ナチュラルスーパー「ビオラル」による独自業態の創出

価格競争に沈むか、価格以外で選ばれるか——同質化する食品スーパーで岩崎高治氏が育てた第3の柱

更新:

時期 2016年6月
意思決定者 岩崎高治 社長
論点 事業多角化と差別化
概要
岩崎高治社長が、価格で同質化する食品スーパーで価格以外の理由で選ばれる軸として、有機・自然派の独自業態「BIO-RAL(ビオラル)」を2016年に新設し、PB化と上流の調達統合まで広げた新規事業の判断。
背景
立地と価格で横並びになりやすい食品スーパーでは、他社と同じ卸から仕入れる商品では差がつかず、大手ディスカウントやドラッグストアとの価格競争に巻き込まれやすい状況にあった。
内容
2016年6月に大阪市西区でナチュラルスーパー「ビオラル靭店」を開き、2020年12月に同名のPB「BIO-RAL」を発売、2026年4月には有機野菜集荷のワールドデリカを子会社化して調達網まで自社に取り込んだ。
含意
有機農産物売上高は5年で約10倍に伸び、2030年度に売上400億円・50店舗を目指す第3の柱に育った。価格訴求とは別の軸を、業態・商品・調達の三層で垂直に固めた点に特徴がある。
筆者の見解

価格で戦わない棚を、上流まで囲い込む

この新規事業の核心は、価格で戦う土俵から一つ横へ抜けた点にある。立地と特売で横並びになりやすい食品スーパーで、岩崎高治社長は値下げ合戦へ深入りするのではなく、有機・自然派という別の需要を自社の業態として抱えた。総合スーパーが安さと品ぞろえで規模を競った時代に食品スーパーとして規模を絞ったライフが、こんどは食品のなかでさらに独自のカテゴリーを切り出した形で、価格以外の軸を選ぶという創業以来の性格が続いている。

後発でありながら、ライフはこの業態を店・PB・調達の三層で垂直に固めた。棚に並べる商品を自社ブランドにし、その原料を集める会社まで資本で抱えたのは、他社が真似しにくい供給網を作るためにほかならない。もっとも、有機農産物や生鮮の集荷・仲卸を小売が抱えることは、需要が伸び続ける前提での投資でもある。オーガニック市場の成長を、価格訴求の同業に対する持続的な差にどこまで変えられるか——2030年度の400億円という目標は、その問いに対する現時点の答えにあたる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

価格で同質化する食品スーパー

食品スーパーは立地と価格で横並びになりやすく、他社と同じ卸から仕入れる商品では差がつきにくい。2010年代のライフは連結売上6,000億円台の中堅上場スーパーで、近畿圏と首都圏の二極に中型店を並べてきた。しかし価格訴求だけを続ければ、大手ディスカウントやドラッグストアとの値下げ競争に巻き込まれる。価格と利便性以外の理由で選ばれる軸をどう作るかが、岩崎高治社長の課題だった[1]

決断

オーガニックという独自カテゴリーを新設する

2016年6月、ライフは大阪市西区にナチュラルスーパーマーケット「BIO-RAL(ビオラル)靭店」を新業態として開いた。店名はドイツ語のBIOLOGISCH(有機の)と英語のNATURAL(自然)を組み合わせたもので、有機食品と自然派食品を中心に品ぞろえした。通常のライフとは別の業態として立て、価格競争に巻き込まれない独自カテゴリーを開く狙いだった。同質化する食品スーパーのなかで、価格以外の理由で選ばれる売り場をつくる試みだった[2][3]

PB化で商品まで独自にする

2020年12月、ライフは業態名と同じプライベートブランド「BIO-RAL」を発売した。店の業態にとどまらず、自社でしか買えない有機・自然派の商品を自らの棚に並べることで、独自カテゴリーを商品の面からも太らせた。売り場と商品の双方でオーガニックを軸に据える形が、2020年のPB発売で整った[4]

結果

5年で10倍に伸びた有機農産物と、上流への統合

ビオラル事業の有機農産物売上高は、2019年度の約3億円から2024年度の30億7,000万円へ、5年で約10倍に伸びた。独自カテゴリーの需要が数字で裏づけられ、ライフは2030年度にビオラル事業で売上高400億円・50店舗・PB1,000アイテムという目標を掲げ、価格訴求型の業界で価格以外の柱に育てる方針を示した[5][6]

独自カテゴリーの需要が固まると、ライフは商品の調達網まで自社へ取り込みにかかった。2026年4月、有機野菜を集荷するワールドデリカへ66.7%を出資して子会社化し、水産物仲卸の亀吉商店へも5%を出資して資本参加した。他社と共通の卸を経由する仕入れから離れ、有機農産物と生鮮の調達力を自社の傘下で強める狙いで、PB「BIO-RAL」を支える上流の調達基盤を整えた[7]

出典・参考