この買収は、映画館を数だけ増やしたという規模の話に収まらない。東宝は製作・配給を担いながら、直営館という旧来の形のままシネコン化の波に乗り切れずにいた。外資が三年ほどで築いた運営会社を完全子会社として取り込み、全国8館・81スクリーンを一挙に手にして首位へ立ったところに、興行の主導権を自前で握り直そうとする意思が表れているのだろう。約100億円という買収額も、上映網が配給の収益を左右する映画会社にとっては、興行を外部に委ねないための対価だったといえる。
もっとも、買収がそのまま安泰につながったわけではない。当時すでにスクリーン数は業界が上限とみた3000へ近づき、興行会社は1スクリーンあたり興収の伸び悩みと運営費の下げ止まりに直面していた。VCJが磨いた座席やポイントの手法もほどなく各社へ広がり、設備での差別化は薄れていく。東宝がその後に固めたのは、館数の多さよりも興行を一元管理する体制であり、製作・配給と興行を一つの経営判断のもとへ置き直した点にこそ、この買収の効き目が残っただろう。