タイトーの完全子会社化(2005年・スクウェア・エニックスHDの決断)

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論点 店舗網と業務用機器を買収で得るか
スクウェア・エニックスHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
株式公開買付けによる完全取得と「100%保有戦略」の始動

何をなぜ決めたか:株式公開買付けによる完全取得と「100%保有戦略」の始動

概要

2005年8月22日の取締役会で、スクウェア・エニックスはタイトー株式の公開買付けを決議した。買付価格は1株181,100円、買付期間は8月23日から9月21日までの30日間で、買付に要する資金は62,785百万円を見込んだ。買付後の所有株式数は346,689株・所有割合93.7%となり、2005年9月28日にタイトーは連結子会社となった。2006年3月31日には完全子会社の㈱SQEXがタイトーを吸収合併し、同日その商号をタイトーへ変更している。

背景

2003年4月にエニックスとスクウェアが合併して発足したスクウェア・エニックスは、ゲームソフトの企画・開発・販売を主力に、オンラインゲーム・モバイル・出版の各事業を並べていた。買収の理由を有価証券報告書は「情報通信技術の発達に伴うテレビゲーム・アミューズメント産業構造の一大変革期に適時適確に対応し、商品・サービスの品揃えを拡充する総合化の取り組みが必須となる」と記している。タイトーはアミューズメント施設の運営と業務用ゲーム機器・業務用カラオケを営む上場会社であった。

内容

連結財務諸表上は2005年9月30日を支配獲得日とみなし、タイトーグループの損益は同年10月から取り込まれた。株式の取得価額は63,074百万円で、取得した会社が保有していた現金及び現金同等物9,930百万円を差し引いた支出額は53,143百万円である。連結開始時に受け入れた資産は流動26,776百万円・固定41,508百万円、負債は流動15,298百万円・固定2,641百万円で、連結調整勘定15,975百万円が生じた。完全子会社化までを含めた計上額は23,283百万円となり、20年の均等償却とされた。

含意

20年で償却する計画だったのれんは5年で消えた。2010年3月期に当初想定された事業環境が変化したとして回収可能期間と金額を再測定し、特別損失にのれん償却額12,209百万円を計上。2011年3月期にはのれんの減損損失8,418百万円を計上して期末残高はゼロとなった。事業そのものはグループに残り、アミューズメント事業は2026年3月期に売上高72,126百万円・営業利益8,877百万円を計上している。

いつ何が起きたか 10件
考察:取得したのは事業ではなく、毎日の売上だった
考察

考察:取得したのは事業ではなく、毎日の売上だった

この買収を、IPを持つ会社が店舗網を取得した話として読むと、狙いの半分しか見えない。スクウェア・エニックスが抱えていた不安定さは、ソフトの発売月に収入が集中し、開発が遅れれば期がまるごと空くという収益の形にあった。全国のゲームセンターと業務用機器のレンタルは、当たり外れの幅が小さいかわりに、賃料と機器投資という固定費を毎月生む事業でもある。振れ幅の大きい収入に、振れ幅の小さい収入を足す——その足し算は、連結売上高を1年で7割近く押し上げた一方、AM等事業そのものは連結初年度に1,170百万円、通年で連結した翌期にも351百万円の営業損失を計上している。

20年で償却するはずだったのれんは5年で消えた。2010年3月期に事業環境の変化を理由として12,209百万円を特別損失に落とし、翌期には減損損失8,418百万円を計上して残高はゼロになる。買収の対価のうち将来の超過収益力として説明された部分が、会計の上では残らなかったことになる。それでも事業は残った。ブランドと現場は残し、資本と意思決定だけを一本化するという同じ考え方が2009年のEidos買収へ運ばれ、海外では13年後に撤回されている。国内で買ったタイトーだけが20年後も残り、2026年3月期には営業利益8,877百万円をグループに納めている。買い物の巧拙が判るまでに、それだけの時間がかかった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

