ライフコーポレーション 「ビオラル」業態の創出 価格ではなく有機・自然派で選ばれる売り場の、店・商品・調達の三層での自前化

更新:

時期 2016年
当時の社長 岩崎高治
論点 事業多角化と差別化
何をなぜ決めたか
概要

岩崎高治社長は、立地と価格で横並びになりやすい食品スーパーで価格以外の軸を作るため、有機・自然派の独自業態「BIO-RAL(ビオラル)」を立ち上げた。2016年、大阪市西区の靭店を改装し、「オーガニック、ローカル、ヘルシー」と「安心、トレンド、高質」を意識した品揃えの新業態店舗「ビオラル靭店」としてリニューアルオープンしたのが業態1号店にあたる。以後、単独店の出店とプライベートブランドの開発を両輪として広げ、2024年3月には店舗運営と商品開発を専任するBIO-RAL事業本部を開設した。

背景

同質化が進む食品スーパーでは、他社と同じ商品を並べるかぎり差はつかず、価格競争に巻き込まれやすい。ライフはこれを「同質化競争からの脱却」と呼び、第七次中期経営計画の3大方針の1つに据えている。サステナビリティの重要課題「健康、環境配慮型事業の推進」には、ビオラル事業で早期に20店舗・売上高100億円という目標を置いた。国内の有機食品小売市場は2,240億円で、一人当たりの年間消費額は1,794円とアメリカの24,288円に遠く及ばない。市場そのものが薄いことが、後発でも先頭に立てるという読みの土台になっていると推察される。

内容

業態はオーガニック・ローカル・ヘルシー・サステナブルの4つをコンセプトに掲げ、単独店、通常店に置くビオラルコーナー、プライベートブランドの三層で組み立てられている。単独店は2020年度の2店舗から2024年度の9店舗へ増え、PB「ビオラル」のアイテム数は2022年度末の264から2025年度末の581へ3年で317増えた。PBの売上高は2025年度に10,882百万円(前年比120.7%)に達している。

2025年3月にはBIO-RAL店舗運営部を首都圏と近畿圏の2部に分けて単独店を3店舗新設し、9月にAmazon.co.jpでの全国販売を開始した。

含意

2030年度の目標は売上高400億円・50店舗・PB1,000アイテムで、2026年4月にはこれに経常利益20億円が加わった。同じ月、有機農産物集荷のワールドデリカへ66.7%、水産仲卸の亀吉商店へ5%を出資する資本提携に合意し、売り場の手前にある集荷と仲卸まで資本で押さえにかかっている。 『当社の差別化の中心である「ビオラル事業」についても、単に有機食品を販売するだけであれば、簡単に再現できる。しかし、お客様にご支持いただくためには、従業員への知識教育や生産者様との関係構築などが重要になる』 と、模倣されにくさの源泉を商品そのものではなく人と生産者との関係に置いている。店舗での有機農産物の売上高は、2019年の3.0億円から2024年の30.7億円へ約10倍に伸びた。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

価格で戦わない棚を、上流まで囲い込む

この新規事業の核心は、店を増やすことではなく、価格で戦う土俵から一つ横へ抜けたことにある。立地と特売で横並びになりやすい食品スーパーで、岩崎高治社長は値下げ合戦へ深入りするのではなく、有機・自然派という別の需要を自社の業態として抱えた。1号店が新設ではなく既存の靭店の改装だったことは、この判断が投資の規模ではなく品揃えと売り場の設計から始まったことを示している。総合スーパーが安さと品ぞろえで規模を競った時代に食品スーパーとして規模を絞ったライフが、こんどは食品のなかでさらに独自のカテゴリーを切り出した形で、価格以外の軸を選ぶという性格が続いている。

もっとも、後発の業態を10年かけて第3の柱に押し上げた道筋は、店・商品・調達の三層を順に固める手順そのものだった。単独店を置き、プライベートブランドを581アイテムまで広げ、そのうえで有機農産物の集荷会社と水産仲卸へ資本で入る——最後の一手は、棚の独自性が仕入れの独自性に支えられていることを認めた動きだと思われる。ただし、集荷や仲卸を小売が抱えるのは、有機需要が伸び続ける前提での投資でもある。国内の有機食品小売市場は2,240億円で、一人当たりの消費額はアメリカの十数分の一にとどまる。2030年度の400億円という目標は、その薄い市場を自ら厚くできるかという問いへの、現時点の答えにあたる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
業態の条件

