原因が特定できていない部品を、同じ設計の部品に取り替えて回収したことにしてよいのか。この問いに対するタカタの答えは、技術者の順序としては筋が通っていた。インフレータが長期間高温多湿の環境下にさらされ、製造上の精度のばらつき等その他の要因が複合的に重なり合う場合に破損しうる、という理解へたどり着くまでに半年以上を要しており、同じ設計の部品への交換は解決の保証にならない。誤算は答えの中身ではなく、誰に向けて答えるかにあったと推察される。当局と米世論が求めていたのは原因の説明ではなく、危険の除去であった。
もっとも、順序を守った代償は決算の側から返ってきた。2015年3月期の特別損失586億60百万円は前期の7倍に達し、製品保証引当金の残高も752億44百万円へ増加した。それでも費用の負担割合と負担金額は合理的に見積ることが困難なままで、引当は上限ではなく途中経過にすぎなかった。純資産が331億円まで減少した2017年3月期までの経緯をみれば、拡大を拒んだ半年で失われたのは費用ではなく、負担の全体像を自ら描く機会だったのかもしれない。