スクウェア・エニックスHD:のれん(連結調整勘定)の残高

のれん(百万円)
スクウェア・エニックスHD:のれん(連結調整勘定)の残高
(百万円) のれん 備考
2006年3月期 23,446 タイトーを子会社化。連結開始時の連結調整勘定は15,975
2007年3月期 20,276 業務用通信カラオケ事業の譲渡に伴い臨時償却1,831を特別損失に計上
2008年3月期 18,883
2009年3月期 17,771
2010年3月期 10,233 タイトーののれんを再測定し、特別損失にのれん償却額12,209を計上
2011年3月期 0 のれんの減損損失8,418と当期償却1,492で期末残高はゼロ
出所:スクウェア・エニックス 有価証券報告書 第26〜28期(連結貸借対照表) / スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書 第29〜31期(連結貸借対照表・セグメント情報)
出所:スクウェア・エニックス 有価証券報告書 第26〜28期(連結貸借対照表) / スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書 第29〜31期(連結貸借対照表・セグメント情報)

スクウェア・エニックスHD:AM等事業/アミューズメント事業の業績(報告セグメント)

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
スクウェア・エニックスHD:AM等事業/アミューズメント事業の業績(報告セグメント)
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2006年3月期 41,069△1,170 連結は2005年10月から。損益は6か月分
2007年3月期 75,702△351 通年で連結した最初の期
2008年3月期 69,1043,129
2009年3月期 58,269△944
2010年3月期 52,2993,986 持株会社移行に伴いアミューズメント事業へ区分を変更
2011年3月期 45,0122,178
出所:スクウェア・エニックス 有価証券報告書 第26〜28期(事業の種類別セグメント情報) / スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書 第29〜31期(セグメント情報)
出所:スクウェア・エニックス 有価証券報告書 第26〜28期(事業の種類別セグメント情報) / スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書 第29〜31期(セグメント情報)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 株式会社タイトー アミューズメント施設の運営、業務用ゲーム機器・業務用カラオケ等の製造販売
取得の法的形式 公開買付け 2005年8月22日開催の取締役会で決議し、8月23日から実施
公開買付期間 2005年8月23日〜2005年9月21日 30日間
買付価格 1株につき181,100円 買付を行う株券等の種類は普通株式
買付後の所有株式数 346,689株 所有割合93.7%
買付に要する資金 62,785百万円 2005年8月22日公表の公開買付けの概要による
株式の取得価額 63,074百万円 取得会社の現金及び現金同等物9,930百万円を差し引いた支出額は53,143百万円
連結子会社となった日 2005年9月28日 連結上は9月30日を支配獲得日とみなし、損益は同年10月から取り込む
受け入れた資産 流動26,776百万円、固定41,508百万円 負債は流動15,298百万円・固定2,641百万円、少数株主持分3,246百万円
連結調整勘定(のれん) 15,975百万円 連結開始時の額。完全子会社化までを含めた計上額は23,283百万円
償却方法及び期間 20年の均等償却 2010年3月期に回収可能期間と金額を再測定し、特別損失に12,209百万円を計上
完全子会社化 2006年3月31日 完全子会社の㈱SQEXがタイトーを吸収合併し、同日商号をタイトーへ変更
出所:スクウェア・エニックス 有価証券報告書 第26期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【財政状態及び経営成績の分析】
出所:スクウェア・エニックス 有価証券報告書 第26期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【財政状態及び経営成績の分析】
参考文献

参考文献

参考
  • スクウェア・エニックス 有価証券報告書(第26期・第27期・第28期)
  • スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書(第29期・第30期・第31期・第45期)
  • タイトー 会社沿革(公式サイト)
  • スクウェア・エニックス 有価証券報告書「第26期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • スクウェア・エニックス 有価証券報告書「第26期(2006年3月期)【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • スクウェア・エニックス 有価証券報告書「第26期(2006年3月期)【財政状態及び経営成績の分析】」
  • スクウェア・エニックス 有価証券報告書「第27期(2007年3月期)【財政状態及び経営成績の分析】」
  • スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書「第30期(2010年3月期)【財政状態及び経営成績の分析】」
  • スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書「第31期(2011年3月期)【セグメント情報】【連結貸借対照表】」
  • スクウェア・エニックス・ホールディングス アニュアルレポート「ANNUAL REPORT 2006」

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