業態の条件

科目 概要 備考
業態1号店 ビオラル靭店(大阪市西区) 新設ではなく既存の靭店の改装。同じ期に9店舗を新規出店し、靭店を含む5店舗を改装した
1号店の開店 2016年 第62期(2017年2月期)。会社の公表資料に開店月の記載はない
業態のコンセプト オーガニック・ローカル・ヘルシー・サステナブル 1号店は「オーガニック、ローカル、ヘルシー」と「安心、トレンド、高質」を意識した品揃えで開いた
事業本部の新設 2024年3月 商品本部とストア本部にあった機能を独立させた。事業本部長は執行役員の海野紀明氏
運営体制の分割 2025年3月 BIO-RAL店舗運営部を首都圏と近畿圏の2部へ分け、意思決定を迅速化した
販路の拡大 2025年9月 Amazon.co.jpで「BIO-RAL」商品の全国販売を開始した
中期経営計画の目標 早期に20店舗・売上高100億円 第七次中期経営計画のサステナビリティ重要課題「健康、環境配慮型事業の推進」に置く
2030年度の売上高目標 400億円 うち単独店の店舗売上高は200億円。2023年度の事業売上高は約100億円
2030年度の店舗数目標 50店舗 東西で展開する単独店。2024年度は9店舗
2030年度のPB商品目標 1,000アイテム 2025年度末は581アイテム
2030年度の経常利益目標 20億円 売上高・店舗数・アイテム数に加えて2026年4月に追加した
ワールドデリカへの出資 出資比率66.7% 有機農産物の集荷会社。子会社化するが連結の範囲には含めない。2026年4月に合意
亀吉商店への出資 出資比率5% 水産仲卸。目利き力を活かした集荷を強みとする。2026年4月に合意

出所:ライフコーポレーション 有価証券報告書 第62期(2017年2月期)【業績等の概要】・第71期(2026年2月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】、統合報告書2025、2025年度通期決算説明会資料

ビオラル事業の広がり

ライフコーポレーション:ビオラル事業の広がり

単独店の店舗数(店)ビオラルコーナー設置店舗数(店)PB商品のアイテム数(点)PB商品の売上高(百万円) 備考
2020年度 293101− 事業売上高は約28億円。コーナーはショップ型を含む
2022年度 −−264− 単独店・コーナー・売上高は開示がなく、照合できていない
2023年度 72903587,035 事業売上高は約100億円。コーナーはショップ型を含む約290店
2024年度 9−4109,028 2024年3月にBIO-RAL事業本部を設置。PB売上高は前年比128.3%
2025年度 −−58110,882 単独店を3店舗新設。PB売上高は前年比120.7%。期末の単独店数は開示がない
2030年度(目標) 50−1,000− 事業売上高400億円・経常利益20億円をあわせて掲げる

出所:ライフコーポレーション 2023年度・2024年度・2025年度 通期決算説明会資料 / ライフコーポレーション 統合報告書2025

全社の業績(意思決定の前後5期)

ライフコーポレーション:全社の業績(意思決定の前後5期)

(百万円) 営業収益経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2012年2月期 503,10710,8734,100 連結財務諸表を作成しておらず単体。当期純利益は親会社株主に帰属する額ではない
2013年2月期 519,9417,3082,968
2014年2月期 534,9237,7023,798
2015年2月期 584,98411,0105,213
2016年2月期 629,98612,9827,923 連結財務諸表を作成しておらず単体。当期純利益は親会社株主に帰属する額ではない
2017年2月期 652,97412,8348,110 靭店を改装し新業態店舗「ビオラル靭店」としてリニューアルオープンした期
2018年2月期 677,74612,5506,555
2019年2月期 698,69312,8317,401
2020年2月期 714,68414,5587,834
2021年2月期 759,14628,15617,824
2022年2月期 768,33523,69515,208
営業収益と経常利益率
営業収益(百万円)経常利益率(%)

出所:ライフコーポレーション 有価証券報告書 第61期(2016年2月期)・第66期(2021年2月期)・第70期(2025年2月期)【主要な経営指標等の推移】

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参考文献
出典・参考

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