パソナグループ 本社機能の一部を淡路島へ移転 東京一極集中に背を向け、本社機能を淡路島へ移す分散への踏み切り

更新:

時期 2020年9月
当時の社長 南部靖之
論点 本社機能の立地と地方分散
何をなぜ決めたか
概要

2020年9月、パソナグループのグループ代表・南部靖之氏が、本社・本部機能の一部を東京都千代田区から兵庫県淡路島へ段階的に移すと発表した経営判断。東京一極集中が生む社会課題への答えとして、拠点分散によるBCP(事業継続計画)対策と地方創生を掲げた。

背景

東京への一極集中を災害への弱さととらえる問題意識が発端にある。淡路島ではすでに飲食・観光の施設と農業の研修拠点を営み、地方創生事業の足場を構築していた。本社機能を移す前提となる受け皿が、そこに先にあった。

内容

2020年9月に発表し、拠点分散によるBCP(事業継続計画)対策として本社・本部機能の一部を段階的に移した。移転先には社宅を新設し、事業所設備や護岸・土地の整備にも投資して、オフィス・住宅・教育の受け入れ体制を構築した。

含意

淡路島へ移した業務は約1,300名分に達し、島内で働く従業員は約2,000名に上った。移転は島内の雇用創出にもつながった。残る課題は、観光や農業の地方創生事業を収益源に育てられるかにある。

いつ何が起きたか 3件
筆者の見解
筆者の見解

本社はどこにあるべきか

この決断の核心は、財務の危機に迫られた撤退や縮小ではなく、創業者の信念に発した立地の転換にある。東京への一極集中を災害への弱さととらえる問題意識を、南部靖之氏は観光や農業の事業と受け入れ体制を先に築くかたちで形にし、コロナ禍という追い風のなかで本社・本部機能の一部を動かした。人材サービスの規模と効率を競う業界の主流から一歩外れ、雇用を生む場は地方にあるという賭けに本社・本部の機能を割いた点に、この移転のほかにない性格がある。

もっとも、逆張りの構想が投じた問いは、まだ閉じていない。淡路島で働く人の数という点では、移転は現に形をとった。だが観光や農業を新たな収益源に育てられるか、都心を離れた本社が企業価値をどう高めるかは、ベネフィット・ワン売却後の本業立て直しと並ぶ宿題として残っている。大企業の本社は都心になければならないのか——淡路島への移転は、その問いに実地で答えを出そうとする、いまも続く実験にあたる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
移転の条件

移転の条件

科目 概要 備考
移転の公表 2020年9月 本社機能の一部を兵庫県淡路島へ段階的に移転すると発表した
移転する機能 本社・本部機能の一部 本社は東京都千代田区に置いたまま、その機能の一部を移す
移転先 兵庫県淡路島(兵庫県淡路市) 2008年から農業・観光の地方創生事業を営んできた土地
掲げた狙い 拠点分散によるBCP対策 自然災害等のリスクにも対応する事業継続計画の一環と位置づけた
段階的移転の開始 2021年9月 感染症への対策に加え、自然災害等のリスクへの備えとして始めた
移管した業務の規模 約1,300名分 2024年5月期時点。2023年5月期は約1,050名が本部業務に従事した
島内従業員 約2,000名 2024年5月期時点。地域住民の採用を含む
淡路島のオフィス 1拠点から7拠点へ 2020年9月から2023年5月まで。通勤バスとシェアカーも整えた
社宅の新設 1,500百万円 第14期の設備計画。全社セグメント。第15期末の既支払額は911百万円
事業所設備の新設 900百万円 第14期の設備計画。全社セグメント。既支払額は288百万円
護岸・土地整備 4,200百万円 第16期に載せた全社セグメントの計画。第18期の既支払額は3,943百万円

