愛知川製造所でエアバッグ量産(1987年・タカタの決断)

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論点シートベルトに続きエアバッグへ参入するか
タカタ:業績の推移
売上高(百万円)経常利益率(%)
シートベルト専業からの参入と、ガス発生装置まで含む自社生産の体制

何をなぜ決めたか:シートベルト専業からの参入と、ガス発生装置まで含む自社生産の体制

概要

1987年9月、タカタは滋賀県の愛知川製造所で運転席用エアバッグモジュールの製造・販売を開始した。決めたのは、1974年1月から代表取締役社長を務めていた高田重一郎氏である。シートベルトとチャイルドシートを主力とする会社が、衝突時に袋を膨らませて乗員を受け止める別種の製品へ参入した。

参入は1つの製品で終わらなかった。1990年10月に同じ製造所で助手席用を加え、1991年12月には米国ワシントン州に設立したTakata Moses Lake Inc.でインフレータ(ガス発生装置)の製造を開始した。袋とモジュールに加え、袋を膨らませる部品まで自社で作る体制が、量産から4年で揃った。

背景

足場はシートベルトにあった。1960年に日本初の2点式シートベルトを発表して製造・販売を開始し、1963年には国内で初めて量産車に標準装備されたシートベルトにタカタ製品が採用された。1973年には米国連邦道路交通安全局(NHTSA)が主催した衝突実験に参加している。

エアバッグの準備は、量産よりずっと前に始まっていた。1976年にエアバッグの調査研究を始め、1983年には米国運輸省(DOT)がエアバッグの効果を確かめるフリートテスト用に、米国のハイウェイパトロールカー800台へエアバッグを納入した。同じ1983年12月に商号を高田工場からタカタに改め、1984年6月には米国ミシガン州に合弁会社Takata Fisher Corporationを設立して、米州でシートベルトの製造を開始した。

内容

量産を開始した後、エアバッグの生産拠点を国内外に重ねた。1988年3月に米国Burlington社の産業資材部門を買収してHighland Industries, Inc.を設立し、テキスタイルやエアバッグなどの生産拠点とした。1991年5月には佐賀県多久市に、国内のエアバッグモジュール製造拠点としてタカタ九州を設立している。

研究開発の拠点も同じ年に整えた。同年6月に米国ミシガン州のAutomotive Systems Laboratory, Inc.、同年8月にドイツのTakata (Europe) Vehicle Safety Technology GmbHを設立した。インフレータの生産は2005年12月設立の中国のTakata (Changxing) Safety Systems Co., Ltd.にも広がり、2009年3月期には世界最軽量をうたう「Xシリーズ」のインフレータの量産を開始した。

含意

エアバッグは、のちにタカタの最大の製品となった。2007年3月期の販売実績はエアバッグが2,043億円で、シートベルトの1,528億円を上回り、連結売上高5,018億円の約4割を占めた。米州・欧州・アジアの三極で開発・製造・販売を行う体制の中心にも、エアバッグが入っていた。

一方で、インフレータを自社で作れば、その不具合の責任も自社で負う。2013年3月期に客先の市場回収に伴う製品保証引当金繰入額299億円を特別損失に計上し、2015年11月には米国子会社TKHがNHTSAと同意指令に合意して、相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)を使ったインフレータの段階的な製造販売の中止を約した。2017年3月期の特別損失は1,329億円に達し、同年6月に民事再生手続開始を申し立てた。

いつ何が起きたか12件
考察:インフレータまで抱えた参入
考察

考察:インフレータまで抱えた参入

なぜタカタはエアバッグに参入できたのか。シートベルトの会社にとって、エアバッグは衝突時に乗員を守るという同じ目的の延長にある。タカタは1976年から調査研究を続け、1983年には米国のパトカー800台に納入した実績を持っていた。量産を引き受ける準備は、すでに社内にあった。そのうえで助手席用とインフレータまで4年で自社に取り込んだのは、完成車メーカーに一式を供給できる部品会社になるためだったとみられる。部品を外から買えば、品質も納期も他社に左右されるからである。

もっとも、一式を自社で作れば、不具合の原因も自社に残る。シートベルトは布と金具の製品だが、インフレータは火薬で袋を膨らませる部品である。扱う技術が変われば、品質を保つ方法も変わる。タカタはインフレータの生産を米国から中国へ広げ、2009年3月期には世界最軽量をうたう新製品まで量産した。小さく軽くする開発と、長い年月にわたって安全を保証する管理を、同じ会社の中で両立させなければならなかった。その負担が、ガス発生装置という一つの部品に集まったのだろう。

