円、2025年9月期は959億8,800万円対298億4,200万円と差はさらに開き、創業以来の本業は連結の2割強を占める第2の事業になった[9]

販路も膨らんだ。2025年12月末時点で国内不動産ファンド事業の累計組成金額は3,600億円を超え、投資家を紹介する会計事務所は8,500、金融機関は180を上回る。扱う物件はGINZA SIX、京橋トラストタワー、六本木ヒルズ森タワーと、単独では個人の手に届かない都心の大型ビルが並んだ。一方、2022年に始めた海外不動産ファンド事業は2025年9月期で35億1,600万円と連結の3%弱で足踏みしている[10]

新しい主力もまた税制の上に立っていた

移った先の前提は、移る前と同じ性格を帯びていた。2025年12月19日に公表された令和8年度与党税制改正大綱は、不動産小口化商品の相続税・贈与税評価を実際の取引価格に基づく方式へ改める方針を示す。FPGは第1四半期に新規販売を一時停止し、2026年3月26日には通期の売上高予想を1,305億円から828億7,600万円へ引き下げた[11]

同時に、二本の柱を持ったことが初めて実務上の意味を持った。2026年9月期中間期の連結売上高は355億8,600万円と43.9%減ったものの、リースファンド事業が売上高171億4,100万円(18.0%増)、売上総利益151億2,000万円(24.0%増)と伸び、連結の売上総利益は9.7%減にとどまっている。10年前に始めた乗り換えが、逆向きの支えとして働いた[12]

出典・参考

免責事項およびポリシー