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第14期(2021年5月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【設備の新設、除却等の計画】・第16期(2023年5月期)【事業等のリスク】・第17期(2024年5月期)【サステナビリティに関する考え方及び取組】・2023年5月期 決算説明会資料(2023年7月19日)

設備投資額と有形固定資産の推移

パソナグループ:設備投資額と有形固定資産の推移

(百万円) 設備投資額有形固定資産 備考
2016年5月期 2,8168,722
2017年5月期 4,2279,258
2018年5月期 10,48015,391
2019年5月期 5,28116,725
2020年5月期 6,99516,606 移転を公表したのは2020年9月。この期はその直前に締めている
2021年5月期 8,95418,568 淡路市の社宅1,500・事業所設備900百万円を設備の新設計画に載せた
2022年5月期 16,85627,336 2021年9月に本社機能の分散と淡路島への移転を段階的に開始した
2023年5月期 13,74733,725 東京・南青山への本社オフィス移転と淡路島移転の費用が重なった
2024年5月期 20,17135,467
2025年5月期 18,62347,145 淡路市の商業用設備14,900百万円の既支払額が10,248百万円に達した
設備投資額
設備投資額(百万円)

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第9〜18期【設備投資等の概要】 / パソナグループ 有価証券報告書 第9〜18期【連結貸借対照表】

従業員数の推移

パソナグループ:従業員数の推移

(名) 連結従業員数提出会社の従業員数臨時従業員数 備考
2016年5月期 7,1442681,406
2017年5月期 7,2382881,444
2018年5月期 7,7163181,358
2019年5月期 7,8555381,462
2020年5月期 9,6576619,931 臨時従業員はBPOサービスの受託増で前期から大きく増えている
2021年5月期 9,49864512,291 全社セグメントの従業員は561名。臨時従業員は前期末比2,360名増
2022年5月期 10,36467413,124
2023年5月期 9,78673115,132
2024年5月期 10,00177015,045
2025年5月期 8,89488014,088 ベネフィット・ワン等の連結除外で1,107名減。全社セグメントは817名
連結従業員数
連結従業員数(名)

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第9〜18期【従業員の状況】

地方創生事業の売上高と営業損益

パソナグループ:地方創生事業の売上高と営業損益

(百万円) 売上高営業利益 備考
2018年5月期 2,277△1,536 この期の区分名はパブリックソリューション
2019年5月期 3,082△1,279 この期の区分名はパブリックソリューション
2020年5月期 2,990△1,876 区分名を地方創生ソリューション(旧パブリックソリューション)へ改めた
2021年5月期 3,244△2,327 移転を公表した2020年9月を含む通期
2022年5月期 4,426△2,612
2023年5月期 6,931△2,877
2024年5月期 6,223△2,588 淡路市の商業用・事業用資産等でこの区分に減損損失9,977百万円を計上
2025年5月期 7,083△1,900 この期から区分名は地方創生・観光ソリューション
地方創生事業の売上高と営業利益率
売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第9〜10期【業績等の概要】 / パソナグループ 有価証券報告書 第11〜18期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

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参考文献
出典・参考
  • パソナグループ 決算説明会資料「2021年5月期 決算説明会」
  • パソナグループ 決算説明会資料「2022年5月期 決算説明会」
  • パソナグループ 決算説明会資料「2023年5月期 決算説明会」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第9期(2016年5月期)【業績等の概要】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第13期(2020年5月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【連結貸借対照表】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第14期(2021年5月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第14期(2021年5月期)【設備の新設、除却等の計画】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第15期(2022年5月期)【設備投資等の概要】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第16期(2023年5月期)【サステナビリティに関する考え方及び取組】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第16期(2023年5月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第17期(2024年5月期)【サステナビリティに関する考え方及び取組】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第17期(2024年5月期)【連結損益計算書関係】【セグメント情報等】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第18期(2025年5月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • パソナグループ 有価証券報告書「第18期(2025年5月期)【連結貸借対照表】【従業員の状況】」

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