不動産小口化商品の販売停止(2025年・FPGの決断)

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論点税制改正前に主力商品を止めるか
FPG:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
令和8年度税制改正大綱を受けた主力商品の販売一時停止と、投資運用商品としての立て直し

何をなぜ決めたか:令和8年度税制改正大綱を受けた主力商品の販売一時停止と、投資運用商品としての立て直し

概要

2025年12月19日付で自由民主党および日本維新の会が公表した令和8年度税制改正大綱には、不動産小口化商品の相続税評価額を実際の取引価格をベースとする方式へ改める内容が含まれていた。この改正が実現すれば、2027年1月1日以降、相続税・贈与税での税務上の利点は大きく減少するか、なくなるおそれがあった。

FPGは大綱が公表されたその日に今後の対応を決定し、内容と影響を丁寧に説明したうえで販売を継続する方針を公表した。

背景

FPGは2016年4月にFPG信託の信託機能を使って不動産小口化商品の提供を開始した。国内不動産ファンド事業は2025年9月期に売上高95,988百万円・売上総利益10,076百万円を計上し、連結売上高129,764百万円の74%を占めていた。不動産商品販売額は94,950百万円で、前年度から28.6%増加している。

税制の変更はかねて事業等のリスクに挙げていた項目で、2005年度税制改正で匿名組合の損失計上に上限が設けられた経験も自ら記している。

内容

販売継続を掲げる一方、FPGは第1四半期のうちに不動産小口化商品の販売を一時停止し、2025年12月末譲渡分の申込・契約済みの投資家からの解約申し出に合意解約・返金で応じた。2026年1月からは3月末譲渡分の販売を再開し、税理士・弁護士などの専門家の情報・意見を踏まえた新しい販売方針に切り替えて売り込んだ。2月にはオンライン取引による販売を一時停止し、営業担当者の直接の説明と対面販売に限っている。

含意

不動産商品販売額は第1四半期に4,720百万円にとどまり、第2四半期には11,930百万円まで戻った。FPGは2026年3月、国内不動産ファンド事業の通期の不動産商品販売額の予想を100,000百万円から50,516百万円へ引き下げ、2027年1月1日に予定される税制改正の詳細が未公表であることを理由に挙げた。

中間期の決算短信では、2027年以降も一定の相続税圧縮効果が続き、相続対策としての有用性は保たれるとの見通しを示している。節税の看板を外した商品が投資運用商品としてどこまで支持されるかは、まだ決着していない。

いつ何が起きたか6件
当時の取締役7名

当時の取締役(2025年12月株主総会決議)

考察:前提を売る商売の勘定
考察

考察:前提を売る商売の勘定

2025年9月期の国内不動産ファンド事業は売上高95,988百万円で連結の74%を占め、不動産商品販売額は94,950百万円に達していた。FPG自身が商品の訴求点の一つに挙げてきた相続税・贈与税の税務面のメリットが、大綱の一項目で大きく減少する可能性が出た。大綱の当日に販売継続を掲げながら、実際には販売を止めて申込済みの投資家に解約で応じ、専門家の意見を聞いてから売り直した順序には、売上より顧客との関係を先に守ろうとした判断が読み取れる。

もっとも、税制に乗っているのは小口化商品だけではない。2025年9月期に売上高29,842百万円を計上したリースファンド事業も匿名組合を使う商品であり、2005年度税制改正で匿名組合の損失計上に上限が設けられた経験を、自ら事業等のリスクに書き残している。制度が商品の価値を左右する商売では、何を売るかより、前提が動いたときにどう縮小してどう組み直すかに経営の質が表れる。2027年1月1日の適用までに、節税以外の理由で買われる商品へ作り替えられるかどうかが問われるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