この参入は、事業としては成功し、会社としては失敗に終わった。エアバッグは2007年3月期に販売2,043億円となり、連結売上高の約4割を占める最大の製品に育った。しかし2013年3月期に製品保証引当金299億円を計上してから、市場回収の損失が続いた。2017年3月期の特別損失は1,329億円、当期純損失は79,588百万円に達し、同年6月に民事再生手続開始を申し立てた。インフレータまで自社で生産する体制は売上を拡大させたが、その不具合の責任もタカタ一社が負う構造になり、会社を存続させることはできなかった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

タカタ:エアバッグの量産拠点と生産品目の推移

量産拠点(カ所)生産品目(品目)

量産拠点は1987年の1カ所から1991年に4カ所へ増加した

タカタ:エアバッグの量産拠点と生産品目の推移
(カ所)量産拠点生産品目備考
1982年00
1983年00米国のパトカー800台へ試験用に納入。量産拠点はまだ無い
1984年00
1985年00
1986年00
1987年119月に愛知川製造所で運転席用モジュールの製造を開始
1988年21Highland Industriesを設立。エアバッグ等の生産拠点
1989年21
1990年2210月に愛知川製造所で助手席用を追加
1991年43タカタ九州を設立し、米国でインフレータの製造を開始
1992年43
出所:タカタ 有価証券報告書 第4期(2007年3月期)【沿革】(各年末時点の拠点と品目を数えた) / タカタ 公式サイト「沿革」(2016年11月)
出所:タカタ 有価証券報告書 第4期(2007年3月期)【沿革】(各年末時点の拠点と品目を数えた) / タカタ 公式サイト「沿革」(2016年11月)

タカタ:上場後の売上高と当期純損益

売上高(百万円)当期純利益率(%)

2017年3月期の当期純損失は79,588百万円に達した

タカタ:上場後の売上高と当期純損益
(百万円)売上高当期純利益備考
2007年3月期501,86623,540エアバッグの販売は204,355百万円
2008年3月期515,85722,878
2009年3月期385,499△7,319
2010年3月期350,9146,942
2011年3月期390,87618,237
2012年3月期382,73711,937
2013年3月期415,521△21,122製品保証引当金繰入額29,975百万円を特別損失に計上
2014年3月期556,99811,144
2015年3月期642,810△29,558製品保証引当金繰入額52,694百万円を特別損失に計上
2016年3月期718,003△13,075
2017年3月期662,533△79,588特別損失132,978百万円。2017年6月に民事再生を申立て
出所:タカタ 有価証券報告書 第4期・第9期・第14期【主要な経営指標等の推移】 / タカタ 有価証券報告書 第10期・第12期【連結財務諸表】
出所:タカタ 有価証券報告書 第4期・第9期・第14期【主要な経営指標等の推移】 / タカタ 有価証券報告書 第10期・第12期【連結財務諸表】
参考文献

参考文献

参考
  • タカタ 有価証券報告書 第4期(2007年3月期)【沿革】
  • タカタ 有価証券報告書 第4期(2007年3月期)【役員の状況】
  • タカタ 有価証券報告書 第4期(2007年3月期)【生産、受注及び販売の状況】
  • タカタ 有価証券報告書 第4期(2007年3月期)【事業の内容】
  • タカタ 有価証券報告書 第14期(2017年3月期)【事業等のリスク】
  • タカタ 有価証券報告書 第14期(2017年3月期)【連結財務諸表】【事業等のリスク】
  • タカタ 有価証券報告書 第10期(2013年3月期)【業績等の概要】
  • タカタ 有価証券報告書 第4期(2007年3月期)【沿革】(各年末時点の拠点と品目を数えた)
  • タカタ 有価証券報告書 第4期・第9期・第14期【主要な経営指標等の推移】
  • タカタ 有価証券報告書 第10期・第12期【連結財務諸表】
  • タカタ 公式サイト「沿革」
  • タカタ 有価証券報告書「第4期(2007年3月期)【沿革】【役員の状況】」
  • タカタ 有価証券報告書「第4期(2007年3月期)【生産、受注及び販売の状況】【事業の内容】」
  • タカタ 有価証券報告書「第6期(2009年3月期)【研究開発活動】」
  • タカタ 有価証券報告書「第10期(2013年3月期)【業績等の概要】【連結財務諸表】」
  • タカタ 有価証券報告書「第12期(2015年3月期)【連結財務諸表】」
  • タカタ 有価証券報告書「第14期(2017年3月期)【主要な経営指標等の推移】【事業等のリスク】【連結財務諸表】」

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