数字で見る

図と表

FPG:国内不動産ファンド事業の売上高と売上総利益

売上高(百万円)売上総利益率(%)
FPG:国内不動産ファンド事業の売上高と売上総利益
(百万円)売上高売上総利益備考
2022年9月期42,890−セグメント情報は重要性が乏しいとして省略され、事業別は売上高のみの開示
2023年9月期45,0765,795翌期の報告セグメント変更にあわせ、変更後の区分で作成された値
2024年9月期75,0939,725
2025年9月期95,98810,076不動産商品販売額は通期で過去最高の94,950百万円。組成金額は43,670百万円で62.3%減
出所:株式会社FPG 有価証券報告書 第22〜24期(セグメント情報等)
出所:株式会社FPG 有価証券報告書 第22〜24期(セグメント情報等)

FPG:連結の売上高と営業利益

売上高(百万円)営業利益率(%)
FPG:連結の売上高と営業利益
(百万円)売上高営業利益備考
2021年9月期14,9245,233
2022年9月期59,19311,744
2023年9月期71,14918,265
2024年9月期107,78128,633
2025年9月期129,76425,417売上高は過去最高。原価率の高い大規模案件の構成比が上がり売上総利益は減少した
出所:株式会社FPG 有価証券報告書 第21〜24期(連結損益計算書)
出所:株式会社FPG 有価証券報告書 第21〜24期(連結損益計算書)

税制改正への対応の条件

税制改正への対応の条件
科目概要備考
対応を決定した日2025年12月19日令和8年度税制改正大綱が公表された当日。有価証券報告書の提出日も同じ日
契機令和8年度税制改正大綱2025年12月19日付で自由民主党および日本維新の会より公表された
改正の内容相続税評価額を実際の取引価格ベースへ改める対象は不動産小口化商品。大綱に含まれた内容で、詳細は本稿の時点で未公表
適用開始2027年1月1日改正が実現した場合に適用される時期
想定される影響相続税・贈与税の税務面のメリットが大幅に減少または消滅商品の説明では、運用による収益に付随して税務面のメリットも期待できるとしていた
決定した対応内容と影響を丁寧に説明したうえで販売を継続税制改正の内容を慎重に見極めつつ対応するとした
今後の取組方針投資運用商品としての価値を高めるべく柔軟に検討適用開始後の投資家のニーズや市場の変化を十分に精査するとした
対象事業の規模売上高95,988百万円、売上総利益10,076百万円2025年9月期の国内不動産ファンド事業。連結売上高129,764百万円の74%にあたる
出所:株式会社FPG 有価証券報告書 第24期(2025年9月期)【事業等のリスク】(2)国内不動産ファンド事業のリスクについて・(5)法的規制について
出所:株式会社FPG 有価証券報告書 第24期(2025年9月期)【事業等のリスク】(2)国内不動産ファンド事業のリスクについて・(5)法的規制について
当時の取締役7名

当時の取締役(2025年12月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • FPG 有価証券報告書 第24期(2025年9月期)【事業等のリスク】
  • FPG 有価証券報告書 第24期(2025年9月期)【沿革】
  • 株式会社FPG 有価証券報告書 第22〜24期(セグメント情報等)
  • 株式会社FPG 有価証券報告書 第21〜24期(連結損益計算書)
  • FPG 有価証券報告書「第24期(2025年9月期)【事業等のリスク】(2)国内不動産ファンド事業のリスクについて」
  • FPG 有価証券報告書「第24期(2025年9月期)【事業等のリスク】(5)法的規制について」
  • FPG 有価証券報告書「第24期(2025年9月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • FPG 有価証券報告書「第24期(2025年9月期)【セグメント情報等】」
  • FPG ニュースリリース「今後の税制改正を踏まえた当社の対応について」
  • FPG 決算短信「2026年9月期 第1四半期決算短信」
  • FPG お知らせ「令和8年度税制改正大綱に伴う、不動産小口化商品のオンライン取引について」
  • FPG ニュースリリース「(開示事項の経過)今後の税制改正を踏まえた当社の対応について」
  • FPG 決算短信「2026年9月期 第2四半期(中間期)決算短信」

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